第30話 ド根性幽霊、危機一髪!
「ぼ、亡霊だあぁぁぁぁぁっ!」
ラダーがビックリ仰天して、脚立に戻って、あげくに泣き出したのを見てオナベさんとタマキちゃんが更にビックリ!
「うわーん! 怖いよぉぉぉぉぉぉっ!」
と、言われたことにショックを受けたタマキちゃんが泣きだしたというGDGDな超展開に、俺もトイチさんもかえって冷静になれたという。まぁヌコも違う意味で泣いていたが。
「タマちゃん、ほんとにたまちゃんにゃ!会いたかったのにゃ!」
「くすん。ヌコちゃん。やっと会えたね。ずっと謝りたかったの。おじいちゃんが意地悪ばかりして、ごめんなさい」
「そんなこと、いいのにゃ! うちとタマちゃんは友達にゃ!」
ひっしと抱き合う友二人。という場面には残念ながら一人が霊体である為ならなかった。触ると流石にダメージがお互いに行くらしい。
「それにしても、霊体になっているとはいえ、彼女とここで会えること、オナベさん! 知ってて隠してたでしょう?」
「さてな。こういういい場面に巡り合えるから人生は楽しいんだぜよ!」
「ほんと、油断ならんでゴザルなぁ。しかし、良かった」ほろり。
そして、その間にラダーを落ち着かせる俺。
「たまちゃん。死んでも元気そうでにゃによりにゃ」
「ヌコちゃんのおかげよ。心臓が止まって苦しくて、痛くて、死ぬのが怖くて。それでも昔、ヌコちゃんが人生、我慢してたら何とかなるって教えてくれたから。何とか頑張って我慢してたら、体の外に出てお話もできるようになったの」
つまり、我慢してたら霊体になって自由を得られたと? 何となく日本に居た時に見たニュースを思い出した。一時期流行ってたよなぁ。ド根性○○ってやつ。ド根性竹の子とか。ド根性一本松とか。
「まあ、最初にタマキを見た時は流石のわっちもビックリしたがなぁ」
「オナベさんは、死んだ後の私と仲良くしてくれた唯一の人だったから。オナベさんが居なかったら私、寂しくて成仏してたかも」
「なぁに、きちんと自我を保てたお前さんの精神力の賜物だよ。わっちが最近の村長たちのやってることについて余計なことを言っちまった所為かもしれねぇがな」
「それについても感謝しています。おじいさまがそんなに追いつめられていたなんて……そういえば、そちらの方々はどちらさま?」
「うちのはずばんどと、護衛のみなさんにゃ!」
「ええええええっ! ヌコちゃん結婚したのー!?」
「どーもー。最近商人として独立したケンジ=クリスです。ヌコとは王都で知り合って、スピード結婚したばかりです」
「俺様はラダー。そこのヌコに名前を頂いた。男の中の男だ!」
「拙者はイチジク=トイチ。忍者でゴザル」
「え? え? かわいい女の子よねぇ?」
そして、スルーされるトイチさん。
「ちっがーう! 体は幼女。心は漢! 鋼の肉体と魂を持つアイアンマンヘビーメタル王者! ラダー様とは、俺様のことだぜイェイ!」
「? ? ?」
完全に混乱してるよなぁ。最初に彼女を見て怖いって泣いてたくせに。どこらへんに漢要素があるのか小一時間とっちめたい。
「ほーら、ラダーちゃんは、あめちゃんあげるから少しこっちで大人しくしてようねー」
「わーい。オナベさんありがとう!」
と、墓地の外まで連れてかれるラダー。ちょろいな。
「それにしても、ヌコちゃん。その恰好は?」
忍装束に突っ込んだ! この子も大概勇者だなぁ。
「ふふん。王都で、それも王城で手に入れた最新モードにゃ! お貴族様も羨むチョー逸品にゃ!」
! いやいや! 違う意味で羨まれてたけど、凄い防御力だし。あんなもっさい服良く着るよなぁ。
「やっぱり! その赤いマフラーが素敵よねぇー!」
「赤いマフラーは正義の印にゃ!」
どんなセンス!? 大丈夫か? この二人。
「その正義の印を見込んでお願いがあるの。ヌコちゃん!」
「「うぉっと!」」
今までの儚げな感じから一転して前のめりにタマキちゃんがぐいっと近づいた。だから触れるとダメージが来るんだよ~
「おじいさまがやろうとしている戦争を止めさせたいの。今のおじいさまは国境の向こうからやってきたお客人に誑かされて、私の敵討ちをしなければいられない気持ちになっているだけ。どのみち、ヌコちゃんの歳までは生きていられなかったと思うのに、本当なら誰も居ないはずの仇を探して罪の無い人を傷つけるようなことを、正義の闘いだなんて、言い訳しながらやろうとしているのを見るのは辛いわ。どうか、お願いします。私とおじいさまがお話をする機会を作ってくれませんか?」
