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Q9、魔法について考察しましたか?A、はい、しました。

主人公の記憶がない設定を消しました。

今後もこういったことはあるかと思いますがよろしくお願いします。

 昔の記憶が思い出された、忌々しいすべての始まりであるあの事件を。

 あの後、玄関が開いていたことにより不審に思った隣人が警察を呼んだことで事件は発覚した。

 気絶していたらしい俺は目が覚めると病院にいた。

 警察はあの男を強盗とし、俺の両親を殺したあと俺もしくは何者かに殺されたということにしたそうだ。

 まあそれは当たっているので警察にも事情は話したし、事件自体は被疑者死亡で解決しているのでそこではあまりごたごたはなかった。

 問題はその後、俺には母方父方両方に祖母がいたのだが、こういった事件で俺が被害を受けることを嫌がった二人は何故か俺を静岡に引っ越させた。

 二人の実家は東京なのにである。

 やばいな、思い出した拍子にどんどん記憶が出てくる。

 とりあえず戸野が言っている引っ越しはこっちのことだろう。


「知られてたか……。」

「はい。あ、詳しいことは知りませんし聞きません。それで、昔のこと、主に私のこと思い出してくれましたか?」


 俺としてはあまり明確に思い出したくないからありがたいな。しかし、んー……昔のことは確かに思い出したが……


「そんな名前の女子もいた……ような気もする。」

「ような、ですか……。」


 だって、かなり雰囲気変わってるからな。

 俺の記憶に出て来たのはもっとはきはきした感じの子供だったから、今の戸野の根暗っぽさじゃあまりわからない。

 しかし、


「よくも思い出させてくれたな。」

「なにか言いました?」

「いや。」


 あ、口に出てたか、幸い小さい声だったので戸野には聞き取れなかったようだが少し気を付けないとな。ただま、これから先どれだけ我慢(・・・)できるかわからないから先に軽い文句くらいは言いたいもんだ。


「でも一応思い出してくれたんですね。いやーよかった。一目見た瞬間仲田君だとは思ったですが、中々話かけることができずにこんなことになってしまって。」

「朝二人きりの時とかあっただろ。」

「そうなんですが……。」


 俺は見た目とは裏腹に、昔のように明るく話す戸野を見る。

 思い出した記憶と衝動(・・・)に思いをはせながら。


                      ◇◆◇


「よし、今日から魔法の訓練を本格的にやっていこうと思う。」

「はぁ。」


 戸野が昔馴染みであることが判明した翌日、肩慣らしのように模擬戦を一回やった後に教官がそういった。

 模擬戦も、いまだ教官に勝てないでいるが、それでもいい勝負にまで持ち込めるようにはなってきている。

 教官は気のない俺の返事に「今日のユキマサは元気がないな。」とつぶやく。

 しょうがないですよ、朝は弱いんで。


「まあ、魔法というものは何度か見たこともあるかと思うが、もう一度見せよう。」


 そういうと教官は、右手を前にだし、つぶやく。


「我は求む、精霊の火。」


 そういうと、教官の突き出した右手に、野球ボール程度の火の玉が出てくる。


「おおー。」

「フン。」


 俺が感心したような声を上げると、教官はドヤ顔をする。ちょろい。

 それに満足したのか、教官は魔法の説明を始める。


「魔法は大精霊によって与えられたものだということは知っていると思う。」


 俺はうなずく。


「ここで、魔法の発動には詠唱というものが必要だ。内容は主に決まっており、程度はあるがほとんどは精霊に魔法行使の許可を求める内容だ。」


 なるほど。俺はここで手をあげて、詠唱に関して気になったことを聞く。


「先ほどの詠唱、教官の普段の声より高かったんですが意味はあるんでしょうか。」


 そう、最初召喚された時は声をあまり聞いてなかったので気付かなかったが、ある程度普段の声を聴いていると、今の教官の声は地声より高かったため気になったのだ。まるで歌っているようだった。

