黒い星
黒い星を見た。
直感的にそう思った。
目が自然と見開いて、呼吸が浅くなる。鼓動が速くなる。
だけど裏腹に、それは綺麗だと思った。
今まで白く燦然と輝いていた星が黒く染まる過程を、僕は綺麗だと思った。
「許さない、許さない許さない許さない許さない!!!!」
彼女は僕の胸ぐらを掴んで揺さぶった。彼女の方が背は高いから、僕なんて余裕で持ち上げられる。彼女の悲痛めいた叫び声を聞きながら、脳まで揺さぶられる。
振動する脳がドーパミンをドバドバと生み出していく。
僕が彼女をこんな風にさせたのだ。
そう思えば思うほど胸がいっぱいになる。
「なんであの子を殺したの…!?答えろよ!!」
悲痛めいた声から憎悪に変わっていく。僕は満足だった。
「…なんで?なんでって…」
もっともな理由を用意し忘れてしまった。少し視線を彷徨わせながら、あー…と言ってみせる。が、彼女には火に油だったようで。
「理由もなく殺したの…!?」
「理由はあるけど、ね…でも言ったとして納得してくれないからなーって」
正直なことを言うと、彼女は再び僕を揺さぶってきた。
「教えろ」
その鋭い眼光に、僕の心臓がビクンッと跳ねた。これは間違いなく恋だ。口角が上がり、頬が紅潮し始める。
「人を絶望に陥れた時の、あの感情のグラデーション…あれが僕は好きでね。最初はもっと緩いやつだったんだけど…飽きてきちゃって」
そう言うと、彼女の腕は少しずつ力が抜けていった。僕の目を見つめて、眉が垂れていく。
そうそう、そういう顔。
「強い刺激を求めて、あの子を殺したってこと…?」
「せいかーい」
その瞬間、僕は投げ飛ばされた。ぐるっと世界が回転し、背中が地面に激突した。痛みに顔を顰める…とした途端、僕の目に彼女の姿が目に入った。
「アハッ」
綺麗だ、美しい。そう、これが見たかった。
彼女の顔は信じられないようなものを見た、そんな表情をしていた。僕のことを到底理解できないといったような顔。
憤怒から憎悪、そしてその顔。
「良い!良い!!」
もしスマホを持っていたら何枚も写真を撮ってしまうだろう。それだけ僕は興奮していた。
「ねぇ、もっと見せてよ。ねぇ、ねぇ、ねぇ」
痛みなんてどこかへ行った。僕は立ち上がって、僕の様子に呆然としている彼女の頬を撫でた。
「綺麗…」
うっとりとした目で見つめる僕に、彼女はその理解し難いものを見たような表情のまま、固まってしまった。




