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うちのスライムが弱いはずが・・・・・・くっ!  作者: たてみん


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27/59

世界の境界線

 ステーキパーティーを終えた頃には太陽は中点を過ぎた辺りだった。

 この時間ならリャンさんは村に辿り着いた頃だろうか。

 受けていたクエストの内容を確認すると、いつの間にか完了のサインは入っているので無事であることも間違いない。

 なので、このまま街にとんぼ返りしても怒られたりはしないだろう。


「とは言っても、リャンさんが俺を心配しているかもしれないし、境界の事もあるしな。進むか」

「すらっ」


 境界村にはまだ行った事は無いけど、街道に沿って歩けばそのうちあるはずだ。

 馬車で数時間だから歩いても今日中にはたどり着けるだろう。

 そうして歩いていくと、魔物どころか鳥の1羽も見かけなかった。

 普段なら何かしらの鳴き声が聞こえてくるものだが、虫の音一つない。

 きっとドラゴンが来たせいでみんな逃げたか息をひそめてるんだろう。

 実際にはドラゴンの威圧のせいで気を失っているってことも考えられるが。

 出来れば消費した肉の補充もしたかったんだけど、それもまた後日だな。


 日が暮れ始めた頃。ようやく木の柵で覆われた村が見えてきた。

 入口の両脇には門番と思しき男性が2人立っており、物見櫓にも数人立っている。

 村という割には警戒が厳重だな。


「そこの者、止まれ」

「ん?」


 入口から8メートル離れた所で呼び止められた。


「冒険者か。この村に何の用で来た?」

「冒険者だ。冒険に来たんだと、この答えでは納得しないよな」

「当たり前だ。この村は基本よそ者は入ることを禁じている。用が無くば立ち去るがよい」


 あれ、エリーゼさんもリャンさんもそんなことは一言も言ってなかったんだけどな。

 何か事情が変わったのか、もともとはリャンさんが一緒だったから問題ないと思われていたのか。

 ま、どっちにしろ俺は用があるから大丈夫か。


「この村は境界村と呼ばれる村であっているか?」

「その名前を誰から聞いた?」

「リャンという行商人だ。今日の昼頃にこちらに来てはいないか?」

「なに、リャン様の知り合いか。お前の名は?」

「シュージだ」

「確認を取ってくるのでしばしそこで待て」


 そう言って一人が村の中に駆け込んでいく。

 恐らくリャンさんに俺の事を聞きに行ったんだろう。

 この様子だとちゃんとリャンさんは無事にここに辿り着いているんだろう。

 程なくしてさっきの男性がリャンさんと共に戻ってきた。


「シュージくん。無事だったか」

「リャンさんも元気そうで何よりです」

「まぁまずは中に入ってくれ。

 皆、心配しなくてもいい。彼は私の友人だ」

「はっ、はい!」

「すまないね。みんな今朝のドラゴンのせいで浮足立っているのさ」


 リャンさんと一緒に村に入ると、そこには不思議な光景が広がっていた。

 一言で言うと、人が少ない。

 いや村なんだから人口は少ないんだろうけど、人以外が多いというか。

 獣人、それも耳が生えた人ではなく、二足歩行する動物と表現した方が近い人が多く、魔物と一緒に歩く人も多い。

 境界村と言ったけど、既に境界の向こう側なんじゃないかと言いたくなるほど、最初の街とは異彩を放っている。


「ふふふっ。驚いているね」

「そりゃ、まぁ」

「見ての通りここは人と魔物、正確には魔族が共存する村なのさ。

そうだ折角だ。詳しい話は『境界』を見ながらにするとしようか。こっちだよ」


連れて行かれたのは村の奥。

そこには以前、鉄蟻を討伐した後に見た巨大クレバスがあった。

対岸に目を向ければそちらにも村があるのが小さく見て取れる。


「これがここが境界村と呼ばれる所以だね。

この巨大クレバスは1000年前に起きた光と闇の神々の戦いで出来たと言われている。

境界のこちら側には人族を始めとした光の神々を信奉する者が、向こう側には闇の神々を信奉する者を中心とした者たちが多く住んでいるね。

この村は元々、どちらにも属さない中立の村でね。当時から種族関係なく共存をしていたそうだよ。

そして偶然1000年前に村は2つに分かたれた。元は向こう側にある村と合わせて1つの村だったらしいよ」


リャンさんがそう説明してくれる間に、向こう岸から曇鳥のような大型の鳥が飛んできた。

足に籠のようなものを掴んでいる所を見るとペリカン便のような宅配と思われる。


「今でもああして空を飛べる魔物を使役して、こちら側と向こう側を行き来しているんだ」

「リャンさんもモモに乗って行き来しているんですか?」

「おや、モモが飛べるのをいつ知ったんだい?」

「見た目からしてそうかなって思ったし、俺に懐いてくれたのは空を飛べる魔物だったのが理由の一つだろうという予想です」

「なるほどね。他にも何か気が付いた事はあるかい?」


 そういうリャンさんの目は試すような鋭さと、新しい玩具に喜ぶ子供のような感じだった。


「そうですね。うーん、あっ。

 そう言えばマグールさんからリャンさんに伝言を預かって来ましたよ。昨夜伝え忘れたそうで」

「マグール様から? なんだろう」

「冒険者への手土産は何が良かっただろうかと」

「は?あの方がそんなことを気にするとは珍しいね」

「……まぁ、実はそんなこと言ってなかったんですけどね。

 ただ次来るときは食費くらいは払ってくださいと伝えておいてください」

