誓い
「リアラ、少し良いか?」
「はい、何でしょう?」
騒ぎも収まった後、外の空気を吸いに外に出たリアラはクレスに呼び止められた。
僅かながらに居心地が悪そうなクレスを何とは無しに視たリアラは、そこに強い決意と若干の羞恥があることに気付いた。それが伝播したかのようにリアラが赤くなり、それを察したクレスの顔もまた紅潮する。
「――その、」
「ひゃ、ひゃいっ!」
「…………」
いたたまれない空気が漂った。そのまま、場を沈黙が支配する。
「す、すいません……御用とは、一体?」
クレスよりは早く回復したリアラが尋ねる。
彼の弱点は雰囲気破壊。リアラもそろそろ気付いていた。
「さっきのこと、なんだけどさ」
二人の表情が、真剣なものに変わる。
「俺は、今度こそアンタを守り抜いてみせる。力の出し惜しみで今回みたいな無様を晒すようなことは二度とない。――それを、誓う」
「…………っ」
真剣な顔で告げられた言葉は、その頼もしい内容に反する危うさでリアラの胸をざわつかせた。その誓いが内包するのは強い後悔と自責の念。
それは他ならぬクレス自身を追いつめているようで、リアラは知らず息を詰まらせた。
その反応をどう受け取ったか、クレスはいつものように軽く笑うと先にテントへ戻ろうとする。
「悪い、重かったな。気にすることはない、忘れてくれ」
「――待ってください!」
このままクレスを帰してはいけないという直感に突き動かされ、リアラは呼び止めた。
「――ありがとう、ございます」
咄嗟に浮かぶ言葉も無かった自分に内心で呆れながらも、万感の想いを込めてその一言を伝える。
驚いたようにリアラを見つめるクレス。
そんなクレスにリアラは歩み寄ると、おもむろにその右手を取って跪いた。
予想だにしない展開にクレスが固まっていると、その一瞬の隙に手の甲に口付ける。
「――――――!!!?」
「わ、ちょ、ティルさん、乗り出しすぎっ……!」
ドサッという音に弾かれたように振り向くクレスとリアラ。そこにはナベリウスを下敷きに倒れるティルナの姿。
「――!? あっ……、別に、これには特に、疚しいことはなくってですね!?」
「リ、リアラ今のってなんか逆じゃなかったか?」
「……! …………!」
「クレスさん、腕が裂けてるれす!」
「うわ、まさか今ので!? ああいや、こっちの問題だからリアラは悪くないんだ!」
「と、とりあえず治療を……!」
クレスが生命魔法で自身の治療に専念すると、次第に混乱は収まった。
「……寝るか」
やがて治療を終えたクレスの一言に、全員が頷いた。