 俺の質問に教官は、「そうだったな。」と言い話始める。


「魔法の詠唱は声の高さというか音の高さが必要らしくてな、魔力はあるのにこの詠唱ができないため魔法使いになれないという者もいるらしい。」

「魔法陣的なものはないんですか。」

「まほうじん?」


 あれ、確か俺たちが連れてこられたときの説明に「魔法陣」って単語が出てきていたはずなんだが。

 そのことを教官にいうと。


「ああ、あれか。あれは素晴らしいな。あんなもので魔術が発動するとはさすがクルガ様だな。」

「ではなんで魔法陣なんて単語が出て来たんでしょうか。」

「それは神託で言われたらしいな。」


 そんなもんなのか、ファンタジー世界なのに魔法があって魔法陣がないとか違和感がすごいが。

 しかし、魔法剣士って戦いながら魔法を放つ職業だよな。高速で移動しながら歌うなんてめんどくさいことできるのか。

 これも聞いてみた。


「ああそれはな、魔法系の職業になるとある程度の魔法なら詠唱はなくても発動できるんだ。さっきの魔法も本来なら詠唱は必要なかったんだが見せるためにな。しかしそれはその魔法を使いこなせるようになってからだから今からは練習しないぞ。」


 なるほど、だから魔法剣士の優劣はいかに多彩な魔法を無詠唱で発動できるかにかかってくるのか。

 しかし、「歌」で魔法が発動するのか。魔法使いは音痴に厳しい職業らしい。

 この世界の定義によれば、使う属性が違えば似たような詠唱でも音を変えなければならないことから、その属性の大精霊に届きやすい音で許しを請うことで魔法が発現できているのではないか、ということらしかった。

 男性の魔法使いもいるらしいから特定の周波ではなくピアノのドとかファとかの感じでオクターブは関係ないのか。

 そこからも、俺は魔法に関する質問を続けていった。結果、わかったことは、

 魔法の発動に対する詠唱は決まっているとのこと。たとえばさっき使った魔法は『種火』と呼ばれる初歩中の初歩らしいのだが、あの文を詠唱すると発動するらしい。

 詠唱を短くする研究も進められたらしいのだが、エンドロス王国が百年かけて研究したにも関わらずまったく成果は出なかったらしい。

 ということは、この魔法は音によって発動するのか。しかしこの世界にも音楽があることは知ってるし曲の中で偶然魔法が発動するなんてことはないのだろうか。

 教官に確認してみても、そんなことは聞いたことがないらしいしな……。


「さて、思わぬところで時間を食ってしまったが魔法の練習を始めていくか。」

「ほーい。」

「まったく……。」


 教官が俺の考察を打ち消すように、開始を促す。

 俺はそれにぞんざいに返事を返す。

 なにか言いたそうな教官を後目に俺は詠唱を始めるのだった。


                       ◇◆◇


「はぁ~……。」


 教官め、俺が魔力回復できるからって休みも与えずに訓練させやがった、まあそのおかげで早く終わったんだが。

 魔法の訓練が早めに終わって、夕飯の時間まで暇になったので俺は魔法についての考察を再び始めていた。

 ここまでのまとめ、魔法は詠唱でしか発動せず詠唱に重要なのは音程である、と。

 魔法はまず魔力を練り上げ、歌うように詠唱をすれば発動する。

 歌唱力がないと魔法使いになれない世知辛い世の中、しかし音楽で魔法が発動しないのは魔力が込められていないからか?

