(5)
「ぐふふふ……しかし、ここで会ったが百年目だ……。オラの@#$さ返して欲しいが、それは無理なんで……お前は、オラの奴隷の固有能力で酷い目に遭ってもらうだ」
「あの……御主神様……」
スナガが連れて来た……転生者らしい男は……とまどったような声……。
「さあ……早く、お前の無敵の固有能力さ使うだ……」
「あの……ですから、御主神様」
「何だ、さっさとやるだ。オラの占いが正しければ……お前には、無敵の精神操作系の固有能力が有る筈……」
「え……えっと……その固有能力って、どうすれば発動するんですか?」
シ〜ン……。
間抜けな沈黙が続いたのは……数秒か……それとも数十分か……。
ともかく……。
「はははははは……」
声の主は……雌豚……。
その方を見ると……。
腹は更に膨らんでいた。
顔は……まさに……文字通り……「何かに取り憑かれた」ような表情。
「そいつの前世は詐欺師だ」
「ち……違う……俺は、正義の暴走をしてた公金チュ〜チュ〜団体を……」
えっ? 公金チュ〜チュ〜団体?
おい、まさか……この人……?
「そして、そいつの固有能力は……『自分を凄い奴だと他人に思い込ませる』だ。こいつと戦っても、自分は確実に負ける。相手にそう思い込ませる能力だよ。たしかに無敵の能力だ。戦う前に勝負は付いてる……戦わずして百戦百勝出来るんだからな」
雌豚は……いや……雌豚に取り憑いた「何か」は、そう説明していた。
「けど、こいつを転生させた直後にちょっとしたアクシデントが起きてな……。こいつは、固有能力の発動に必要な、あるモノを失なった」
「な……何だ、それ? 俺は……何を……」
「『自信』だよ。自分は、もの凄い天才だという強固な妄想。それを失なった。今のこいつは……魂の奥底まで卑屈な奴隷と化した。『自分を凄い奴だと他人に思い込ませる』能力を発動出来る訳が無い。だって……もう一生こいつは、自分が凄い奴だなんて事を自分で信じる事が出来なくなったんだからな」
「う……うるさい……。お前が、そう説明したのが運の尽きだ。そう判った以上……えい‼ えい‼ えい‼ えい‼ 発動しろ‼」
「え……えっと……何も起きてない」
僕は、そう説明した。
「あ〜……あたしらは別の世界の『大地母神』の加護を受けてんで……多分、この世界の『大地母神』から授かった能力なら相殺出来るんで効かない」
「だから、私達には効かない以上、発動してるかどうか判んない」
「そんな馬鹿なッ‼ えいッ‼ やあッ‼ とおッ‼ 闇よりも、なお昏きもの‼ 夜よりも、なお深きもの‼ 臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前‼ オン・アビラウンケン・ソワカ‼ アーメン‼ インシャ・アッラー‼ 大池と太気の精霊よッ‼ シャザムっ‼」
何も起きない……。
「無駄だ。理性では判っていても……お前の魂の奥底の『奴隷根性』が、能力の発動の邪魔をする。この世界で経験した事のせいで……お前の奴隷としての本能が目覚め……お前自身を一生支配する事になるんだよ」
「南無妙法蓮華経‼ 南無阿弥陀仏‼ 南無第六天魔王‼ この経文を魔道に回向す‼ 願わくば我をして日本第一の大魔縁に変え、皇をもって民となし、民をもって皇となしたまえッ‼ 文鮮明お父様と韓鶴子お母様に永遠の忠誠を誓いますぅ‼ ハイル・ヒ○ヒ○○ー‼」
「馬鹿は、放っておいて……こっちは、こっちで話を進めるか……おい、あんたが、この世界の『大地母神』か?」
「そう言うお前らは……」
「ああ、あんたの姉妹……平行世界版のあんた……『鬼神達の荒振る母』に愛された種族の代表だ」
「ふん……この世界に何をしに来た?」
「いや、そもそも、あんたが私達の世界の主流人類の中から、先天的に強い奴隷根性を持った男どもを、この世界に異世界転生させて自分の道具にしていたのに気付いたのが、全ての始まりだ」
「その目的を探りに来たのか? なら、話は簡単だ。お前らだって、平行世界版の私に愛された種族なら……神々ってヤツが……特に私が……どんなロクデナシが知ってるだろ……自分で言うのも何だがな……」
「やっぱりそうか……私達の世界で……私達が……『女夜叉』『羅刹女』『竜女』などと呼ばれたデニソワ人の派生種族がやられたのと同じ事か」
「ま……多分、お前らが思ってる通りの事を……この世界のオークの『巫女の部族』にやっただけだよ……お前らの世界の日本とか云う国の言葉で言えば『推し活』だよ。ちょっと歪んでるかも知れないけどね」