6話 コミュ障の底力を見よ
更新しましたよ〜☺️
「お前ら席に着け〜」
教室に入るなりその言葉を発する。セミロングにしては長めな黒髪が歩く足に合わせて揺れる。教卓に色々な資料を置いて眼鏡の中央を指で上げた。
この人が担任か。若そうだしスタイルいいな。……もしかして弓梨より胸でかいかもしれんな。
顔は大人っぽい感じで、真面目と思わせるような揃った顔つきで、スタイルも申し分無い。黒いスラックスにスーツがとても似合っていて、如何にも教師という印象が伝わってくる。
こりゃあの猿共が騒ぎそうだな……確実に騒ぐだろ。
その予想は的中し、さっきの弓梨に話しかけていたチャラ男がお! と声を上げる。
「先生めっちゃ美人じゃーん! 後でLIMU教えて貰おうぜ!」
やっぱりな。相変わらずうっせー。しかも教えて貰おうとするのはあの超定番連絡アプリLIMUっていうね。そこもチャラ男っぽいな。
チャラ男にどう反応するか、と気になっていると、先生は表情1つ変えずに答えた。
「褒めてくれて嬉しいな。何なら私と付き合ってみるか?」
すげぇ爆弾発言するなこの人! ジョークだとしてもこれはなかなか言わないだろ!
「マジすか!?」
チャラ男が驚き、立ち上がる。
「嘘に決まってるだろ。座れ座れ」
「えーぇマジさげぽよだわー」
ギャグみたいなやり取りに周りの人達も笑い出す。その裏腹に俺はこんな事を思っていた。
何みんなの笑いとってんだよ。面白い印象与えやがってこの野郎。
こんなんで笑ってる奴らも奴らだ。笑いのツボ浅すぎだろ。下ネタ言ったら無駄に騒ぎ立てる中学生タイプだろコイツら。
ーーっといかんいかん。完全に思考がリア充恨むネット民族みたいになってた。こんな考えするからダメなんだ俺。
そんな事を考えていたら先生が黒板に何やら書き出した。その黒板には大きく 星野加南と書かれていた。
「今日からこのクラスを担当する星野加南だ。まぁ入学したばかりで分からない事が沢山あると思うが、なんとかしてくれ」
あっ、先生に聞いてくれとは言わないんですね。ってか星野って俺の編集者と同じ名前だ。まあ同じ名字くらい腐るほどいるか。
「えーっと……自己紹介は明日すればいっか。学校の予定とか手紙に書いてあるからそれ読んでくれ。以上! 解散!」
おいおいおいおい適当過ぎだろ! 見た目とか違っていい加減な人だなおい!
先生の解散、という声と共に生徒達が話しだす。「この後遊ぼうぜ」とか「お前何部入る?」などの会話が耳に入ってくる。
えええもうそんな仲良くなってんのチミ達! 俺まだここ来て誰とも話してないんですけど! 誰かと話したいよ!
そ、そういえば今頃だけど隣の人誰だろ……チラ見してみよ。
目を少し横に動かして隣を見る。
おお、これはこれは金髪が綺麗でとても綺麗なお嬢様でーー
……ん?
「ホワッツァ!ホワアァァアアア!?」
予想外の出来事に気持ち悪い奇声の様な叫び声を上げる。すると周りの視線が一気に俺の方に来ている気がした。
やばいやばいやばいやばいなんでここにいんの!? えええ!? ってみんなこっち見てるしすげぇ恥ずかしい! と、とりあえずこの場をどうにかしなければ……
「な、何よアンタ。急に変な声出して」
「い、いやぁ虫が体に入ったみたいで……あは、あはは……」
「そ、そう」
あ、今の反応絶対引いてる。絶対何コイツキモッ、童貞かよ。とか思われたに違いない。終わった。
周りも虫が入ったと聞いて、「なんだ」とか言ってさっきの状態に戻った。あぶねえあぶねえ。
それよりもこの人! 間違いなくあの写真のイラストレーターだよね!? まさか隣になるとは……ってか今の今まで気づかなかった俺もバカだな……しかし、こんな美少女ならあのチャラ男達も騒ぐと思ったが、全然彼女には反応無かったな……なんでだろ。
だけど困ったな……ここからどうやって俺が作家だと告げようか。やっぱり2人の場所の方がいいか? でもなんか告白とか思われそうでやだな。そうなるとここで切り出すしか無くなるよなぁ……まあ星野さんも彼女に言ってあるみたいだし大丈夫かな……
よし。自然に話しかけるような感じで行こう。そうだ、あのチャラ男みたいに行けばいい。何気なく自己紹介してサラッと。
コミュ障の底力舐めんなよ! 本気出せば普通に話せっからな!
俺は決意し、口を開いた。
「あ、あのさ。俺平坂月夜って言うんだけどさ……」
ーーそう言った瞬間だった。持っていた鞄を手をすべらせて落としたと同時に、一枚の小さい紙の様なものが彼女の真下に落ちた。
一人称は作者の性格が出ると言いますが本当ですねwコミュ障の主人公の心情だけ凄く腕が速く動きます()