20話 方向音痴
1週間以内に1話更新!
学校の門を出て、柊の少し前を歩く。周りには同じ制服を来た男女のグループがちらほらと居た。
やっぱりもうみんな友達作ってるのか。でも俺もこいつと一緒に歩いてるってことは……。
「傍から見たら俺ら友達なのかな」
柊が即座にゴミを見るような目で俺を見る。
「気持ち悪いこと言わないで」
「……お前どんだけ俺のこと嫌いなんだよ」
俺が柊の1番好きな作品の作者だと知ったらコイツはどんな反応をするんだろう。作者の本の絵を描けると喜ぶのだろうか。それともお前が作者かよってガッカリするか、どっちかだろうな。まぁほぼの確率で後者な気がするけど。
「ところで、近くの喫茶店ってどこ?」
「えーっと、まっすぐ行ったところに花屋があるだろ? そこを曲がって右に進んで……あれ、左だっけ?」
「なんでそれを教えて欲しい私に聞くのよ。アンタってバカなの?」
「……方向音痴なんだよ」
俺は子どもの頃から親ゆずりの方向音痴だった。その場で教えてもらった道は勿論、携帯のマップでガイドをしてもらっても全然違うポイントにたどり着く時が多々ある。もうこれは生まれつきのものでしょうがないとは思っているが、やっぱり不便だ。この歳にもなって迷子になりそうで少しヒヤヒヤしている。
なのに美月はそういうの大丈夫なんだよなぁ……。アイツ運動もできるし、コミュ力とかもろもろ取られてる気がする。羨まじい!
「方向音痴にもほどがあるでしょ……。なんとなく場所は分かったわ。ケーキが美味しいところよね」
「あー、そうそう。昨日食ったけどなかなか美味かったな」
「昨日行ったのに道忘れたの? ……アンタ1日に1回記憶喪失にでもなるわけ?」
「なんねえよ。道はどうも覚えるのが苦手なんだ」
勉強でも暗記とかは苦手だが、それほど酷くない。道はどうも忘れてしまうのだ。中学生の頃全然外に出なかったことを関係あるかもしれないけど。
「まぁ、私も得意ではないわ。アンタほど重症じゃないけど」
「フン、その内赤ん坊でも分かるようなマップが作られるからいいんだよ」
我ながらひねくれているとは思ったが、悪くはない。
「アンタひねくれてるわね……。一瞬アンタが「俺ガイル」の比企谷に見えたわ」
「おいおい何言ってるんだ。あんな素晴らしい考えを持つ比企谷さんと一緒にしないでくれ。あの人は偉大だぞ。ちゃんと筋が通ってることを言ってる」
堂々と言い放つと、柊は呆れたようにため息をついた。
「やっぱ同じぼっちだと共感できることも多いのね」
「お前人のこと言えねえだろ……」
「うっさい! この超美人の私にかかれば友達なんていくらでも出来るもん!」
出来るもんって……。まぁ美人ってところには文句は無い。今まで2次元で欲求を満たしていた俺が言うんだ。間違いは無い。
「はいはい。ところで最近何のラノベ読んでる?」
このままだと柊がプンスカしたまんまになってしまうので、話を変えた。
「そうね……。最近バトルを読もうと思って、王道の「ソードアートオンライン」を今頃ながら読んだわ。とにかくシリカちゃんが可愛くて……」
その後喫茶店に着くまで、柊とバトル物のラノベを話を熱く語った。