「ああ、わかっ……あ」

「……」


 前から思ってたけど、この世界の人達はノリが軽いというか乗せられやすいというか。

 こんなんで諜報活動とか貴族の権謀術数とかやってられるのかな。


「炎帝龍のマグールさんと気軽に世間話が出来るリャンさんは何者なんでしょうね」

「ははははは」


 俺のジト目に乾いた笑いを返すリャンさん。

 一つため息をついてから改めて口を開いた。


「シュージくん、これを君にあげよう」


 そう言って渡されたのは大きなルビーの填ったペンダントだった。

 ルビーの表面には翼を広げた龍が彫られている、明らかな高級品だ。


「これは?」

「うちの紋章を彫った逸品でね。

 それがあれば向こう側で大抵の所には通してもらえるだろう。

 通行証代わりに持って行ってくれ」

「印籠みたいなものか」

「インロウ?」


 助平、角平、やっておしまい!的な……違うか。

 でもこれを渡してくれたって事は。


「俺はリャンさんのお眼鏡に適ったってことですね」

「ああ、そういう事だね。

 それと、これで君の冒険者ランクはCだ」

「C?Dではなく?」

「ああ。お嬢から聞いていないかい?

 上位ランクの審査が通ればCランクまでは推薦で上げられるのさ」

「それは聞きましたけど」

「こう見えても私は、Aランクの冒険者でもあるんだよ。

 ランクアップの話はお嬢との会話で聞こえてたから、こっそり審査もしていたという訳だね」


 そう言っていたずらが成功したとウィンクするリャンさん。

 ただ俺としてはそんなに簡単にランクアップしても大丈夫なのか心配だ。

 俺って2次職にすらジョブアップしてないんだけど。

 その不安が表情に出ていたのか、それを見たリャンさんが笑って答えた。


「もし誰かに文句を言われたら『ドラゴンに襲撃されて生きて帰って来てみろ』って言ってやればいいよ。

 そんなことが出来るのはBランクですらほとんど居ないだろうからね」

「あれは……確かに普通は死にますね」

「だろう?

 冒険者ってのはどれだけ強いかも大事だが、どんな困難な状態からでも生還できることも重要な才能なんだよ。

 それに君の強さはスライム込みなら小国家の軍隊に相当するからね。

 私としては早く実績を積んでAランクに上がってくれることを期待しているよ」

「はぁ」


 何というか知らない内に評価がうなぎのぼりだな。

 でもそうやって考えると攻略組トップは1個人で戦略兵器扱いになるんじゃなかろうか。

 クラン単位ならそれこそちょっとした軍事国家が作れてしまいそうな気がする。

 ま、流石に誰もそんなことをしようなんて考えないよな。

 特にメリットがある訳でも無いだろうし。

 忘れよう。どっちにしろ俺には縁のない事だ。

 それよりも。


「リャンさん。向こう側に渡るにはどうすれば良いんですか?」

「ああ、それなら1日2回。定期便が出ているから乗っていくと良い。

 冒険者ギルドで受付をしてくれるはずさ。

 勿論自力で飛べるなら飛んで行っても構わないがね」

「あははっ。流石にスライムは空は飛べませんよ」


 飛ぶ代わりにスライムで橋を架けるって手もありそうだけど、綱渡りみたいになりそうだからやめておこう、うん。



後書き掲示板:

No.412 通りすがりの冒険者

北の火山地帯でドラゴン発見!!


No.413 通りすがりの冒険者

よっしゃ、ドラゴンバスターの称号は俺がいただく!!


No.414 通りすがりの冒険者

待て待て。そのドラゴンって勝てそうな感じなのか?


No.415 通りすがりの冒険者

>>414

よく聞いてくれた。

すでに山のふもとの街で情報収集はしてある。

はっきり言おう。今の俺達じゃ確実に無理だ。

多分3次職でレイド組まないと鼻息一つで吹き飛ばされるレベルっぽい。


No.416 通りすがりの冒険者

それってどこの龍王だよ。


No.417 通りすがりの冒険者

いや、マジ龍王だそうだ。

地元では信仰の対象でもある。挑む分には何も言われないけどな。

そして先行して調査に向かったLV30台の奴らはドラゴンの巣に到達する前に全滅している。


No.418 通りすがりの冒険者

無理げー過ぎるだろ。

今確かトップ攻略組でLV42とかだろ?

3次職はLV50~60って話だし、勝てる奴いねぇじゃん。


No.419 通りすがりの冒険者

将来的には討伐もしくは撃退イベントなんかが開催されるんだろうけど、少なくとも今じゃないって話だろうな。


No.420 通りすがりの冒険者

ドラゴンが巣を離れている間に潜入して素材を取ってくるだけならワンチャンありかな。


No.421 通りすがりの冒険者

卵拾ってくるの?


No.422 通りすがりの冒険者

>>421

やめとけ。見つかって追い立てられた挙句、崖から落ちて卵が割れる未来しか見えん。


No.423 通りすがりの冒険者

そういや、どうしてドラゴンは卵生なんだ?

ゲームの世界だし、頭良いんだから哺乳類に進化しててもおかしく無い気がするんだけど。


No.424 通りすがりの冒険者

頭が良いって言っても所詮デカいトカゲだからだろ?

それに卵の方が親の刷り込みで育てて、ドラゴンライダーになる夢だってあるだろ。


No.425 通りすがりの冒険者

いやいや。ドラゴンが成長するのに何年掛かるんだって話だな。


No.426 通りすがりの冒険者

卵とか無くてもいいからベビードラゴンは欲しいな

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