プロローグ
初作品です。
VTuberモノが好きなので自分でも書いてみたくなって、書きました。
月見里マホロの成長物語をどうか、お楽しみください。
※完結まで予約投稿済みなのでエタることはないと思います、安心してください※
※リスナーや掲示板のノリが合わないなと思った時はすぐに読むのをやめてください※
◇
半年前にリストラされて絶望していた俺が、座敷わらしVTuberとして配信している。
【夜雑談】もうすぐ半年ってマジ?【AP/月見里マホロ】
チャンネル登録者数:1.2万人
「おはこんマホロ~! アナザーパンデミック2期生、福を呼ぶかもしれないし、祟るかもしれない座敷わらし系VTuber『月見里マホロ』なのじゃ!」
・おはこんマホロ!
・こんマホロ~!
・マホロちゃん待ってた!
・まだ頑張ってのじゃロリ設定続けてるん?
・シッ! 頑張ってるんだからいいことだろ!
設定って言うな! 自分でもそろそろ無理があると思ってるんだから!
・マホロちゃん、今日は何するん?
・せめてタイトル見てから言えよ、書いてあるやろ!
・えー何々?『24時間耐久フィットネス・ファンタジー』?
・一文字も合ってなくて草
・ただの雑談配信だよな?
「フィットネス・ファンタジーって、センシティブでBANされそうになったって大炎上してたやつじゃん! やるわけねぇだろ!」
・マホロちゃん早速化けの皮が剥がれてるな!
・化けの皮っていうか美少女の皮っていうか……
・のじゃロリの皮が剥がれた。
・シッ! マホロちゃんの性別に触れるのはマナー違反だぞ!
・そんなマナー存在しないけどな!
「うるさいのじゃ月民ども! わしがバレてないって思ってる限り、永遠にバレてないのじゃ!」
・それはそう
・それはそう
・……本当にそうか?
・こら、疑問を挟むんじゃない!
・なんだお前、月民素人か?
・仕方ない、我々ベテラン月民が鍛えてやらねばな
ちなみに月民とは、俺こと『月見里マホロ』を推している人たち、リスナーの愛称だ。
「月民同士で楽しそうにしてずるいのじゃ! わしも混ぜるのじゃ!」
・え、いやいいです……
・推しにやらせるようなことじゃないし……
・マホロちゃんまで混ざっちゃうと収集つかないじゃん
・ほら、早く進行して?
・結局雑談って何やるん?
「なんでだよ! 祟るぞ!? ……チラッ」
・あーあマホロちゃん拗ねちゃったw
・祟ってくれるの!?
・やったー!
・じゃあ新人くん、月民の心得教えたるわ
・はい! よろしくお願いします!
「違うだろォ!? 俺の心配しろよォ!」
・うるさw
・あれ、ミュートした?
・鼓膜ないなった
・もう夜中だよ? 急に大声出したら近所迷惑だよ?
・まったくもうマホロちゃんは……
「んガアアアァァ~~~~~!!!!」
・叫び声たすかる
・たすかる
・今日もマホ虐が捗りますねぇ!
・マホロちゃんの叫び声でしか得られない栄養がある
・ほんとそれな!
『月見里マホロ』の恒例のやり取りとなってしまっているので、止めることもできずズルズルと続いている。
最初の頃は叫びすぎて喉を潰したこともあったが、もはやこのやり取りも手慣れたものだ。
「ふぅ……そんなものはないのじゃ! いいからわしと雑談するのじゃ!」
・雑談と言われても……
・オレら所詮文字ですし……
・喋れないのに雑談しろなんて、マホロちゃん鬼畜すぎ!
・マホロちゃんのおにちく!
「っ~~~~~~!!!!」バンバンバンッ!
毎度のやり取りで慣れたとは言ったが、傷つかないとは言ってないんだぞ!
・声にならない悲鳴たすかる
・夜中だから抑えたんやな、えらい!
・声は抑えたのに台パン抑えられてなくて草
・時すでにおすし
・マホロちゃんってバ美肉なん?
バ美肉ですがなにか? まぁ自分からは言わんけど。
・おん?
・せやで
・そうだよ
・中身はゴリラだぞ
・急にどした、新人か?
「お前らが答えんな! ゴリラじゃねぇし! ばびにく? って何のことかわかんないのじゃ~?」
・いや、声ってどうしてんのかなーって……さすがにボイチェンだよね?
・あ……
・あーあ……お前、祟られるぞ
・え? なに? オレなんかやっちゃいました?
・急になろう系主人公感出すのやめろw
基本的にバ美肉する人というのは二種類いる……と思ってる。
『ガッツリ女性として振る舞う人』と『見た目だけ女性になりたい』人だ。
「俺、この事務所に誘われた時に『声可愛いね』って褒められて『その声は武器になるよ!』ってその気になってホイホイ付いて行っちゃったんだけど、どう考えても180cmオーバーの大男から出て良い声じゃねぇんだよコレ! 物心ついてからずっとコンプレックスなの! わかる!?」
・わ、わぁ……
・あーあ、マホロちゃんに声の話はNGだって……
・身体は男ってはっきり言ったな?
