境界の向こう側へ
最近頭空っぽにして書いてる後書きに自分で癒されてます。
なお脱線しまくるのは仕様です。なにせ何も考えてないから。
冒険者ランクをCに更新した翌朝。
俺は空港へとやってきていた。
ちなみに空港と言っても滑走路がある訳でも無ければ飛行機が飛んでいる訳でもない。
単純に輸送専門の飛翔系魔物を操る人達の発着場と積み荷を格納する倉庫があるだけだ。
「さて、ギルドからは既に連絡を入れてくれているって話だけど」
俺がきょろきょろしていると一人の女性がこちらへと近づいてきた。
「いらっしゃい。私はミラシャンティリス。ミーシャで良いわ。
あなたが連絡のあったスライムさんね」
「スライムさんって。
まぁその呼ばれ方で俺以外を指すとも思えないけど。
シュージです。よろしくお願いします」
「あぁ、別に畏まる必要とかないわよ。
人間のお貴族様のお作法とか知らないし?」
「そうか、分かった」
ミーシャと名乗った女性は人懐っこい笑顔でにぃっと笑った。
身長は俺と同じくらい。すらっとした細身で女性らしいプロポーションを少なめの生地が隠している。
そして何より目立つのはその背中に付いている翼。それも鳥の羽ではなく蝙蝠に近い翼膜だ。
「ん?この翼が気になる?」
「まあな」
俺の返事を聞いたミーシャはバサッと翼を広げて見せた。
その姿はサキュバスのような妖艶さよりもドラゴンのような格好良さが勝っているようにも見える。
「どうかしら」
「ああ、格好いいな」
「ふふん、そうでしょう」
「ただ」
「?」
「服選びが大変そうだな」
「ぐふっ」
俺の一言にダメージを受けたようなリアクションをしていた。
もしかして言わない方が良かっただろうか。
なにせ肩甲骨のあたりから腰近くまで翼が付いているんだ。
ズボンはともかく上半身は着れる服が少ないだろう。
それでこの露出の多い服装なのかな?
と思ったらガバッと俺の胸倉をつかんできた。
「そうなの、大変なのよ!
こんな露出の多い服だと男たちの下品な視線に晒されるし、頭おかしい奴からは軽い女に見られて襲われる事だってあるし。
あ、もちろんそんな馬鹿は返り討ちにするんだけど。
私はサキュバスでもハーピーでも無いんだからね!
もっとおしゃれしたいのに、あの子たちが大多数だから既製品はそっち寄りのデザインでほとんど選べないのよ。
とにかく大変なの。何とかしてよ」
「いや、突然何とかしてと言われてもな」
彼女にとってはかなり重要な問題なんだろうな。
俺的には今の服装も彼女にマッチしてるし可愛いと思うんだけどな。
うーん、下手に着飾らなくても元が良いから十分魅力的だしなぁ。
中途半端に着ても服が負けそうだし、似合うとしたら女神様系のシンプルながらも荘厳なデザインか、逆に元気系のエネルギッシュなデザインかな。
いや戦女神系の鎧+ティアラなんてのも行ける気がしてきたな。うん、間違いなく可愛い。
ただ空を飛ぶからスカートは無理だよな。ものすごく残念だけど。
そう考えているとミーシャさんの顔がみるみる赤くなっていった。
「ちょっ。あなた心の声が駄々洩れよ!」
「あれ、口に出してたか?」
「出てたわよ。私が女神様とか似合う訳無いじゃない」
「そうか? その翼も相まって魔法の国の女神様とか行けそうだけどな」
「ふ、ふんっ。そんなおべっかには乗せられないんだから」
そう言ってツンっと横を向く姿はやっぱり可愛いとおもう。
と、このままだと話が進まないな。
「えっと、服の話はまた今度にして。向こうに渡りたいんだけど、どうすれば良いんだ?」
「え?ああ。そうね。
あなた一人だし、荷物もほとんど無いなら私が運んであげるわ。
こっちよ。付いてきなさい」
そう言ってスタスタと歩いてくミーシャに付いて行けば、昨日リャンさんと行った境界の淵に辿り着いた。
「さぁ、両手を広げて向こうを向きなさい」
「こうか?」
ひとまず言われるままに手を広げて対岸を見る。
これで後ろから押されたら死ぬな。
まぁそんな事にはならず。
ミーシャは俺の脇に手を差し込んで胸の前で手を組んだ。
まぁつまり後ろから抱きしめられた状態で、背中に柔らかい何かが当たっている。
「言っとくけど、変な気起こしたら境界の中に投げ捨てるんだからね」
「あ、ああ。大丈夫だ。よろしく頼む」
俺の返事に満足したのか、ミーシャが翼を羽ばたかせた。
するとその風圧とは別にふわりと体が浮き足が地面から離れた。
「さぁ、行くわよ。大人しくしていなさい」
そう言って滑るように飛び立つミーシャ。
よく見ると翼は広げっぱなしだ。どうやら翼は補助でメインは魔法で飛んでいるっぽい。
下を見れば直ぐに足元から地面が無くなり、どこまでも続く深い深い闇が広がっていた。
「境界の闇はあんまり覗き込むと引き摺り込まれるわよ」
俺がじっと下を見ているのを気にしてミーシャが声を掛けてくれる。
『深淵を覗き込む者は~』とかいう話もあるし、魔法のある世界だからな。
本当に谷底から手が伸びてきても不思議じゃあない気がする。
「この谷の底はどうなっているんだ?」
「知らないわ。時々馬鹿な冒険家が調べようと降りていくみたいだけど、帰ってきた人の話は聞いたことが無いわね」
「そうか。まぁこういう未知なものってのは冒険心がくすぐられるから調べてみたくなる気持ちは分からなくはないけどな」
「まさか降りようなんて言わないわよね?」
「ああ、大丈夫だ。そこまで無茶をする気は無いよ」
「そう」
俺の回答に短く応えて、高度を上げるミーシャ。
その俺たちの横を大きな籠をぶら下げたワイバーンっぽいのが飛んでいく。
その背中に人が乗っているから、昨日リャンさんが言ってた定期便だろうな。
「おう、ミーシャ。お前が男連れとは珍しいな。
ようやく腰を落ち着ける気になったのか?」
「ちょ、そんな訳ないでしょ!
