エピローグ
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アタシの名前は『獅童ゆら』。
VTuber事務所『アナザーパンデミック』所属。
事務所設立時から支え続けた屋台骨。
その名の通り、獅子獣人のギャル風お姉さんである。
……今は鳥獣人のお姉さんである。
「いやおかしいでしょ!?」
もはや獅童の要素ないけど!?
え、子どもっぽいから『童』?
それ褒めてる?
……ほんとに?
いや、そこじゃないよね!?
「歳の割に童顔とかよく言われるけど……なんか複雑……!」
というか歳の割にって何? まだ3Xだって!
…………………………あれ?
「そんな歳の人間が『最近は甘えんぼさんだね』とか言われてるの、マズいのでは……?」
おかしい……最初の頃はちゃんと、頼りになる先輩だったはずだよね?
いやいや、ちゃんと相談もしてくれるし、頼りになる先輩のままだよね?
……そうだと言って!
◆
あちしは……僕は『猫野タマ』。
マホロが代役を見事務めた3D配信は大盛況。
僕の切り抜きもかなりの数、再生されていた。
……そんな僕宛のマシュマロやDMには、みんなとは違う毛色の物が結構来る。
みんなが心配しそうだから表には出さないけどね。
『他人の切り抜きで稼ぐクズ』
『切り抜きと他人の配信をかき乱す以外出来ない雑魚配信者』
……まぁ抜粋しただけでもこんな感じ。
最初の頃は少し気になったけど、今はもう平気。
切り抜きが特に目立ってるのは事実だからね。
それに……『僕が僕として』やれることを全力でやった結果だから。
……他人にどう言われようと、僕はこの結果を誇りたい。
切り抜きにしか目が行かないようなお客さんに、用はない。
「……マホロっちあたりは、こんなの来てるなんて言ったらめちゃくちゃ怒りそうだにゃー」
まぁ、知らなくていいこともあるよね?
みんな言わないだけで、似たようなものは届いてると思う。
どこにでもそういう輩ってのはいるものだからね。
……みんなに実害が出るようなら、本気で対応するよ。
僕はみんなが……このアナザーパンデミックっていう事務所が大好きだからね。
◆
……初めてその子にあったのは、なくした髪飾りを探していた時。
その子は私がイジメられてるって勘違いして、一緒に髪飾りを探してくれた。
勘違いは無事に解けたけど、私がひとりでいるのは変わらなくて。
……それからは、その子が一緒にいてくれて。
引っ越しするって言われて、とても悲しかったけど……また会おうって約束したから。
だから私はずっと……ずっと、また会えるって信じてた。
(でもこの時、私は男の子として育てられてたから……)
再び会ったその人は、少し闇を抱えてたけど……昔と変わらない、あの子のままで。
変わってないことに対する喜びと、抱えている闇に対しての、ほんの少しの後悔。
……あの時、ちゃんと連絡先の交換とかをしておけば、違ったのかなって。
そう思ったこともあったけど……今はそうじゃない。
……マホロさんは自分で『居場所』を作れる人だった。
私が手を伸ばそうとする前に……どんどん、遠くへ行ってしまいそうで。
でも、マホロさんは……そんな私に気付いて、手を伸ばしてくれるから。
——私はいつまでも、あなたのそばに居たい。
そう、思う。
◇
……目覚めてすぐに、スマホを手に取る。
珍しく早めに起きたようだ、とりあえずしえるにメッセージだけ送っておこう。
「……おはよう、っと」
返信は……まだないか。
それから軽くストレッチをして、トースターに食パンをセットする。
焼いている間に顔を洗う……この一連の流れももはや慣れたものだ。
チン! という小気味良い音とともに、こんがりと焼けたパンが顔を出す。
薄めにバターを塗り、コップに牛乳を注ぐ。
「いただきます」
そのままサクサクと食べ進めた。
「……ごちそうさま、っと」
これが、いつもの朝。
……昔の俺じゃ、想像もできないほどに穏やかな始まり。
それが今では当たり前になった……みんなのおかげだ。
「さて、今日はどんな『いつも通り』になるかな……?」
そんな言葉を口にして、俺は配信開始のボタンを押した——。
——アナザーパンデミック 完——
というわけで、これにて完結です。
自分が紡ぐのはここまでですが、マホロたちのいつも通りはこれからも続いていくことでしょう。
飽き性な自分が最後まで書き終えることが出来たのは、マホロたちが楽しそうにしているのをもっと見ていたかったからかも知れません。
また書きたいものができた時にお会いしましょう。
その時はまた、新たな物語をお楽しみ頂けると幸いです。
2か月半もの間この作品をお読み頂き、ありがとうございました。
和泉アキラ




