4話 クラスは…
お待たせしてすいません!
待てよ。
俺の絵師さんも、同じ学年ってことはクラスが一緒になる確率があるって事じゃねえか。一緒のクラスなら話しかけやすいし、一緒がいいな……
クラス表の紙には、色々な生徒の名前がズラッと書き込まれている。
5クラスあって1クラス30人といったところか……まあ普通だな。
隣では超必死に弓梨が名簿を眺めている。
「えーと……平坂だから、ひ……ひ……」
なんでコイツは、俺の名前を先に探してんだよ。普通自分の名前から探すだろ。
「あぁぁあ! 平坂月夜居た! Eクラスだ!」
声がでけえ……そして喜びすぎだろ。ちょっと嬉しいじゃねえか。
「分かったからボリューム下げろ」
しかし、よくそんなすぐ見つけられたな……E組って1番端で俺の出席番号は後の方だから見つけづらいはずなのにな……
「んで、お前のクラスはどこーー」
「あぁああぁあ! はわ、はわわわわ………」
俺の声を、さっきよりも数倍程大きい声でかき消した弓梨の顔は驚嘆し、驚きのあまり、変な声を発していた。
「だからボリューム下げろって今言ったばかりだろ! ってか変な声出すな!」
周りの人がチラチラこっち見てて、恥ずかしいんだよ! コミュ障に沢山の群衆の目線は辛い!
「だ、だって……私の名前……」
プルプル震えながら、彼女が、見ていたE組のクラス名簿には、『北見弓梨』と名前が入っていた。
あっ……(察し)
「同じクラスだな……」
それだけでこんな騒いでたのコイツ。あまり思いたくないがコイツは馬鹿なのか、同じクラスなだけだろうが。こんなんで成績が良いとか、予想がつかん。やっぱり人って見かけによら無いんだな。
「良かった……私は幸せ者だよ……」
「いや、ただクラスが同じなだけだから。お前リアクションデカすぎ」
まあ、そんなことを言っておいて何だが、俺も弓梨と同じクラスになれて正直嬉しいし、だいぶ安心している。もし、弓梨と違うクラスだったら、クラスの誰1人にも話しかけられずに終わるとか思ってたから良かった。
「ねえ月夜、今すぐ抱きしめていい?」
弓梨が、急に息を荒らげ、興奮しながら言い出した。
「…………は?」
「だって嬉しすぎて! いいでしょ?」
何言ってんのこの人。急に俺の事を抱きしめていい? とか言い出してきたよ。
嘘だろ……流石にこんな公衆の面前ではやらないよね? 後、ちょっと抱きつこうとして、俺に近づくのやめようか。うん。
「月夜、大好き!」
弓梨が周りの目など全く気にせず、真正面から俺に飛びつく。マシュマロのような、柔らかい感触が全身に行き渡る。
予想以上に、軽く、その感触はあまり悪い物では無かった。
「お、おい! 周りの人が見てるし恥ずかしいから離れろーーってすりすりすんな!」
胸にすりすりされ、背中がゾワワッと、なる。
「いいじゃん別に〜。私と月夜の仲でしょ?」
俺を抱きしめながら、上目遣いで子猫のように嬉しそうに笑う弓梨に、俺は、少し動揺しながらも彼女をやや強引に離した。
「いやただの幼馴染みだから! 誤解招く言い方はやめようか!」
何か視線のような物を感じて、後ろを振り向くと、同じ1年生の男子が俺の事を殺意の目で睨んでいた。
うわこっわ!! そんな目で、俺を睨まないでくれ! 別に俺は、リア充とかそういうのじゃない!
「お前のせいでこんな睨まれてるじゃねえか……どうしてくれんだ」
弓梨の耳元で囁くと、彼女も俺に習って甘い声で囁き返す。
「ごめんなさいの気持ちも込めて、キスする?」
「しねえよ! だからマジで、そういう高校生のピュアな心をいじるのやめて!」
今時の女子は、根暗なオタクをこうやっていじるのが流行りなんですか!? 鬼畜すぎる!
「おい、お前らめっちゃ目立ってるぞ。何してんだよ」
こ、この声は……
背後から、聞き覚えのある声がして振り向くと、呆れ顔をした眞城也が居た。
「お〜眞城也君! 久しぶり!」
「おう、弓梨。久しぶり」
弓梨の挨拶を、彼女の胸を直視しながらデレデレし、眞城也が返す。その顔はイケメンの面を台無しにしていた。
この変態が……1回でいいから死ねばいいのに。俺も変態だけど、コイツは表向きの変態だから何か許せん。
「月夜も久しぶりだな」
ニヒッと、いたずらっぽい笑みを浮かべる眞城也。
「だな。出来れば会いたくなかった」
眞城也は頭が良くて、もっといい所に行けたはずなのに、弓梨が俺についてきた為、眞城也も、こうしてついてきて俺と同じ学校に通うことになっているのだ。
「んなつれないこと言うなよ〜! 俺とお前の仲だろ?」
チッ、いい気になりやがって。
中学生の時から、コイツのせいで散々嫌な目に合わされてきたからな……最悪だ。
1番危なかったのは、弓梨に隠して作家になったのをコイツに話したのだが、数日後、弓梨が「最近、月夜がずっと寝不足気味なんだけど、なんか知ってる?」と、眞城也に聞いた時、眞城也にはアレだけ弓梨には内緒にしとけ、と言ったはずなのにアイツはーーアッサリ言いやがった。
その時の誤魔化したネタは確か、幽霊が出て怖かったから寝れなかったとか言ったっけな……それを知った弓梨が数日間、俺の家に泊まり込みに来て、一緒に寝るまで付き添ってくれたのだが、その時は罪悪感が半端なかった。弓梨は人が良すぎるから、俺はもう嘘はつかないとその時決心したのだった。
「ところで月夜」
「あ?」
「聞いて驚くなよ?」
「一々勿体ぶるな。さっさと言え」
「俺、お前と同じクラス」
「…………」
うわああああああああああああ! オワタ! 俺の1年間オワタ! やだやだやだやだやだよおおおおお! ってかニヤニヤしてんのうぜえええええ! はあぁぁぁぁぁぁもう無理イイイイイイイイイイイ!
「急に頭抱えてどうしたの月夜!?」
「きっと、俺と同じクラスになれたことが嬉しいんだと思う」
眞城也がニンマリして自慢げに言うと、弓梨がふむふむ、と納得する。
「そうなんだ! 2人とも仲いいもんね!」
いやちげーよ! 何納得してんだよ! はぁ……コイツらはもうダメだ。俺はこの空気についていける気がしない……
「俺、もう家でライジングHIKIKOMORIしてきていい?」
「何意味の分かんねえ事言ってんだ。早く行くぞ」
眞城也と弓梨が2人で、並びながら歩いて、楽しそうに話をしている。その姿は、なんだか俺にはお似合いカップルに見えてきた。
「はぁ……気分乗らねー」
最悪な気分になりつつ、俺は入学式の会場へと進んだ。