馬鹿なこと言ってると叩き落すわよ」
「おぉこわっ。
そっちの兄ちゃんも尻に敷かれないように気を付けろよ~」
ワイバーンを操る男性はミーシャと顔なじみらしく、軽口を言って飛び去って行った。
ここからだとミーシャさんの顔は見えないけど、後ろから「ふんっ」と鼻を鳴らす音だけ聞こえてきた。
そして程なくして対岸が近づいてくる。
そこにも村があるけど、前の村とはぱっと見、違いがなさそうだ。
そう思っている間に無事に境界を通り過ぎ、村の上空へとやってきた。
「さぁ降りるわよ」
その言葉と共に自由落下を開始する俺達。
フリーフォールってアトラクションがあったけど、まさにそんな感じだ。
もう少しで地面ってところでミーシャさんが制動を掛けてくれて軟着陸。
「到着よ。空の旅はどうだったかしら」
「なかなかに貴重な体験をさせてもらったよ。
ただ最後の落下をもうちょっと手加減してもらえると嬉しかったな。
空を飛べない身としてはちょっと怖い」
「でも面白かったでしょ?」
「安全を確保出来てればね」
さて。
改めて周りを見回しても特に変わった所とかはない。
視界に入る人たちも普通の人間ぽい人はほとんど居ないけど、前の境界村と大して違いは無い気がする。
まぁ別に鎖国している訳でもなく普通に交流があるんだし、多少文化が違うくらいなんだろう。
そう思っていたら、俺を離したミーシャが正面に回ってきて恭しく礼をした。
「ようこそ、魔界へ。私たちはあなたを歓迎するわ」
「??」
「ふふっ。これね。初めて境界を越えてきた人への恒例の挨拶なの」
「そうなのか。突然お嬢様のようなカーテシーをするもんだからビックリしたよ」
「普段、敬語とかとは無縁だけど、こういったお約束は守ることにしてるの。
これと同じような決まり事が時々あるから気を付けてね。守らないと怒る人も居るから」
「例えば?」
「そうね。とある料理屋では『料理が出されたら最初にスープを一口飲むこと』なんてのがあったりするわ」
ラーメン屋かよ!
