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◇
……マホロです、助けに来た先輩に叱られているとです。
……なんで? いや、これは俺が悪い……いや、ほんとに?
悪いのは100%社長だと思うけど、いやでも実際来たのは俺だし……うん。
「聞いてる!? マホロくん!?」
「はい、聞いてます、はい」
……甘んじて受け入れよう。
あ、すでに社長には連絡してるから安心して欲しい。
ぎっくり腰は辛いですよね、先輩。
わかりますよ、俺もやったことありますから、うん。
「ねぇ、なんか慈悲深そうな目で見るのやめて?」
「無理ですねぇ……」
「ねぇー!?」
だって、もう絵面が面白すぎるし。
いや、女性に対して思うことじゃないのは十分承知なんだけど。
ぎっくり腰で動けないのも承知なんだけど。
……その体制で怒ってる姿がかわいすぎて、俺は何を思えばいいんだ?
大丈夫口には出さない、今の状態でかわいいって言われて喜ぶ女性はいない、知ってる。
声がかわいいと、さんざん言われてきたけど、一度も嬉しいと思ったことがないから。
……あぁ、最近はちょっと嬉しく思えるようになったけど、それは『マホロ』としてだからだ。
だから、本人的には褒め言葉のつもりでも、状況で変わるのも理解してる。
「というかあの、マホロくん」
「はい、聞いてます、はい」
「聞いてないじゃん、そうじゃなくてあのさ」
「……あ、ごめんなさい、なんですか?」
「なんでまだ部屋にいるの?」
…………………………。
「確かに! 失礼しました!」
「あ、待ってやっぱそこにいて……ひとりでいるの寂しい……」
「どっちなんですか……わかりましたよ」
「うぅ優しい……スマホ最高……」
「今スマホに感謝しました?」
「取ってくれてありがとう」
「どういたしまして」
別にいいんだけどね?
◆
ひぃ……ほんとになんなの、この天然マホロめぇ……。
あ、座敷わらしだった……。
素直に感謝したいのに、言葉が出ないよぉ!
こんなの無理じゃん! 蓋するとか無理じゃん!
アタシだって穏便に済ませたかったのに、なにこれぇ!
救世主ぞ? 惚れるに決まってるでしょぉ!?
いやでもこの姿見られたしな……一切触れてこないけど。
そこがいいとこなんだけど、それはそれで悔しくない?
ちょっとくらいドギマギしてくれてもよくない?
え? アタシの魅力が足りてない? 自慢じゃないけど結構かわいいと思うんだけど!?
まぁ、あのしえるちゃんが近くにいるんだもんね……アタシじゃ無理かぁ。
こんな形で自覚することになるとは……しかも失恋確定……?
いや、そうでもないな、だってマホロくんだし。
そもそもしえるちゃんのことすらそういう対象として見てなさそうだし。
どう考えてもふたりイチャラブしてておかしくない親密度のはずなのに、進展どころか恋愛のレの字もない!
あぁうん、これ考えたら負けなやつだ、絶対そうだ。
というかアタシばっかりこんなモヤモヤするのなんか腹立ってきたな?
八つ当たりなのはわかってるけどごめんね……!
◇
なんか、先輩が唸りながら百面相してるんだけど……俺ツッコんだほうがいいの?
「マホロくん!」
「はい?」
「……正座!」
「……してますけど」
「……ならヨシ!」
何が?
「じゃなくて! あーもー……うにゃー!」
「大変だ、先輩がご乱心……」
「そーゆーとこだからね!?」
「え?」
今の、俺が怒られてたの?
「あの、先輩……俺がなにかしたなら謝りますから……ね?」
「ぐぎぎぎ……」
「いや、マジでご乱心じゃ?」
「んもぉー! しえるちゃん助けてぇ!」
「……通話します?」
「そうじゃなぁい! ……いたい!」
「あぁほら、安静にしてないと……」
「くそぉ優しい……どうなってんだこの生き物……!」
それはこっちのセリフなんだが?
本当に大丈夫? 大事な日にやらかして精神やってない?
「ところで先輩、怒っていて忘れてるかもしれないので、一応言っておきたいんですけど」
「なに?」
「このあと3D配信、やれます……?」
「…………………………無理ぃ!」
「ですよねぇ……」
軽いものでも治るまで数日かかるだろうに、この痛がり方だとな……。
とはいえ配信に穴を空けるのは先輩が一番嫌うことだろうし……。
「……マホロくん、うぅんマホロちゃん!」
「……嫌な予感しかしないですが、なんでしょう?」
「代わりにお願い!」
「…………………………」
だよなぁ、そうなるよなぁ……。
でも、それは……いいのか?
穴を空けるよりはマシと思うべきか……?
あらかじめ告知しておけば大事には至らないか? 本当に?
鬼の首を獲ったかのように炎上させる連中はいないか?
「……ふぅ」
「おっ……?」
「まずは社長に聞いてからです」
「……だよねぇ」
そして社長へ確認の電話をすると、グループ通話に招待された。
『ゆらも聞こえてるか?』
「聞こえてるよー!」
『ならば全員に聞くが、ゆらの代理をマホロに任せる件、異議のある者は?』
『ないにゃ』
『ない、です』
「アタシもないよ!」
『『ボク(わたし)もないよ!』』
『ワタクシも、もちろんOKですわ~!』
『よし、なら全会一致だな……頼んだぞ、マホロ?』
「……はぁ」
知ってた。
……ここで断れないことも、想定済みなんだろうな。
ほんと、みんな俺のこと知りすぎじゃないか?
「それじゃ、俺はSNの事務所に戻りますからね」
「えぇー! もうちょっと居て欲しいなぁ?」
「そんな目で見てもダメです」
『むむ……?』
『しえるちゃんステイにゃ』
あ、通話繋いだままだった。
まぁ別にいいか。
「……しえるちゃん、アタシ負けないからね」
『むむーっ!?』
『ちょっ、しえるちゃん暴れないで……ぎにゃーっ!?』
……哀れタマ、なむなむ。
『……死んでないにゃ!』
「それじゃ社長、SNSでしっかり告知しといてくださいよ?」
『……あぁもちろんだ、任せておけ?』
……なんでちょっと不安になるんだろうな。
いやいや、あの人は仕事に関してはまともだし、大丈夫だろう。
……大丈夫、だよな?




