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「うわぉ……本当に鳥獣人になってる……!」
マホロくんが代理してくれた配信が終わったあと、あらためてエイヒレママのSNSを確認しに行くと、本当に描かれてた。
獅子の耳と尻尾がなくなった代わりに羽耳? と翼っぽいマント……いやコートだこれ。
なんで無駄に完成度高いのぉ!?
このイラストに対するコメントもまた酷い。
・全然アリ
・むしろこれが公式立ち絵
・最初から鳥獣人だったんじゃね?
・これ見せられたら勘違いしそう
・ゆらゆら漂ってたって、ただ空の散歩してただけか
・なるほどなぁ!
なるほどじゃないんだけどぉ!?
待って? 嫌なことに気付いちゃったんだけど。
いや、心配されることは少ないほうがいいんだけど……。
「うわぁやっぱり……」
エゴサした結果、誰もアタシのぎっくり腰を心配してくれてない。
……いや、序盤くらいまでの投稿はしっかり『ゆらママ大丈夫かな?』とかあったのに、中盤以降から全然ない。
心配されるよりはいいんだけど……いいんだけどさぁ!
そもそもタグがおかしい、普通『#獅童ゆら3D』とかじゃないの?
なんで『#月見里マホロ3D』なの!? 別にマホロくん3D化してないよねぇ!?
「え、しないよね? アタシが休んでる間に完成して先にお披露目するとかないよね!?」
いや、別にいいんだけど……いいんだけどぉ!
……はぁ。
「マホロくん、カッコよかったな……」
ふと、家まで救助に来てくれたマホロくんを思い出してしまう。
……いやまぁあの子、最後までアタシの状態に一切触れなかったけど。
わかるよ、多分あの子のことだから『ここで指摘したら恥ずかしい思いをさせる』とか考えて何も言わなかったんだろうけどさ。
……わーかーるーけーどー!
いや、あの状態で『先輩かわいいですね』とか言われても困るけど。
言われたら殴りたくなりそうなのは間違いないんだけど。
それにしたって何かしら反応くれてもよくない!?
部屋! 男女ふたりきり! 自称美女! 何も起きないはずがなく……!
何も起きてないんだわ! 起きてたらやばいわ!
にゅあああああああ、自分でも何考えてるのかわかんないよぉ!?
勢いでしえるちゃんにケンカ売ったけど、本当にアタシ、マホロくんに恋してるの?
本当に? 助けてもらってのぼせただけじゃなくて?
…………………………。
いや無理どう考えたって惚れるしかないじゃん。
あの子を助けてるつもりで助けられてたのはアタシってことじゃん……。
マホロくんに以前言われた、あの言葉が。
『それでもまだ、自分を出すのが怖いなら——『新しい獅童ゆらの一面』として、ゆっくりと……ゆっくりと、積み上げて行きませんか?』
アタシはアタシのまま、ゆっくりと変わればいいんだって。
うぅん、変えるんじゃなくて……新しい一面を見つけていこうって。
——あの時の言葉が、ずっと頭に残ってる。
「……好きだとかはまだよくわかんないけど……マホロくんが特別だってことは、わかるよ」
これもまた、『新しい獅童ゆらの一面』ってことで……。
これから大変かもだけど……これからもずっと、よろしくね?
◇
【朝活】代理は疲れるのじゃ【AP・月見里マホロ】
「おはこんマホロ~! AP2期生、月見里マホロなのじゃ!」
・キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
・あ、本当に自己紹介削ってきたw
・あれでしてやったりって思ったんだろうなw
・まぁでも実際長かったもんなぁ
・好きだったからたまには長文自己紹介して欲しいけどな
・それもわかる
「まぁ、わしも別に、あれが嫌いだったわけじゃないからの……正式な場とかなら当然やるぞ?」
・それはそう
・でもやっぱ、普段の時でもたまには聞きたいなー
・それもそう
「しょうがないのぅ……んんっ、アナザーパンデミック2期生、福を呼ぶかもしれないし、祟るかもしれない座敷わらし系VTuber『月見里マホロ』なのじゃ!」
・知ってるけど?
・なんで自己紹介したの?
・しかも長文のほうだし……
・wwwww
「んガアアアァァ~~~~~!!!!」
・今日のノルマ達成!
・ほんとひでーなぁw
「なぁ、お主ら本当にわしのこと好きなんじゃよな?」
・もちのろんよ
・ほら、好きな子には意地悪したくなるってやつじゃん
・それ小学生……
・しかもそれ、相手には大体嫌われる要素しかないやつw
・なんでイジメてくるやつのこと好きになると思うんだろうなぁ……
「……ほんとになぁ」
……俺はそういう経験ないけど、イジメられ……とまではいってないか。
声をからかわれることは多かったし、それが理由で多少気持ち悪がられたりはあったけど……イジメと呼ぶほど大げさなものじゃなかったし。
まぁ、俺が我慢していれば済むことのほうが多かったからな。
……おっと、話が逸れたな……。
「正直嫌がらせしてきた相手を好きになる理屈は一生わからんと思うのじゃ……」
・それはそう
・でも結構多いよねぇ、そういう恋愛マンガ
・一生わかり合えない気がする
・ただしイケメンに限る……ってこと!?
・いや、顔が良くても嫌なもんは嫌じゃね?
・それはそう
「どうせ付き合うなら性格が良いほうがいいと思うんじゃよなぁ……もちろん顔、というか身だしなみを疎かにしていいわけではないがな」
・刺さるわー
・急に刺してくるじゃん
・それで刺さるって自覚あるなら整えたら?
・黙れイケメン!
・イケメンではないと思うがw
・オレらみたいなのが頑張ったって無駄なの! どれだけ頑張ってもどうせ『あの顔で身だしなみ気にしてるのキモw 自意識過剰w』とか言われるんだ!
・闇深……実際言われたの?
・いや、そもそも身だしなみ整えるのなんてほぼしたことない
・えぇ……
「……これは独り言じゃが」
・ん?
・お?
「なんと最近、男性でも使いやすい肌ケア商品が出たんじゃよ!」
・wwwww
・なんて自然なPR
・この動画はプロモーションを含みます
・含んでないんだよなぁ
・そういや案件やってたなw
「まぁそんなわけでな、少しでも自分を変えたいと思うなら……1歩踏み出してみんか?」
・マホロちゃん……
・なんか凄い実感こもってる
・そりゃ実際使った感想だろうし?
・違うそうじゃない
「……わしも、VTuberとして1歩を踏み出したからこそ……今があるのじゃ」
——『君の声は絶対、強力な武器になると思う!』。
あの時、ゆら先輩にそう言われて……誘われて。
この世界に足を踏み入れた。
そして……こんなにも大勢の人たちが、俺を見にやって来る。
昔の俺に言っても、絶対に信じないだろう。
「こうしてみんなと笑い合える時間が、わしの一番の宝物になったのじゃ!」
・マホロちゃん!
・涙で前が見えない
・嬉しいこと言ってくれるぜ
・オレたちもそうだよ
・マホロちゃんがそうやって俺たちを笑顔にしてくれるから
・毎日マホロちゃんの朝活で元気もらってる!
・『ボクらも、そうだよ』
・海外ニキもよーみとる
……いつの間にか、『月見里マホロ』は世界に広がって。
いつまでも、みんなと笑顔で笑い合える……。
そんな配信が、俺の理想。
だから——。
「うむ! これからも、毎日をみなで笑える日々にしていくために、わしは頑張るぞ!」
この誓いを胸に、これからも『いつも通り』の日々を過ごしていくんだ——!




