5話 人気者
最悪だ。超最悪。なえぽよピーナッツだわマジで。
何が最悪かと言うと、今さっきまでやっていた入学式で寝れなかった事だ。入学式が始まり、さぁ寝よう! と、思って目を瞑った1分後に、ティーチャーに怒られるという最悪の仕打ちを受け、結局、クソつまらないハゲ共の話を2時間ほど聞く事になった。許すまじ。
「おい月夜、顔がいつもに増してひでえ事になってんぞ」
俺の顔を覗く様に見て、眞城也が笑う。入学式で眠れなかった事もあり、いつもの数倍イラついた。
「うるさい黙れ死ね。今、俺は激おこプンプン丸だから近づくんじゃねえ」
心底ウザそうに睨みつけて言うと、眞城也がため息をついて、やれやれ、と呆れる。
「へいへい。この後は教室で話をして終わりらしいから、お前も早く教室行けよ。俺はちょっと女の子と話してくる!」
俺にそう告げると、眞城也はスキップしながら教室に向かって行ってしまった。
……楽しそうだな。高校の何がそんなに楽しいんだか。
「相変わらず女に目がないな、あの猿……」
他人に等しい女子と初対面で話せるコミュ力は尊敬するけど。
俺も小学生までは普通に接せてたんだけどなぁ……いつからか、あっちの世界(二次元)にハマってからそっちに夢中になってしまい、毎日寝不足で学校で寝ていたら、女子との接し方が分からなくなってしまった。
まあ別に女子と話したくなんか無いからいいんですけどね! ちっとも話したくなんか無いですから!
「……さてと、俺も教室に向かうか」
周りを見ると、皆自分のクラスに戻っている。俺もそれを追いかけるように、ついていった。
どうやら1年生は3階らしい。いちいち階段を上るのがめんどくさいし、何より疲れる。もうエレベーター付けようぜ。
廊下では、もう既に男子女子が数名、共に楽しそうな会話をしている声が聞こえる。コミュ力が高いヤツらは本当に望ましい。
教室の扉を静かに開けると、いかにもビッチみたいな女子とチャラ男が大声で話しているのが横目で見える。
よし、コイツらには絶対関わらんようにしとこう。空気になるのは得意だからそれを活かして1年間頑張ろう、俺。
ビッチ共をスルーして黒板に書かれた席の表をじっくりと見つめる。
俺の席は……端の1番後ろか! よっしゃ最高だ!
正直1番端の席ほどいい席は無いと思う。授業中、隠れて作品のプロット練ったりしてもバレることは無いし、窓際の端なら太陽が当たって気持ちがいいし超当たりの席だ。
ところで弓梨はどこの席なんだろ……うっわ真ん中じゃん。真ん中は嫌だろうな……ってあれ? 弓梨が居ないな。
弓梨の席には誰も座って居なく、彼女が愛用している鞄だけがちょこんと置いてあった。
「私北見弓梨って言うんだ! よろしくっ!」
後ろから聞き覚えのある声で聞き覚えのある名前を言っている声が聴こえる。振り向くと、男達が何人も弓梨の方へ集まっていた。
……弓梨だ。
やはりコイツは世渡り上手というか、人当たりが良いというか……中学生の時もクラスの中心で皆と仲がいい、みたいな感じだからこんな事も簡単に出来てしまうのだろう。高校でもモテるんだろうな……さっさと彼氏作っちまえばいいのに。
「へぇ〜弓梨って名前なんだ! ねえねえ、弓梨って呼んでもいい?」
「良いよ〜」
ウヘァ!! なんだこの会話! 会って間もない女子を下の名前で呼ぶだと!?チャラ男の精神恐るべし……
俺もあのぐらい積極的に行った方がいいのかな……多分あんな事やろうとしたら緊張して、パニクって急に全裸になる気がする。うぬ。停学になるからやめとこ。
弓梨にバレないようにそーっと後ろを通る。コイツにバレたら一緒に紹介されそうな気がするしな。
自分の席に座ろうとしたところで、扉が開いた。
「お前ら席に着け〜」