この世界にラーメン屋があるかどうかは知らないけど。
「ところでシュージはこの後行く当てはあるの?」
「いや、特には決めてな……そうだ。スライムを見に行きたいな」
「スライム?」
「そう。普段自分で召喚してるけどさ。それ以外のスライムって見た事ないし。
リャンさんからはこっちにはいろんなスライムがいるって聞いたから見てみたいなと」
「スライムなら適当に歩いてれば居るけど。折角ならスライムタワーに行くことをお勧めするわ」
「スライムタワー?」
「ここから北東に行ったところにあるダンジョンの一つよ。
出てくる魔物のほとんどがスライムで、タワーの上の方には魔物ランク3のスライムキングも居て最上階近くにはランク4のスライムも居るそうよ」
「それはすごいな」
人で言うジョブランクと同様に魔物にも進化の度合いによって魔物ランクが設けられている。
1ランク進化するだけでも相当強くなれるだろうから、俺のスライムがスライムキングと戦ったら瞬殺だろうな。
でも、それでも挑んでみる価値はあるか。
進化は出来なくても目指す頂きの参考にはなるだろうし。
「ありがとうミーシャ。ひとまずそこを目指してみるよ」
「ええ。って待ちなさい」
「ん?」
「あなた、その装備のまま行くつもり?」
言われて自分の服装を見る。
……いつも通りだよな。
「変かな?」
「すらっ?」
スライムに聞いても『何が?』と返ってくる。
ということは前後ろが逆とか穴が開いてるとかでは無さそうだ。
「はぁぁ。そこでスライムに聞くのも大概だけどね。
あなたの装備、ほとんど初心者用装備じゃない。
いい? 向こうに比べて境界のこちら側は魔物がかなり強いの。
スライムや極々一部の魔物を除いてランク2は当たり前よ。
今の装備じゃカス当たりでも大ダメージになりかねないの!」
「あぁ、そう言う事か」
思えば装備の更新を全然してなかったな。
結局イベント素材も手に入れる時間が無かったし、これまではスライムが居れば事足りたからな。
でも今後の事を考えると俺が足手まといになりかねないか。
せめて流れ弾で死なないくらいにはしておくか。
「この近くに大きい街って言ったらどこになるんだ?」
「ここから一番近いのはトニイの街が東にあるわ。
冒険者ギルドもあるし、まずはそこを目指すのね。
街道を進めばめったに魔物に襲われることは無いはずよ」
「分かった。色々教えてくれてありがとな」
「どういたしまして。
じゃあ、私はそろそろ行くわ。また会いましょう」
「ああ、また」
短い挨拶を交わして飛び去るミーシャを見送った。
さて。新天地、というか魔界か。
名前からして本来なら2次職、3次職に転職してようやく来るようなところじゃなかろうか。
その証拠にプレイヤーと思われる人を全然見かけないし。
これは気合を入れないと即拠点送りだな。
後書き掲示板:
No.27 通りすがりの冒険者
成金坊主共を札束でぶん殴りてぇ
No.28 通りすがりの冒険者
>>27
なにがあったんだ
No.29 通りすがりの冒険者
宗教国家に逝ってしまったんじゃないか?
No.30 通りすがりの冒険者
ああ、あの明らかにフラグの
No.31 通りすがりの冒険者
目があったらお布施を強要される。
払ったらごみアイテムを渡される
断ったら神敵扱いを受ける
No.32 通りすがりの冒険者
あ、だからみんなフード被ってるのか
No.33 通りすがりの冒険者
唯一の朗報は天界が存在する可能性があるってことだな
No.34 通りすがりの冒険者
おぉ、天使&女神様フラグきた
No.35 通りすがりの冒険者
ただし天界への門は成金教会が牛耳ってるという
No.36 通りすがりの冒険者
『試練を乗り越えたものにのみ門は開かれる』
だっけ?
No.37 通りすがりの冒険者
そそ
そして第1の試練を受けるには1千万Gのお布施を要求される
No.38 通りすがりの冒険者
たかっ!!
しかも第1ってことは第2第3があるってことだよな?
一体幾つまであるんだよ
No.39 通りすがりの冒険者
>>38
非公開だ
そして第1の試練の内容がこれ
つ『1億Gの寄付』
No.40 通りすがりの冒険者
はぁ!?!?
No.41 通りすがりの冒険者
億て
No.42 通りすがりの冒険者
着服する気満々じゃねぇか
No.43 通りすがりの冒険者
余談だけど試練を通過するときに通る門があるんだけど
純・金・製だ
No.44 通りすがりの冒険者
ちょっ。金の使い道!!
No.45 通りすがりの冒険者
こりゃダメだ。なにか他に手は無いのか?
No.46 通りすがりの冒険者
そういやこの世界にもいくつか宗派があるらしいぞ
No.47 通りすがりの冒険者
つまりマイナー宗教を支援して今の成金宗教を打倒しろってことか?
No.48 通りすがりの冒険者
あり得るな。プレイヤー全員で力を合わせれば何とかなるだろ。
No.49 通りすがりの冒険者
マイナー宗教で有力なところって言ったらどこだ?
No.50 通りすがりの冒険者
俺の知る限り、一番は最初の街を中心にしたスライム教だな
噂では近隣の村にも広がってるとか
No.51 通りすがりの冒険者
あそこか!!
何かと黒いうわさが絶えないけど大丈夫か?
No.52 通りすがりの冒険者
その噂流してるの闇ギルドと成金宗教だよ
No.53 通りすがりの冒険者
日中でも夜でも正門から礼拝堂までは安全。
塀を乗り越えて不法侵入しようとしたり、プライベートスペースに無断侵入しようとすると途端に即死トラップが発動する
No.54 通りすがりの冒険者
俺はあのシスターに会いに行くのが毎日の楽しみだ
No.55 通りすがりの冒険者
それは分かる。あのシスターに「めっ」てされたい
No.56 通りすがりの冒険者
ちなみにそのシスター。ジョブは聖女見習いだけどな。
No.57 通りすがりの冒険者
!?
No.58 通りすがりの冒険者
!?
 




