第九話 「そりゃないぜブラザー!」
「は?」
相当間抜けなニュアンスで返事をしてしまったらしい。(笑)神に笑われてしまった。
「いや、そんなに驚かれると僕としても、提案した甲斐があるというものさ。でも、聞いたことない? こういう話」
「いや、あるけども」
むしろ大好物の方だと思う。しかし、まさか自分がそういった境遇になるとは考えていなかったしなぁ。
「ぶっちゃけた話、さっきも言ったけれど、この話を蹴った場合、君は来世を微生物からやり直しになってしまう。一方、この話を受けてくれるなら、僕は君に来世でお得な数々の特典をつけることができるよ。この機会にどうだろうか?」
「新聞屋の勧誘みたいだな。あるいは、深夜の通販番組……」
「で、こちらが君のステータスになりまーす」
栗栖 賢治 (13歳)
系 統:闘争心系
クラス:トリックスター LV.1
H P:31
M P:20
膂 力:12
技 能:74
瞬発力:123
知 力:54
生命力:128
魔 力:33
特記事項 戦闘目的武器の装備不可
戦闘目的のスキル取得不可
戦闘目的の魔法使用不可
「これって、チートいのか? 戦闘目的の何々不可って嫌な単語が並んでんだが」
「まあ、ステータスは十人並ってとこかなぁ。例えばゴブリンと闘う時は」
「無敵か?」
「一撃死と尻穴に注意だね♡」
「だめじゃんかぁぁぁぁっ!」
「うん、このままだとダメダメなんだよねぇ。だから、これに神様特典として、補正をかけるのさ」
「じゃ、あの不吉な言葉を無かったことに」
「ああ、それは無理!」
「へ?」
「あれらは、君の本質に由来する文言だからね。無理やり消去しようものなら、君自身が廃人になりかねない。そも、ナイフ投げとかのスキルを持っていても、君は人を傷つけるつもりなんて全く無いだろ?」
「それは、まあ」
「同じことさ。変に戦闘技術に特化しても、君の優しさがそれを使わせない。心でブレーキを踏み続けることになるのさ。それが度を越せばブレーキが熱を持ってフェード現象を起こすだけ。何にもなりゃしないよ。悪いけど、そこは諦めてもらうしかない」
「つまり、異世界に行って俺が出来ることは、闘うこと以外ということになるのか?」
「いやいや、君、人生の最期で清水某に一発入れてたじゃないか!」
「え? あ! そういえば」
「大抵の俺TUEEEEの人たちが、変な意味でステータスに縛られて自分の出来ることを狭めているけど、実際君たちは人間なんだよ。ステータスだけに縛られて数字の上昇に一喜一憂してみたり、パラメータが気に食わないからって神様相手に暴力事件起こしたり、そんなことする必要ないんだけどね」
「……」
「だから、たとえステータスが向かないからって、魔法で闘う方法が無いわけじゃないし、戦闘ができないわけでも無い。不利はあるかもだけど、それを補える程度の遊びは残してあるはずなんだよ。かつて、僕の友達が言った台詞だけど、〝神様なんて、人間の上位互換ってだけだ〟ってね。その位人間のポテンシャルって高いんだよ。元々」
「ああ、なんとなくわかるよ、それ」
親父が言ってたっけ。「奇跡ってものは、神様なんかに頼らなくても、人間の力だけで起こせるものだ」 って。むしろ、神様にお願いして奇跡を起こしてもらう方が手順が面倒くさいとか、なんとか。
「へぇ、なかなか洒落たセリフを吐くお父上だねぇ。とても、レイプ魔とは思えない程」
「どーして、お前は一々俺の傷口を狙ってくるわけ!?」
実は嫌われてるんじゃなかろうか? こうして気にかけてくるのも、罠なんじゃないの?
「大丈夫。僕としては、君よりも清水某を痛めつけてぶっ殺したいから」
ニヤリ!
