↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
77/81

10

 ◆


 その日、突如公式SNSにて発信されたその内容に、全ゆら人が驚いた。

 


 アナザーパンデミック【公式】 @AP_STAFF

 皆様、常日頃からアナザーパンデミック所属タレントの配信を楽しんでくださり、ありがとうございます。

 このたび、弊社所属タレント『獅童ゆら』の3D記念配信を行う予定でしたが、当日になり『獅童ゆら』本人がぎっくり腰になりました。

『マンガでよく見る『ほっ』て起きるのやってみたかった』と口にしており、本人も反省しているとのことです。

 いや、マジで何やってんのあの子?

 

 ……このたび発生した件に関して、所属タレントの体調管理をしっかり行えなかったこと、誠に申し訳ありません。

 本件に関する全責任は、社長である私『別所(べっしょ) 散華(さんげ)』に……。

 いやねぇよ、なんで私が責任負わなきゃいけないんだよこれ。

 誰が『やってみたかった』でぎっくり腰になるの予見できるんだよ。

 

 えー、当人との話し合いの結果、3D配信は難しいとのことで、代わりの生贄……犠牲者を用意しました。

 みんな大好き『月見里マホロ』です、本人の了承も得て……多分得てるので、大丈夫でしょう。

 

                 アナザーパンデミック代表取締役社長  別所 散華



 ・前半まで頑張ったのに……

 ・いや、これは社長じゃなくても無理だろw

 ・ゆらちゃんぇ……

 ・ぎっくり腰はやばい

 ・養生してくれ、まじで

 ・残念なのは確かだけど、代わりにマホロちゃんが3Dになるってこと?

 ・もしくはゆらママの3Dをマホロちゃんが動かして、喋るのはゆらママとか?

 ・確かに犠牲者で草

 ・ゆら人の期待を一心に背負ったマホロちゃんの心労やいかに

 ・絶望?

 ・でしょうね

 ・でもマホロちゃんなら……マホロちゃんならなんとかしてくれる!

 ・ぶっちゃけ後日あらためて~でもいいと思うんだけど

 ・設備の準備やらなんやらあるだろうし、キャンセルもむずいんじゃね?

 ・だから代わりの生贄……犠牲者がいるわけで

 ・言い直しても酷さは変わらないんだわ

 ・原文ママ(ガチ)

 ・それが一番酷いw

 ・まぁでもマホロちゃんだしな

 ・んだんだ

 ・きっと終わった頃には『いつも通りのAPだったな』ってなるんだろ

 ・3Dお披露目って大事だと思うんだけどなぁ

 ・それもまたAPらしさってやつよ

 ・んだんだ


 そんな風にSNSは気軽な盛り上がりを見せていた。

 誰も深刻には考えていないのがよくわかる。

 ……そのことを知らないマホロの心労やいかに?


 ◇


 ……どうしてこうなった?

 そうだね、全部社長のせいだね(結論)

 はぁ……心の中で悪態を吐いても事態は変わらない。

 任されたからには、やれることをやろう。


「……で、俺は何をすればいいんだ?」

『知らんにゃ』

「おい」

『あちしに言われても困るにゃ?』

「……すまん」

『いいってことよ、マホロっちも混乱してるだろうしにゃー』

 

 ……なんか引っかかる気もするが。

 それを追求してる余裕はなさそうだな。


『マホロ、お前には2つの選択肢がある』

「はい?」

『1,ゆらのガワを動かして、喋るのをゆらに任せる』

「あぁ……3Dだけ代役で動いて、中身は本人が喋るやつですね」


 他事務所のVTuberがやってるのを見たことはあるから、イメージはしやすい。

 

『2,考えるな、感じろ』

「は?」


 ……は?


「…………………………は?」

『おぉ、マホロっちの困惑が手に取るようにわかるにゃ』

『……それはそう、です……』

『あれでわかったら天才にゃ』


 ……やっぱこいつら何か知ってるな?

 でも、説明しないってことはそのほうがきっと『面白い』んだろう。

 意味のないことはしないってわかってるからこそ、否定もできないんだよなぁ。

 それから、機材の使い方やリハをして、一応準備は完了。

 ……あのリハ絶対意味ないよな? いや、機材に慣れるって意味じゃ役には立ったのか。


 ◆


 獅童ゆらのぎっくり腰報告からしばらく。

 元々有料配信だったわけでもないので、特に問題になるようなこともなく、順調に配信開始が近づいていた。

 むしろリスナーたちの興味は『マホロちゃん何やらかすの?』にしかなかった。


 ・マホロちゃん何やらかすのかなぁ

 ・やらかす前提で草

 ・だってマホロちゃんだし……

 ・それはそう

 ・ぐぅの音も出ない正論

 ・正論ティー

 ・ティーといえば、お嬢が紅茶飲み比べ企画とかやってたよな

 ・あったなぁ、双子ちゃんは『にがーい』って言ってたけどw

 ・ストレートはキツいわ、オレでも無理

 ・いけないことはないけど、せめてミルクは欲しいかなー

 ・どうする? マホロちゃん3D紅茶銘柄当てとかだったら

 ・あの子そんなんわかるっけ?

 ・そもそもゆらママ用の企画をマホロちゃんがやる、みたいな感じになるだろうし

 ・でもゆらママ用の企画はゆらママの時に置いといたほうがよくね?

 ・つまりマホロちゃん用の専用やらかし企画があるわけだな!

 ・まぁ見てろよ、どうせマホロちゃん何も聞かされてないからw

 ・それはそう

 ・むしろ知ってる人いるのか?

 ・……社長はさすがに知ってるやろ?

 ・わからんぞ……いつかのSNとの初コラボだって、社長聞かされてなかったし

 ・そうなの!?

 ・アレってゆらママとお嬢が勝手に口約束しただけだったんだっけ

 ・そうそう、本決まりしてないのに名前言おうとするからマホロちゃんが慌ててた

 ・そういえばあの時がAP4人揃っての初コラボだったんだよなぁ

 ・懐かしいなぁ

 ・まだ1年も経ってないんだよなぁ……

 ・この前2期生が1周年やってたのが信じられない

 ・そんなんやってたか?

 ・やってただろ、新衣装お披露目(笑)

 ・マジでいつも通りすぎて『1周年!』って感じしないんだよなぁ……


 マホロの心労をよそに、リスナーたちはいつも通りの空気で、いつも通りの配信を楽しみに待っている。

 誰も心配はしない、していても口にはしない。

 それだけの信頼が、彼らの中にしっかりと存在しているのだから——。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。