俺とヌコはお互い顔を見合わせて頷く。勿論、決意は固まっていたので彼女の依頼自体には何も問題は無い。
「実はうちらがここに来たのはその戦争を止めさせるためにゃ! 村長が諦めてくれるんなら一番手っ取り早いのにゃ! この依頼、ぜひ受けさせてくれにゃ!」
「勿論、村長が止めたからといって、裏で糸を引いていた人物が居るなら、即事案終了にはならないだろうけど、そっちも俺達に任せてくれれば悪いようにはしないよ」
「拙者も及ばずながら力を貸すでゴザルよ」
と、そこで口の中にあめちゃん入れたラダーの手を引いて戻ってきたオナベさんが、何やら得心したような顔で聞いてきた。
「村に入ってきた時から思っちゃいたけど、おまいさんたち、誰かの差し金でここにきたのか?」
「さすがオナベさん! にゃにを隠そううち達は、魔王様の特命を帯びて派遣された『特命捜査官』にゃ!」
「いや、違うだろ! 別にそんな大層な肩書無いから!」
「は~、あのヌコがねぇ。どうやら頼りにしてもいいらしいねぇ! それなら、いくつかわっちからも情報をあげられると思うよ。聞いてくれるかい?」
俺達が頷くと、オナベさんは、核心部分を話してくれた。
「隣国から来た助っ人の先生方は、マリー=ハート、そして、カオルーン=ハート、と名乗っている。彼女らは、国境の向こうに一個連隊を率いて村長の挙兵に連動して戦力をこっち側へ送り込むことになっている。んで、この村に二人が逗留している理由は、新型兵器の燃料を確保するためらしい」
「「新型兵器?」」
「どういったものかまでは詳しくわからねぇが、何しろ凄いものらしいぜ。田舎の農家が国相手に戦争おっぱじめる気になる位にはな」
どんな物騒なものが出てくるのやら。まあ、こっちにも剣呑な超兵器があるけどな。当人見てると不安になるけど。
「ん? あめちゃんならやらないぞ!」
「でだ、その燃料ってのが、この村に大量に埋まってる【魔水】らしい。ヌコ達は知っての通り、この村の水脈から出てくるのは中央の井戸以外はほとんどが魔水だ。魔水はそのまま飲んだりしたら腹壊すから、蒸留してから飲むよなぁ。だが、その蒸留した時に上澄みの光を放っている部分を取り除き、白金製のサイフォンで再濾過するとその光が更に強力に発光して、出て来た水は燃えるようになるらしい。で、この燃える魔水を燃料にして新兵器を稼働するらしいな」
「えーと、じゃあ、遠くの村から見えてたっていう青白い光って……」
「魔水を濾過して燃料を精製していた光だろうな。大体一日で50ℓ程度しか出来ないらしいが、どうやらt単位で必要としているらしいからな。既に三週間程続けているが、そろそろむこうの兵隊が出来た燃料を運び出し始めている」
「つまり、そろそろ準備完了ってことですか?」
その問いに黙って首を縦に振るオナベさんであった。
「一度、二度はその精製を邪魔すれば時間くらいは稼げるだろうが、仮にその間に魔王軍を連れて来れたとしても、国境の外にいる部隊とガチの戦争になるのがオチだ。一番いいのは、時間を稼いでいるうちに奴らが頼りにしている新兵器をぶっ壊すことだと思う。補給線を断っても、この村なり近場なりで略奪すれば当面は維持できちまう程度の兵力しかない。逆に新兵器が戦力の頼りになる程度の兵力には違いないんで、それさえなければ実際事を起しても戦線を維持できないからな」
いや、只の商人にしては、やっぱ知識が半端ない。
「オナベさんこそ、一体何者なんですか? 一介の商人の知識レベルじゃないですよ」
「それを理解して話についてきてる婿さんも大概だがな」
かんら、かんら、と笑いながらそれでも俺を見る目は笑っていない。
「そんな婿さんを見込んで教えておくが、彼奴らの虎の子の新兵器はこんな外観をしてるんだ」
と、木の枝で地面にかきかきと絵を描きだした。
まず、上に恐竜だか亀だかの合いの子みたいな生き物を描き始めて、それが終わると、その下に四角い台座のようなものを描き始めた。最後にキャタピラのようなものを台座にくっつけて、恐竜? に火を吐かせたところで完成したらしい。
「まあ、こんな感じなんだが、心当たりは無い……だろうなぁ?」
と、オナベさんには言われたのだが、ウルトラシリーズをDVDで全話制覇した俺には、思い当たるものが一つあった。
「……恐竜……戦車!?」




