What is your favorite color?
「好きな色は何ですか?」
生きていれば、必ず聞かれる好きな色
その答えは、プレゼントに反映される時もあれば、はたまた衣服に反映される時もある
現代の今では、人は生まれつき自身の色を持っている
多少の違いはあれども、括りで言えば八色
赤、青、黄、緑、桃、紫、白、黒の八つ
不思議なことに、自身の色は性格を表している
赤は熱意に満ちる人になり、青は物事を冷静に対処できる人になり、黄は明るく笑顔を振りまく人になる。
緑は安心感を与える人になり、桃は周りに愛される愛嬌溢れる人になり、紫はミステリアスな雰囲気をまとう人になる
特異なのは白と黒
白は何をしても最後まで信じられる人になり、黒は何をしても最後まで信じられない人になる
白は他の色よりも人生を華やかに彩り、黒はどうあがいても人生を謳歌することができない
人類の95%は黒と白除く色達だ
残りの5%の内訳は黒が4.5%、白が0.5%
希少な白だ
どんな色でもみな口を揃えて言う
「白は信じられる」
俺は白だ
高校生で、ちょっと前に生徒会長になった
俺の他に立候補した赤や桃がいたが、一票も他へ行かずに、全ての票が白である俺に入った
生徒会メンバーを生徒会長となった俺が決めたのだが、それがおかしかった
反感が全くなかったのだ
メンバーに黒を入れたのにも関わらず、だ
これも、白だから大丈夫といった理由で反感がなかったのだろうか
他のメンバーには、赤はもちろん、青、緑を入れた
この決定にも反感はなかった
「白さん、何故私を生徒会に?しかも、副会長という重大な役割まで持たせてしまって…」
生徒会室で黒とふたりきりの時だった
黒は俺の机に書類を置きながらそう聞いてきた
相変わらず、心の底から安心できない
この質問の裏の意図を無意識的に考えてしまう
「何故って?うーん、そうだなぁ…」
本当のことはあまり言いたくない
言ったところで良い意味として解釈してくれると思うが、そう言う意味ではない話だ
「黒が副会長なんて前代未聞じゃない?」
「…そう、ですね
黒は誰にも信じられずに朽ちる色ですから」
話の区切りがついたところで、俺は書類の内容に目を通していく
内容としては、文化祭の運営方針などに関してだ
まだ月単位で離れているが、今から始めても上手くいくか不安な時期である
次の書類に目を移すと、次は予算についてだった
部活一つ一つにどれだけの予算を与えれば良いのか、その場合どれだけ金がかかるのか
頭が痛くなるような話がたくさん綴られてある
とにかく、それ一つ一つ確認し、今独断で決められそうなことを先に決め、独断で決められないものは会議などで議題に上げるために、横に置いておく
「そういえば、もう文化祭の内容を決める時期ですか」
俺の作業を後ろから見ていたらしい
「持ってきたのに内容見てなかったの?」
言うと、一瞬息が詰まったような声がした
「すみません、私は見てはいけないかと」
「へー、そう」
わざとではない
黒と相対していると口から自然と出てくるのだ
黒に発した言葉を認識して、内容を理解するまではそれが嫌味だと気付きにくい
しかも、気付いた後でも罪悪感が湧かない
それにしても、文化祭…か
「黒はE組だよね」
「はい、そうです」
「文化祭の出し物って何やるの?」
「だ、出し物、ですか…?」
もうクラスの議題には上がっているはず
文化祭というのは一種のお祭りだからだ
しかし、黒は言葉を躊躇った
何か危ない出し物なのだろうか
大丈夫だからと優しい目で促す
すると、黒は安心しきった表情を見せた
「私は出し物について除外されていまして…
具体的に何をするかは知らないんです」
「……あぁ、なるほど」
黒の言っている意味が理解できた
要は、黒は信用できない、頼りにならない、という観念のせいで、黒は出し物の話し合いの時に教室から出されていたようだ
「白さんのクラスはどうなんですか…?」
「俺のクラスは至ってシンプルだよ
男子はメイドに、女子は執事になるカフェ」
