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本日2話目です、1個前のプロローグからお読みください。
◇
「……で、なんでいるんだ? しえる」
「……ご飯は、大事……です」
「だから終わったら食べるって言っただろ……」
朝活を終えて、買い物に行こうとしたその矢先。
しえるがやってきた。
「……自分から言う事じゃないけど、あまりほいほい男の家に来るもんじゃないぞ?」
「お姉ちゃん公認、なので……」
「社長……」
あの人、俺たちにどうなって欲しいんだよ……。
そんな時、スマホにタマからの通知が。
『<|>ω<|>』
「は?」
なにこれ?
困惑していると、どうやらしえるはしえるで誰かからメッセージが来ていたらしい。
「ゆら先輩、が……『マホロくんによろしくね!』、って……」
「ちゃんと食べるって言ってるんだけどなぁ……」
まぁ、ふたりのおかげで空気が変にならなかったのは、助かった……か?
「……実は、1周年の件で……相談、が……」
「わかった、とりあえず食べながら話そう」
相談ね……俺で力になれることがあればいいけど。
◇
どうやら、ここへ来る途中でコンビニに寄ってくれたらしい。
「わざわざ悪いな、あとでお金渡すから」
「……別にいい、です……よ?」
「ダメだ、金銭関係はちゃんとしとけ?」
「……はい」
おっと、説教臭くなってしまったな。
でも、『身内だから』とか、そういうのでなぁなぁになると、後々しえるが困るからな。
言うべきことは言っておかないと。
「……ふふっ」
「ん? どうした?」
「……いえ、昔のマホロさん、だったら……こうは、ならなかったかな、って……」
「……確かにな」
昔の俺なら、『相手に嫌な思いをさせるかも』とか考えて、何も言わなかったかもしれない。
でも今は……色んな人から教わったから。
『相手を思って言う言葉』は、ちゃんと届くって。
「……ありがとう、しえる」
「ふぇっ……?」
俺を気遣って、色々としてくれているしえるに。
あらためて、お礼が言いたくなったんだ。
◆
「……どう思うにゃ?」
「しえるちゃん本人も、まだそこまで考えてなさそうだよねぇ」
そんなふたりを盗み見ている者が、ふたり。
「Vtuberの恋愛は燃えやすいからねぇ……」
「少なくともマホロっちは0にゃね……」
……無意識ではどう思ってるかわからないが。
少なくとも、マホロ本人にその気はないだろう。
それは、この1年間の信頼の積み重ねとも言える。
本人のことを知ったからこそ、はっきりとそう言えるだけの根拠ができた。
「しえるちゃんも、今は恋愛! って言うより……幼馴染として? 親友として? みたいな……?」
「男女の友情は成立しないって聞いたけどにゃー?」
「目の前のものが全てだよ、タマちゃん!」
「今後どうなるかはわからんけどにゃー」
……それは自分たちの関係もなのだと、この時のタマもゆらも、気付いていないのだった。
◇
結局お礼の話だけで朝ごはんを食べ終えてしまった。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様、です」
「……それで、相談したいことって?」
まぁ、それは口実でご飯を渡しに来ただけと言われても納得するけど。
「……私、何をすれば、いいんでしょう……」
「ん?」
「マホロさんの、ように……お茶菓子さん、に……感謝も、違う気が、するんです」
「まぁそれはそれでいいと思うけど……」
「……タマさんは、きっと、自分の作った、動画とか……ですよね」
そうだろうなぁ……自分の作った切り抜きまとめとかやりそうだ。
「……しえるはどうしたい?」
「え?」
「俺がこうだからとか、タマがそうだからとか……そういうんじゃなくてさ、しえるが『お茶菓子』のみんなにしてあげたいことって?」
……俺はしえるじゃないから、答えを教えることはできない。
そもそも、自分の配信すら成功するかドキドキしてるのに、偉そうなことも言えないし。
……それでも。
「この1年、一緒にいてくれた人たちへの何か……きっと、あるだろ?」
「——はい!」
そう言って顔を上げたしえるは——迷いの晴れた顔をしていた。
◇
慌ただしい準備に追われつつも、いつもの朝活を忘れずに。
そうして、ついにデビュー1周年。
……その前日。
『……マホロくん、ほんとにそれでいいの?』
「はい、俺として——月見里マホロとして、みんなに感謝を伝えるなら……これが一番いいかなって」
『……そう、だね……うん、そうかも!』
俺は、最終確認としてゆら先輩に連絡を取っていた。
『順番は公表してないから自由が効くけど……』
「えぇ、そのおかげでこうして色々できるんですから、感謝ですよ」
『ふふっ……マホロくん『らしい』ね?』
「——」
『……マホロくん?』
「いえ、ちょっと……感慨深いなーって」
朝活を始める前……つまり俺が入院するほど自分を追い詰めていた時。
タマから言われた『マホロらしさ』って言葉。
それは『朝活』という形で目に見えたように思えたけど。
……俺の中にも『マホロらしさ』は、ちゃんとあったんだな。
「それに気付けただけでも、この1年は意味があったんだなって」
『……うん』
「だからこそ——俺らしいやり方で、みんなに感謝を伝えようと思います」
『うん……明日もいつも通り、ね!』
「はい!」
……そうして、通話を切ろうとしたところで。
『ところでマホロくん?』
「はい?」
『敬語』
「……あっ」
1周年の前日だというのに。
……いつも通りの空気で、当日を迎えるのだった。