 今日俺は教官が最初に見せた『種火』を発動させることができた。

 『魔力操作』はかなりできてるし、こう見えて俺はそれなりに歌はうまい方だ。そのため問題なく魔法を発動することができた。

 教官は他にも色々な詠唱を聞かせてくれた。

 俺に音感なんてものはないが、それぞれなにか違うように感じた。

 たぶん音楽番組とかで言う「調」とかカラオケの「キー」ってやつが違うのだろう。

 魔法には「炎」、「水」、「風」、「土」、「光」という五種類(魔族が使う「闇」というのもあるそうだが)があり、聞いた感じではそれぞれの属性で「調」が違うように感じられた。

 ということは「調」と「旋律」で発動する魔法は決まるということだろうか。

 「調」により使う魔法の属性を指定し、音の組み合わせ、つまり「旋律」で魔法の種類を決める。

 こんな感じか?今日だけの情報だとこんな感じだな。

 俺は今現在わかっていることを紙に書き留めておく。

 じゃあ次は魔力の考察をしてみるか。

 魔力とは万物に備わっているものであり、自分の魔力なら体に流せば身体能力が上がるが、他人の魔力は特殊な手順を踏まない限り体に有害になる。それに魔力は魔法の元になる、これがなくては発動できない。

 さっきの仮設が正しければ、「音」は魔法の発動にはなくてはならないものだ。

 なら「音」と「魔力」の因果関係はなんなのだろうか。

 というか「魔法」に「音」が必要なのに無詠唱という技術があるのも矛盾している。

 そこで登場するのが「魔力」と「知力」なのではないかと思っている。

 「魔力」は魔法を発動させるのに必要だ。そしてそれは「音」も同じである。

 ならば魔法を発動する際に「魔力」と「音」をなんらかの形で融合させる必要があるのは自明の理だろう。

 そこで「魔力」に「音」をのせる(・・・)という方法を思いついた。

 自分の口で発声した「音」を練り上げた「魔力」と一緒に放出させるのだ。

 魔力を練り上げ外に放出することができる人間、つまり魔法使いは百人に一人くらいはいるのだが、その人たちはほとんどの人が稼ぎの良い魔法使いになろうとするので、稼ぎの悪い音楽家になる人はいない。そのため音楽によって魔法が発動することはなかったのだろう。

 そして何回も一定の「音」に同調させると「魔力」は音の波長を覚えるのだろう。これが「魔法に慣れる」というものだ。

 そしてその波長を覚えさせた状態に体内で変化させて魔力を放出すると、無詠唱というものができるのだろう。

 では何故「知力」が必要なのかというと、まず、レベルアップで知力が上がると動体視力が上がり、魔法が使いやすくなる。

 この魔法が使いやすくなるというのは、よくよく聞いてみると無詠唱がやりやすくなるということなのだそうだ。

 つまりこの上昇分の「知力」によって、「魔法」の旋律を無意識に覚えているのだろう。

 事実、魔法職以外であれば知力の上昇による恩恵は動体視力上昇以外にもあるらしい。

 よし…よし…これでいいな。

 俺は魔力に関する考察も紙に書き留めていく。

 そういえば、魔力ってエネルギーなんだろうか。もしそうな「コン、コン。」…らってなんだ?


「仲田君?ご飯だってさ!今日は肉増し増しだよ!」


 うおッ!もうこんな時間か。考え事でかなりの時間を過ごしたな。

 なぜ多野が呼びに来たのかはわからないが、俺は「すぐに行く。」とだけいい、用意をして、外にでるとなぜか多野が待っていた。

 この一週間で多野もだいぶ雰囲気が変わった。

 ザ・図書委員だったのが面影はもはや眼鏡のみになっている。

 髪は健康なポニーテールでこれは元々だが健康的にやけた肌、後は眼鏡さえなくなれば完璧なんだが、これは視力の問題もあるから仕方ないか。


「悪いな、先行っててくれてよかったんだが。」

「まあまあ、急いでるわけでもないしさ!」


 元気だな。

 なにが嬉しいんだかずっとニコニコして俺の隣を歩く多野と一緒に食堂に向かったのだった。


                       ◇◆◇


 夕食後、騎士達の見取り稽古を終えた俺は自分の部屋に戻ってきていた。

 食堂ではなぜかいつもよりハイテンションの多野の話に付き合わされて、訓練場では今日はいつにもまして騎士達が頑張っていたから覚えるのも疲れたし、もう寝てしまいたいくらいだが、魔力に関する考察がまだ中途半端だからな、今日の深夜の自主錬は中止してこれに使おう。

 ああ、昨日戸野と別れるときなぜか戸野が「私もご一緒いていいですか?」と聞いてきたので言ってきたので了承しといたのだが、初日から中止とは悪いことをしたな。

 一応戸野には食堂で伝えたのだが、なぜかついてきた多野とにらみ合ってたな。そんな不機嫌にならなくてもと思ったが、多野とにらみ合ってたからそっちかな?