「その案、すごく反感買いそうですけど…
よく通りましたね」
…俺が提案してみたのだ
お化け屋敷や展示会は拒否されていたのに、これは通った
もちろん、反感は一つも受けず
みんな大賛成で喜んだ
あの時、密かに恐怖が湧き上がったのが、表情に出ていなかっただろうか
時間というのは、あっという間に過ぎるものだ
生徒会の会議も順調に進み、文化祭の日も近付いてきた
俺の一声があればクラスの士気は上がりに上がり、ギリギリかと思われた内装は10日も余白を持つことになった
接待係は桃や緑、紫達に任せ、赤や青は厨房で頑張ってもらうことになった
文化祭当日までの間、俺はまだ一度も否定を受けることはなかった
文化祭当日となった
男子はメイド服となり、女子は執事服となっている
クラスは俺の言葉がなくとも士気は上がっている
それでも俺はクラスのまとめ役として、一言言わなければならない
俺は黒板の前に立って、宣言する
「俺らがかけてきた時間、全てがここに詰まっている。一位がどうとかじゃない、全力で楽しもう!」
おー!と熱意のこもった声がクラスを揺らす
「じゃあみんな、楽しも〜う!」
クラスの一言が終わり、俺は他のクラスの出し物を見ていた
俺の担当する時間は午後からだ
まだまだ時間に余裕がある
定番のお化け屋敷、展示会、カフェがやはり多い
文化祭が終わった後、俺は文化祭についてのレポートを書かないといけないので、こういうこともしっかり見ないといけない
「し〜ろ!お前、ぼっちかよ?」
後ろから肩に手を置かれる
見なくても、声だけでわかる
「俺はレポートのために一人でいるんだよ
ぼっちは自分でなったの!」
だから、邪魔しないでくれよと言外に伝えようとする
「へ〜?生徒会長さんも大変だねぇ!」
ダメだった
黄はちょっと馬鹿なところがあるから、直接言わないとわからないのだろう
とにかく、この馬鹿を引き離さなければ
調査が停滞してしまう
何か、離れさせる理由を…
目の前の人混みに、見覚えのある黒髪が見えた
「あ、副会長!俺と一緒にやった方が早いよ!」
黄の手を払いのけ、半分無理矢理黄の下から離れた
そして、早足で人混みの中に突っ込む
今の声は黒に聞こえたはず
待ってくれててもおかしくない
「やっぱり、今の声は白さんですか」
人混みの中に、唯一ぽっかりと穴が空いているところがあった
そこの中心地に彼女はいた
「一緒に調査した方が早いからやらない?」
「…私と一緒に行動するということですか?」
「そう言ってるんだけど」
「っ、わかりました」
黒と会うことができた
俺は各クラスの人にリポートし、黒は手元のメモに各クラスの出し物の名前を書く
最初は黒がリポートしようとしたが、しょうもないことしか話してくれなかったらしい、内容が薄すぎた
なので、俺が代わりにリポートすることにした
すると、内容が格段に濃くなった
努力したところ、チームの団結力等々、詳しく話してくれた
俺が黒にごめんと謝ると、黒はにこやかに笑って「白さんのおかげでいいレポートが書けそうですね!」と言った
そういう意味でごめんと謝った訳ではなかったのに
レポートの内容としては、これで十分だろう
俺は黒に終わろうと声をかけた
すると、黒はでは、と言って俺から離れようとする
それに俺は待った、と言って腕を引く
「まだ何かありましたっけ」
違う、違うんだよ
「もうすぐお昼だし、何か一緒に食べない?」
本当はそうじゃない
「…!良いんですか!それならせっかくなので白さんのA組に行きましょ!」
次は逆に黒に手を引かれる
ここからA組までそこまで離れていない
数分後には「男女逆転メイド執事カフェ」と書かれた看板が見つかった
引き込み員はこちらを見ると、すぐに教室内に入ってしまった
俺よりも、黒の方を見てだろう
「ここが…」
カフェは結構繁盛している
接客していない人は一人もいないほど、接客員は大忙しだ
ここからは見えないが、料理の回転率を考えるならば厨房も大忙しだろう
「あ、しろ〜!…じゃなくて…
