閑 話 「弥堕羅忍軍地獄組」
こうして、俺達は国を出た。
二頭の馬に引かれた馬車は、とことこと道を進んでいく。俺とヌコは馬車の中でぬくぬくとした旅のスタートで快適であった。流石は魔王様の用意した馬車。御者もいないのに、完全オートメーションで進んでくれるとは、非常に良くできている。ん?
「おい、この馬車、誰が動かしてるんだ?」
「にゃ? そんなの勿論ケンジが? どうしてここにいるのにゃ?」
「俺でも、ヌコでもないとすれば、もしかしてラダー?」
「呼んだか~? どろん!」
「あれ? お前、どこに居たんだ? ってか、ずいぶん久しぶりな気がするなぁ」
「えーと、恥ずかしながら例の魔王とやらの覇気に当てられてお前のアイテムボックスの中でがくぶるしていた俺様だが、首都を段々遠ざかっていくごとに調子を取戻し完全復活を果たしたのだ。ついさっき」
「それは重畳。これで三人揃って旅がすすめられ……って、解決してねぇ! 今、今現在この馬車を動かしているのは誰だぁぁぁぁぁぁっ!」
「どうかしたのでゴザルか?」
その時、御者席からぬぼっ、と顔を出した幸と影の薄そうな大女が、怪訝な顔で俺達に向け話しかけてきた。
「「「誰だぁぁぁぁぁぁっ!」」」
「忘れてしまったでゴザルかぁぁぁぁぁぁっ!」
はいーっ? そう問われて記憶を探ってみる。
「拙者、昨日、魔王様から紹介されてご一緒することになったすかうとでゴザルよ。ほらぁ~、これこれ」
弥堕羅忍軍地獄組 九十一
そう書いた名刺を出してきた。
「えーと、み……だ……ら 忍軍地獄組 きゅうじゅういち?」
「完全に記憶から落ちてるでゴザルな? 九と書いていちじく、じゅういちじゃなくてといちでゴザル。い・ち・じ・く・と・い・ち! 弥堕羅忍軍地獄組の忍者でゴザル。昨日魔王様との会談の時に紹介されて御一緒することになったので御座ろう!」
「しらんにゃ?」
「覚えがないなぁ」
「くっ! 仕方ない。かくなるうえは、脱いで身の証を立てるまでっ!」
「こらこらこらこら! 何でいきなり脱ぎだす!」
「止めてくれるな! 拙者、脱いでもろ肌脱がなければ、人から認識してもらえぬ程影が薄いのでゴザルよぉぉぉぉぉぉっ!」
「「「こんなにキャラが濃いのに!?」」」
「これは、もう我が弥堕羅忍軍地獄組の背負うた原罪でゴザルよ。我が弥堕羅忍法は、下着ドロに端を発する究極の忍法。故に誰からも認識されず。忍ぶどころか、泡と消え! を合言葉に古今東西の非モテの最期の聖域としてひたすら己と技を磨いてきた、現代のニンジャでゴザル」
いや、そこで女の人がふんす! と胸を張る意味がわからん。わからんが、とにかく凄いお乳だ。
「いや、どっちかというと、あんたが狙われる方じゃないのか?」
「にゃ! にゃんとぉぉぉぉぉぉっ! そんなかわゆいおなごを連二人もつれてまだ、拙者の貞操まで狙うのでゴザルか? おーかーあーさーん!」
「にゃ! にゃんとー! じゃにゃいにゃ! うちの真似すんにゃー!」
「かわゆいゆーなー! 俺様漢の中の漢だぞー!」
いや、流石に今の恰好じゃ無理があるから。せめてぱんつくらい履こうな。裸ワイシャツは目の得だ。
「かくなるうえは、やっぱり脱ぐしか」
「やめーい! 見てる方が寒い!」
「ってか前、前みるにゃー!」
あわや、シシャモチャンが左に、キンノホシが右に分岐を曲がって行こうとしている!?
「どーっどうどう!」
ひひひーん、といななく二頭を何とか宥めて停車させる。
「「「ほーっ!」」」
どうやら助かったようだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その後、一旦止まって戦略会議を開催した。具体的には、トイチさんの処遇について。
「とにかくうちはムカつくにゃ! 無理矢理キャラを被せるような真似をしてくる人とは御一緒できにゃいのにゃ! お帰りはあちらにゃ!」
と、ヌコがご立腹なのである。
「がーん! 拙者そのようなつもりはさらさら無いでゴザルよ! これは、忍者としての性分でゴザル。
どうしても、個性が埋没するように行動してしまうのでゴザル!」
「それで、どうしてうちの真似になるにゃ!」
「それは、ヌコ殿が個性あふれる存在であるからでゴザル!」
「許す!」
ちょろいな。いいのか? それで。
「そして、ケンジ殿は、あの魔王陛下が一目置くキャラ。拙者、この中で生活することで個性を身に付けようと志願したのでゴザルよ。ってか、昨日初対面時にも話したでゴザルよね?」
「知らん」
「忘れてた」
「記憶にございませんにゃ」
そういえば、そんな話を誰かとしていたような? 定かではないな?
何らかの記憶に作用する呪いかなんか掛かってるんじゃ? 俺が武器を持てないのと同じように。
「ともかく、既に旅立ってしまったのでゴザルから、拙者だけハブるのはちょー勘弁でゴザル」
いや、言い回しなんかは特に記憶に残らない程薄いわけじゃないよなぁ。
「ああ、わかった。悪かったよ。一緒に頑張ろう」
「すまなかったにゃ。ケンジとの旅を邪魔されたくなくて意地悪言ってしまったニャ」
「俺様はどっちでもいいけどな」
「う、受け入れてくれるのでゴザルか? かたじけない。拙者、身命を賭して任務遂行に尽力することを誓うでゴザル」
と、いう訳で新たな仲間が加わった。というか、加わっていた。後のち彼女の脅威のポテンシャルと脅威のバストによって俺達はいろいろ助けられることとなるのだが、その話は次章に譲ることとしよう。
とりあえずこの場では、イチジクトイチさんが仲間に加わったことを御報告することとする。
この作品は、内容に危険な要素が多数含まれます。
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