13話 大ファン
GWだからたくさん執筆できますね〜
「そういえばずっと自己紹介とかして無かったな……お前、名前は?」
「何でアンタなんかに名前教えなきゃいけないのよ」
「いいだろ別に名前くらい」
「え、やだ」
そこまで拒絶しなくても……俺はコイツに嫌われてんのか?
「いや、どうせ席隣だからすぐ分かるし」
「げっ、そうだった……」
心底嫌そうに彼女が思い出す。
「嫌そうな反応すんな」
ここまで露骨に嫌な反応されると、俺の硬いメンタルも割れそうになるぜ……
「仕方が無いわね。この私が自己紹介をアンタにしてあげる!」
なんか楽しそうだな……自己紹介、好きなのかな。そんな人は居ないだろうけど。
「私の名前は柊愛凛桜! アメリカと日本のハーフだけど、見た目以外はほぼ日本人よ! 好きな食べ物はどら焼き、嫌いな食べ物は野菜、特にトマトね」
柊愛凛桜……。やっぱり好きな食べ物はどら焼きか。夢にまで出てたもんな。好きすぎだろ。
ってか、トマト嫌いって……
「俺もトマト嫌いなんだ。一緒だな」
「なんかその言い方気持ち悪い。やめて」
失礼だなコイツ! 今までどんな環境で育ってきたんだ!? どっかのお嬢様かよ!
「お前は人に対する礼儀ってもんが無いのか? もっと言葉を慎まないと、友達出来ないぞ」
「うっ……」
『友達が出来ない』という言葉に過剰反応する柊。やはり気にしているのだろうか。
「そんなツンツンしてたらドMの変態ばっかりついてくるし大変だぞ」
「別に普通の人には普通の接し方をしてるに決まってんでしょ! 余計なお世話よ!」
「……そうですかい」
もう俺が何言っても無駄だな……とやかく言ってもコイツの血圧が上がるだけだ。
「ところで、1つ質問してもいいか?」
「……何よ」
「好きなラノベは何ですか!」
やっぱり1番聞きたいよねここ! ラノベが好きって事もあるし、ラノベ作家って事もあるけど、やはり柊が俺の作品が好きなのかを確かめたい。絶対に聞くべき事だ。
「…………」
柊が黙って考え込む。今、頭の中で読んだ作品で面白い物の整理でもしてるのだろう。
「んー……まぁ、私は基本ラブコメが好きでそっちの作品が多いんだけど……『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』とか、『僕は友達が少ない』とか結構好きね。どっちも泣けたし、桐乃ちゃんと小鳩ちゃんマジ可愛いすぎて天使だし」
まぁ王道だな。俺もその2キャラは特に好きだな。……なんか俺とコイツ共通点多くないか? 気のせいだろうか。
「でもでも……私がいっちばん好きなのは、何と言っても『ヒロイン攻略』よ!」
そう言われた瞬間、俺は心の中でガッツポーズをした!
「あの作品は凄いのよ! 一見、ただのハーレム物のタイトルと内容だと思ったけど、読んでみたら全然違かった。ストーリーもしっかりしてて、コメディとシリアスのバランスが神がかってて、主人公に共感しちゃうところだってあった。それでキャラも可愛いし、ちゃんと主人公の気持ちも伝わってくるし、アンタがラノベに恋してるって言うなら、私はこの作品に恋してるってくらい好きだわ!アレを読まない人にラノベを語る資格は無いわ!」
「…………」
ハッキリ言っていいか?
超嬉しい。下手したら人生で嬉しかった事ランキング1位に入るくらい嬉しい。
今まで、読者に感想を貰った事はある。「○○すごい可愛かった!」とか、「展開凄すぎて驚きました」とか、「次巻楽しみにしてます!」とか……勿論それも嬉しかった。ただ、1つ違う事がある。それはーー
こんなに楽しそうに、沢山俺の作品の感想を言ってくれている事だ。
SNSじゃなくて、直接言ってくれている事もデカイ。でも、SNSでもここまで詳しく言ってくれる人は居なかった。多分コイツは1度や2度、読んだだけじゃない。何度も読んでいる。じゃあ俺が読者に伝えたい事を全部言うなんて出来ない。
「そうかそうか。どれだけ好きなのか凄い伝わったよ」
それだけ言うと、彼女は不思議そうな顔をした。
「何よアンタ。何でそんな嬉しそうな顔してるのよ。まるで作者みたいな反応ね」
柊のその言葉で反射的に体がビクッ!と、反応した。
なぜか。それは、柊の言っていることは図星で、俺がその作品の作家であるからだ。