「怖い怖い怖い!」
「ただ、こないだ七人程ねじ切ってぶっ殺してきたばかりだから、ちょっと自重しないとね♡」
「怖い怖い怖い!」
なんか、やっぱり危険な生き物だったんじゃないかしら? 今更かもしれないけど。
「さてと、そろそろ真面目に君のステータスに下駄を履かせようかね」
「つくづく実感するけど、言い回しの古さが神であることの証明って(笑)」
まあ、気を取り直していってみよー。
「ぜったい、君にだけは言われたくない!」
「では、先ずはそれぞれのパラメータについておさらいしてみようか」
栗栖 賢治 (13歳)
系 統:闘争心系
クラス:トリックスター LV.1
H P:31 (60)
M P:20 (30)
膂 力:12 (60)
技 能:74 (60)
瞬発力:123 (60)
知 力:54 (60)
生命力:128 (60)
魔 力:33 (60)
特記事項 戦闘目的武器の装備不可
戦闘目的のスキル取得不可
戦闘目的の魔法使用不可
「HPやMPについては、説明も不要かな? 年齢を考えればこんなものだろうけど、やや少なめとなっています。カッコ内は、こちらの世界から行った人の平均値だね。で、だね、このサイコロを振ってみてくれないかな?」
「でかっ!」
取り出されたのは、「ごきげんよう」で使われてそうなサイズのサイコロだった。初めて目の当りにすると、やっぱでかい。ただ、各目のところに書いてある文字が、不穏当だった。
「当たり目ってのは、まあいいとしようか。しかし、他の目に書いてあるコレはなんだ!?」
・今までに食べたご当地ラーメンの数
・今までに当てた過去最大の馬券的中倍率
・過去運転したことのある自動車の最大馬力
・今までにディスられた相手のアカウント数
・今までに振られた異性の数(延べ人数)
・当たり目
「ああ、ボーナスポイント獲得サイコロ。大体平均値が2桁から100位になるような告白をサイコロの目に従ってしてもらうのさ。君、引きが弱いねぇ。未成年が出ても意味のないのが多いなぁ」
まあ、普通の人生送ってたらそうだよなぁ。
「ちなみに当たり目って?」
「別に1D振ってもらって出た目x100だね。正にボーナスだよ!」
ふんす! と威張る姿は、なんか見た目年齢相当にかわいいじゃないか。普段から、この程度にしとけばいいのに。
「なんか、余計なお世話だけど、まぁ、一度決定したマス目は変更が効かないからね。このマス目で大丈夫かい?」
「ああ、OK。問題ない。多分ラーメン以外は全部当たりだ」
「え? それってどういう……」
言い終わる前に投げた。ぽーん!
「ああああっ! もっと慎重に!」
ころころころころころころ、転がった先にて出た目は、ジャン!
「・今までに当てた過去最大の馬券的中倍率、かい。はずれだねぇ。一応確認するけど、ええと、え、?
ええええっ! 2000000倍ぃぃぃぃっ!」
「ふん! 俺の異常な人生、なめんなよ! 以前団員の人にこっそりWIN5を買ってもらったときに、2億円当ててんだぜぇ!」
まあ、その団員は、当選金全部持ち逃げして団から脱走したがな。その時は、誰にも相談できなくて泣き寝入りだったが、今、こうしてその経験が生きたとなれば、結果オーライだな。
「え、え、えーと、ちなみに、他の目が出た時はどうなってるんだろう? あ、出た!」
・今までに食べたご当地ラーメンの数 120
・今までに当てた過去最大の馬券的中倍率 2000000
・過去運転したことのある自動車の最大馬力 100800
・今までにディスられた相手のアカウント数 1380254
・今までに振られた異性の数(延べ人数) 100365
・当たり目 100x1D
「なんだよ、そりゃ! ずるいよ! チート野郎!」
「はっはっは、一度決定したら取り消せないんだよなぁ。じゃあ、このまま進めようか」
「仕方ない。しかし、なんだよ? 十万馬力の車って?」
「仕事でアメリカに行った時、むこうのドラッグレーサーに乗ったんだ。ジェットエンジン二基装備で、400mを3秒程で走り抜けるやつ。死ぬかと思ったよ」
「ディスられた数は?」
「これは知らないなぁ。死んだ後の話じゃないのか?」
「振られた異性の数は?」
「一時、出し物の中で会場の女性全員に、おねがいします! ってやってたんだ。で、全員から ごめんなさい! って言われると下で爆発が起きて自爆するってネタがあったんだ。その時の女性の動員数がカウントされてたんだろうな」
「ず、ずるいっ!」
「普通の子供なら全部ゼロでもおかしくない話だろ? 相手が悪かったと思ってあきらめろ」
「ちぃーくしょーーーーっ!」
神様(笑)の怨嗟がこだました。