・言ったわ
・じゃあやっぱバ美肉じゃん!
「い、言ってないのじゃ! バ美肉じゃないのじゃ!」
・いや無理だろw
・マホロちゃんさぁ……w
・いい加減諦めな?
「諦めるって何をじゃ? わし、なんもわからんのじゃ!」
・大体、初回配信で速攻バレたのにまだ抗ってるの草
・それで事務所からお叱り受けたから頑張ってるんやろ?
・初回配信でバレた時、すぐにマネちゃんからの通話でめちゃくちゃ怒られてたもんな……
・いや、それゆらママからのお説教やぞw
・配信終わりとか完全に涙声だったしな
「うるさいうるさい、うるさ~~~~~い!!!!」
・耳がキーン
・また鼓膜ないなった
・うるさいのはお前だよ!
・急に叫ぶのやめてもろて……
・[獅童ゆら]マホロ? もう夜の11時だよ? 静かにしようね?
・ゆらママ!?
コメント欄に現れたその名前で、リスナーたちが盛り上がる。
・ゆらママだ!
・こんガオー!
・ゆらママもよう見とるw
『獅童ゆら』……俺をこの世界に誘った張本人で、憧れの先輩であり、恩人でもある。
「ひぅっ……ご、ごめんなさい……ち、違うんだよゆら先輩、こいつらが俺をいじるから!」
・あーあ、ゆらママに怒られて泣いちゃったw
・こういうとき、変に言い訳すると悪い方向に行くと思うんだけど……
・マホロちゃんさぁ……
「ハァ~!? な、泣いてないのじゃ!」
・必死で草
・言うてママも今フィットネス・ファンタジーやってね?
・なんやて獅童、ママのセンシティブ切り抜きまだですか?
・残念ですが、ゆらママは汗ひとつかいていません……
・なんだまだ始めたばっかりなのか
え? ゲームしながら俺の配信チェックしてるってこと?
しかもただのゲームじゃなくて、激しく身体を動かすタイプで?
・かれこれ12時間です
・化け物やんけ!
・は? フィットネスしながらコメントしてんの?
・いやいや休憩中にコメントしてるんやろ?……え? マジで運動しながら?
・さすがAPが誇る体力お化けだ……
・獅子獣人っていう設定が活かされてるな!
獅子獣人ってすごいな!?
「ゆら先輩今フィットネスしてんの? なのに俺怒られたの!? なんで!? そっちのがドスドスうるさいじゃん絶対!?」
・そりゃ怒られるよ、うるさかったもん
・めっちゃうるさかったよ
・ねぇいつまでミュートしてんの?
・オレの鼓膜返して?
「は、ハァ~!? う、うるさくねぇし! 文句あんのか!? アァ!?」
・ガラ悪っw
・コメントに圧をかけようとしてるぞ!
・でも正直見た目と声のせいで可愛いとしか思えない
・わかる
・ちっちゃい子が頑張って大人ぶろうとしてる感じ
そう……さっきも言ったが、俺の身体は普通に成人男性の平均よりも高めだし、それなりにガタイもいい。
なんなら子どもとかに初対面で泣かれる確率のほうが高いくらいにはガッツリ大男なのだ。
なのになんの嫌がらせか、声がかなりロリ寄りなせいで、アバターもそれに合わせて作られてしまった。
『月見里マホロ』……その姿は、圧倒的なつるぺた和服幼女……つまり座敷わらしである。
・切り抜き職人の耳が心配だわ
・職人逃げろー! いや逃げるな切り抜けー!
・職人さんも大変だなぁ……
・いつもありがとうございます!
「……お主ら、本当にわしのこと推してるのじゃ?」
・正真正銘の月民だぞ!
・月民がマホロちゃんを推してないわけないだろ!
・月民がマホロちゃん以外推してるわけないだろ!
・すまん、オレ月民でもあるけどゆら人でもある
・オレ、月民だけど野良猫だよ!
・私も月民だけどお茶菓子だよ?
「それは別に悪いことじゃないだろ! なんで悪いことみたいに言うんだよ! 推しがいっぱいいるっていいことだろ!」
・マホロちゃん……きゅん
・感動した
・いいこと言うじゃん
・こうやって何気ない時にふと心を掴んでくるのがマホロちゃんなんだよなぁ……
「や、やめろよ急に褒めるの……もういいのじゃ! 今日の配信はここで終わりなのじゃ!」
・は?
・配信のほとんどがプロレスだったんだが?
・まぁ雑談ってそんなもんだし……
・いつもに比べればマシじゃね?
・初見だったんですけど面白い人ですね! チャンネル登録しました!
「お、登録ありがとなのじゃ! それじゃ……チャンネル登録と高評価よろしくなのじゃ! 座敷わらしに出会えたんだから、明日はきっといいことあるのじゃ! おつマホロ~!」
・マジで終わるの?
・おつマホロ~!
・良いことなかったら祟ってね
・良いことなくても祟って欲しい
・それだ!
「祟らんわ!」
配信が終了したことをしっかりと確認した俺は、ゆら先輩に謝罪のメッセージを送った。
本当に、どうしてこうなったのか……半年前のことを思い出していた――。




