第十八話 「地獄の門番(ゲートキーパー)」
「うひひ! 威勢のいい奴が来たものよなぁ!」
そう言いながらも筋肉達磨は、嬉しそうに禿げた頭頂部をタオルで拭きながら、
「拙者の名はゴール=ドゥヴァー。これからお主の初心者講習を行う者。だが、拙者、他にも生徒を抱える身でのう。他の生徒は、一足先にダンジョンに潜っている。まあ、あと五分程で残りの生徒共が戻ってくる。それまでは、準備運動でもして待ってろ」
と、言われて、準備運動をすることにした。
「あで?」
「ん?」
「あでれべればらでずべればれべれあでれべばばばすびずばでればら」
「ちょ、ちょっと待てぇぇぇぇっ! 何だ? それは?」
「え? なにって普通に準備運動ですけど?」
「そ、そんな、まさか、魔王様が冒険者ギルドに初めて来た時と同じことをするなんて! まさか、本当に次代の魔王候補なんじゃ……」
うえー! 魔王様とおんなじ事をするなんて、しかも、それでどうしたらそうなるんだ!?
いずれにしても、多大な誤解を与えたようで心苦しいなぁ。
「いえ、あのですね、俺は別に魔王様とは本来関わりの無い小市民で……」
「第一パーティー只今帰還いたしましたサー!」
と、後ろから来た人たちの大声で俺のセリフがかき消されてしまった。
見やると、俺と大差ない年頃の男女計4名が息も切れ切れに、それでも一列に綺麗に整列していた。
「おう、来たな! 貴様らに、新入りを紹介する。魔王陛下の肝いりで今日から十日間の労役に就くことになった、えーと、自己紹介しろや!」
「サー、イエッサー! 本日よりお世話になります、ケンジ=クリスであります」
「よし、端から挨拶しろや!」
「サー! アルバ=アナード♂であります」
「サー! ジェイド=ルギーム♂であります」
「サー! ミミ=ファナック♀であります」
「サー! ヌコ=シールズ♀であります」
「よし! それぞれの戦果を報告せよ!」
「サー! ノミモドキ12 ゴブモドキ20 ホブゴブリン1」
「サー! ノミモドキ10 ゴブモドキ8 ホブゴブリン2 コカトリス1」
「サー! ノミモドキ42 ゴブモドキ16 トロルモドキ11」
「サー! ノミモドキ2 ゴブモドキ1 ホブゴブリン1」
「うん? 俺の聞き間違いか? ヌコ! 報告を続けろ!」
「サー! 以上であります!」
その小さな女の子は、俯きながら、震えながらも、はっきりと聞き取れる声で答えていた。
他の3人は、申し訳なさそうな顔をしていたが、直接的にはなにも言わなかったので、
「サー! 意見具申、彼女はアシストに徹したのではないでしょうか? 他の方々の戦果の華々しさに比べ、余りにも違いすぎながら、他の方々の反応が申し訳なさそうにしておりますので。もしや、彼女自身の適性もアシスト寄りなのではないでしょうか?」
「ふむ、そうなのか?」
「「「サー! 新入りの言う通りであります」」」
みんなが認めてくれた。なるほど、いい人たちだな。
「ならば、特に問題ない。ご苦労。では、明日のブリーフィング兼、新人研修を行う。お前たちも、復習のつもりでしっかりと参加するように」
最初のイメージと違って話の判る立派な御仁だな。このゴール教導官は。
「さて、たった今問題ないとは言ったが、個人戦での火力の不足は、こういったダンジョンに潜る時、孤立した場合に即、死を意味する場合もある。ダンジョンの中では何が起こるか判らない。だからこそ個人の力量が不足した人間を送り込む事を厳に戒めている。ヌコ! 貴様は新入りと一緒に後で模擬戦をしてもらうからな!」
「サー! イエッサー!」
「さて、まずは、ダンジョンの説明を行う。敵を知り、己を知れば百戦して危うからず。では、アルバ!
ダンジョンの概念を説明せよ!」
「サー! ダンジョンとは、人工、天然に関わらず迷宮状になった人の侵入できるモンスターの出現ポイントであります。ダンジョンを放置した場合、ダンジョンを根城にしたモンスターによる人的被害が多数出る事を危険視し、我々冒険者は誕生しました。換言すれば、ダンジョンは我々全ての冒険者の敵です」
「宜しい。では、ダンジョンの種類について簡潔に説明せよ! ジェイド!」
「サー! まずは、通常【迷宮】と呼称するべヒモスの蛹。古代の人間が造った【遺跡】、天然の要衝である【洞窟】、ドラゴンの住処たる【巣】、などがあります」
「よし! それでは、当グリモール城地下にあるダンジョンについて説明せよ! ミミ!」
「サー! 通常、大都市は過去にあった【遺跡】の上に建造されることが多くあります。その理由は、そういった遺跡が竜脈の上に建造されることが多く、水、魔力、鉱脈など、人の生活に不可欠のインフラを整備しやすいことが最大の理由であります。グリモール城もその例に漏れず過去にあった遺跡内部には、未発掘の金銀鉱脈、飲料水の確保に使う地下水脈、そして、エネルギーを供給するための巨大な魔力溜まりがあります。しかして、それらの近辺には、モンスターなど、人間の生活を脅かす障害が発生しており、定期的にこれらを駆逐する必要から、我ら冒険者は都市の地下迷宮に潜る必要があります」
「宜しい。では引き継いでヌコ! グリモール城のダンジョンの概要を説明せよ」
「サー! グリモール城のダンジョンは、3区画、地下15層からニャる天然【洞窟】と【遺跡】のハイブリットダンジョンでありニャしゅ。各区画はそれぞれ、地下水脈のある大地底湖区画、膨大な魔力溜まりのある古代遺跡区画、更に最遠方にある鉱山区画に分かれておりニャす。特に、現在モンスターの出現にニャやまされている古代遺跡区画には現在我々が作戦を行っているD区画がありニャしゅ」
「うーん。段々噛み噛みになってきたが、まあ、良かろう。大体の概要はそんな感じだ。どうだ! 新入り! 理解できたか?」
「サー! 概要は理解いたしました」
「よし、それでは、ダンジョン内での立ち回りに関する注意点を説明する」
と、いう訳で約一時間程の講習を受けることとなった。流石というか、短い時間ではあったが、充実した内容で少なくとも、いきなりダンジョンの中に入っていきなり死ぬことはないであろうと確信できる良い講習であった。
「さて、それでは、最後に模擬戦を行う。ケンジとヌコ! 前へ。二人に防御魔法をかける。互いに近接で戦い魔法を削り切った方が勝ちだ」
この世界に来て、初の戦闘だ。さて、どうなるか? それにしても、相手のヌコという子、本当に小さい。俺よりも15センチは小さいんじゃないか? 良く見ると黒髪の中に猫耳が付いている。獣人というやつかな? そんな事を考えていたら体が光り始めた。
「準備完了、では、はじめぇぃ!」
模擬戦のはじまりだ。
この作品は、内容に危険な要素が多数含まれます。
精神的疾患をお持ちの方、心身喪失状態の方、心の弱い方、特に、いじめの経験をお持ちの方にはおすすめいたしません。
この作品は、皆様の愛情と狂気の提供で、活動のエネルギーとさせて頂いております。
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