いらっしゃいませ、主人様
今回はどれを召し上がりますか?」
一人の執事が忙しさの合間を縫って近寄ってきた
手際良くメニュー表を出す
それは前の方にいた黒ではなく、後ろにいる俺に宛てて出されているので、俺が受け取っておく
「…へー、たくさんメニューありますね…
あ!オムライスとかありますよ!」
オムライスを見つけた瞬間テンションが上がっている
オムライス好きなのだろうか
「……………主人様?」
俺がメニュー表を見て何も言わないからだろう
桃が催促してきた
俺はメニューも味も全て知っている
絶対に食べたいというものはない
考え込んだが、すぐに名案を閃く
「じゃあ、オムライス二つで」
桃は驚愕したように目を大きく見開く
きっと、黒と同じものを頼んだからだろう
「わ、わかりました。ではお席にご案内します」
カフェに入り、二人席に案内される
メニュー内容をもう一度確認され、頷く
桃は厨房へと駆けて行った
それとすれ違いに、紫が水を運んでくる
何も言わずに置いていくが、紫は美形が多い
美形ならなんでも許せる、と俺は思う
紫が無言で去っていった数秒後、黒は視線を彷徨わせていた
黒の視線を見ていることがバレたのか、黒は話しだす
「入るの、初めてなんです…」
通りで俯き気味だと思った
「昨年の文化祭はどうしたの?昼飯とかさ」
「昨年は入ろうとしたら追い出されたので、昼ご飯は何も食べませんでしたね
今年もそのつもりでした」
なるほど…と心の中で頷く
店に入られたら何をされるかわからない、と思ったのだろう
唐突に頭の中で疑問に思っていたことが浮かび上がる
浮かび上がったときには、既に口に出していた
「黒ってさ。白のことどう思ってる?」
個人的な話ではない、色としての話だ
「は、え…?」
色のことだと想像がついていないのか、黒は顔を真っ赤に染める
「えっと、あの…頼りになって、何があっても信頼できる存在です」
やはり、黒もそうなのか
他の色も同じことを言っていた
「…そっか」
「答えはわかるんですけど、私のことはどう思ってます?」
反対に質問された
どう、思ってるんだろう…俺は
黒のことは信用しているといえば嘘になる
が、全て信用していない訳ではない
仕事面においては、絶大な信頼をおいていると言っていい
だが、それ以外では信用している部分は少ない気がする
「………」
「あ…ごめんなさい、白さんは言いたくないですよね…」
違う
「黒の悪口なんて白さんに似合いません」
違う
「今の話、なんでもないです
忘れて下さい」
違う…
「肯定しないでくれ!!」
机をバンッと平手で叩く
急に激昂した俺に黒はびくっと体を震わす
それに構わず、俺はカフェから飛び出す
「どうした」という声が走りながら聞こえてくるが、もう嫌だ
何故肯定しかしない?
俺は校舎裏まで走って来た
賑やかな校舎内とは違い、静かだ
物音は風の音と自身の鼓動の音のみ
誰にもここには来ないだろう
ほっとしたのか、膝から力が抜ける
「俺が、白だからか…」
肯定しかされず、否定されない人生
それは、非常に怖かった
一度でいいから否定して欲しかった
家族にも、友達にも、誰も否定してくれない
正しいことをしても、肯定
間違ったことをしてみても、肯定
それなら、どうすれば否定される?
「………なんだ、簡単なことじゃん」
俺は校舎内に入っていった
途中、俺に話しかけてくる奴らがいっぱいいた
だが、全て無視した
そして、俺のクラス「男女逆転メイド執事カフェ」に入る
「白さん!大丈夫ですか!?」
黒が席を立って駆けてきた
それを愚かだと嘲笑い、間違いを訂正する
「違う、俺は白じゃない」
「…え、どういうことですか」
どこからどう見ても、白さんだと主張する黒を見限る
「俺は、白じゃない」
「黒だ」
新聞記事
自色が白から黒へと変わった少年を発見
医者によると、このようなことは多くあるらしい
白は無色である分、黒色に染まりやすいという
そのような体験をした人達は皆こう言う
「否定されたかった」