 そんな仲が悪いイメージはなかったんだが、いや、日本では戸野は地味子だったから誰と仲が良いとかは知らなかったわけだが。

 さて、それより魔力がエネルギーかどうかだったな。

 正直これはわからないな、まず確かめるすべが……あるかも。

 とりあえず小さい可能性でも実験して潰していくしかないな。

 と、いうことで準備!

 (十分後)

 今回用意したのはこちら!

 やっぱり数分クッキングはいいか。

 ということで俺が準備していたのは、簡単な発電装置だ。

 なぜこんなことをしているかというと、俺は魔力が仮にファンタジーっぽく万能エネルギーなら、なにかエネルギーに加えるとそのエネルギーが増幅されるのではと考えた。

 その実験のために俺はためしに電気エネルギーを作ることにしたのだ。

 といっても材料は中学校の理科の授業でやるような簡単なものだ。

 磁石は簡単に手に入りそうになかったので、酸と二種類の金属でやることにした。

 柑橘系のような果物を絞り、器にいれ、そこにその辺で拾ってきた別種類の金属片を二つ、後は銅っぽいものでワイヤーが作られていたのでそれを金属片に巻きつける。

 異世界だからイオン化傾向とかわからないし、導線、被服してないし、そもそもこれ銅かわからないし。

 柑橘系の果物は酸っぱいからたぶん大丈夫だと思うけどそれ以外がダメダメすぎる、まあいいか。

 そんなこんなで俺は実験を始めた。

 お、おお~!

 柑橘系のような果物の果汁(仮称レモン汁)から泡が出てる。

 これはたぶん電気が発生してるってことでいいんだよな。

 よっしゃ!あとはここに魔力を込めるだけだ。


「『種火』程度の魔力でいいかッ!?」


 油断していた。

 物に魔力を流すにはその対象に触れる必要があるため触って魔力をながしたのだが……めっちゃビリッと来た。

 静電気のかなり強い奴が来た感じだった。

 導線も若干熱くなってるし。

 しかし魔力って万能エネルギーだったんだな。

 魔力を流す前はビリッと来ることはなかったから、これは魔力によるエネルギーの増幅と考えていいだろう。

 いやー、これから夜の自主錬は魔法中心でいこうかな。

 どんな音の組み合わせでどんな効果の魔法が使えるかもわからないし、魔力が増幅するエネルギーは電気エネルギーのみなのかとかも気になるしな。

 前者は戸野に協力してもらえばなにかつかめそうだな、歌うまそうだし。

 後者は、まあ実験あるのみだな。


 このときの俺は気づいていなかった。

 何ものかに今の一部始終を見られていたことを。外にいる存在を、その正体を。


                       ◇◆◇


「いやー仲田の奴すげーな。まさか魔力にあんな使い方があったなんてな。なんか夜中にこそこそしてるから覗いてみたら思わぬ収穫だった。しかしあの「でんき」?を起こすカラクリはどうなってるんだろうな、あれが使えればもっと戦力を増強できるんだが……。」


 人影は帰っていく。

 独り言はなにかに感心しており、それを何かに使えないかを考えていた。

 その何かが分かるのは当人、それと仲間達であろう。

 人影は帰っていく、自分の部屋に(・・・・・・)

 




作中の魔法理論は独自の物のはずです。

こうした方がいいなどがありましたら指摘して頂けると幸いです。

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