(2)
……あまりの話に理解が追い付かない……。
おいおい、あの自称「聖女」、とんだ雌豚だと思ってたら、本当に「豚人間」だったのかよ?
でも、信じていい事なのか、これ……。
いや、待て……本当だとしても……。
「その話が本当だとして、僕に何の関係が有るの?」
「だから『何故、ここに来た』と訊いたんだ」
「何が?」
「ここは、この世界の『大地母神』の『気』が集中する場所の1つ。私達が元々居た世界の中国の風水で言う『龍穴』だ。それも特大級のな。そして、この世界で、ネアンデルタール人の一部が『オーク』に変った場所でもある」
「だから、それが何だってんだよ?」
「何故、『オークの聖女』に『自分の全てを捧げる』と『誓言』したお前が、『オークの聖女』に力を与えていた『大地母神』の聖地に来てしまったんだ?」
そ……そりゃあ……。
「偶然……何となく……えっと……その……」
「マヌケかお前は?」
「はぁ?」
「その酷い表情を見た限りじゃ……もう生きる希望も目的も何も無しに、ただ、惰性で死んでないだけ……そんな感じだろ」
……。
…………。
……………………。
「ああ、そうだよ。悪いか? それがどうした?」
「じゃあ、冗談抜きで、お前にとって最悪のお報せだ。付いて来い」
サイコ女は、そう言って、僕に背を向けて歩き出す。
何が「悪いお報せ」だよ?
今の僕以上に悪い状態が有るもんか。
そんな事を考えながら……サイコ女の後を追い……そして……。
「おい……そいつまで来やがったのか?」
「ああ……」
そこに居たのは……もう1人の転移者の女。
いつの間にか……洞窟は明らかに人の手が加わったものになっていた。
そして……。
「この部屋の中を見てみろ」
「だから何が……えっ?」
そ……そんな……待て……いや……僕は……こんな……雌豚……。
その雌豚は……虚ろな表情になっていた。
そして……その腹は……。
「お前がやった『誓言』は『聖女の為に自分の人生の全てを捧げる』だったな……『この女』という特定の個人ではなくて……」
「な……な……な……なんだよ、これ?」
「多分だが……その女の腹の中に居るのが……新しい聖女だ。そして、この女は……まるで何かに操られるように、自分でも訳が判らないまま、気付いた時には、ここに来てしまった。……真の力を持つオークの聖女が誕生するオーク達の聖地にな」
おい……待てよ。
僕は……「聖女」の為に人生の全てを捧げると誓ってしまい……その誓いは僕自身を呪縛っている。
そして……新しい「聖女」が……この雌豚の腹の中に……待て、待て……待て……。
ああああ……糞、この雌豚、あの時、殺しておくべきだったッ‼
そうか……あの時が最後のチャンスだったかも知れなかったのかッ⁉
本当にそうかは判らないけど……「聖女を殺せない」という僕が僕自身にかけてしまった呪いの……ほんの一瞬だけの例外だったかも知れない……うわああああ……畜生ッ‼
「お前にとって最悪のお報せだ。お前の物語は、まだ終っていない」
「みな……大地母神様のおぼしめしのままに……操られていたのです……。勇者様も……私も……この子の父親も……」
雌豚の口から出たのは……何の感情もこもっていない声だった。




