宗教
失敗した。インターフォンを付けておくべきだった。
ドアを開いた瞬間、そう思った。
「貴方は神を信じますか?」
貼り付けたような笑顔が不気味だった。
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色々な紙を貰ったし、色々な言葉も貰った。
神を信じるとか信じないとか、心底どうでもいい。
俺はただ生きるのに必死で、疲れて動かない体も死に物狂いで動かして働いている。もういっそ、死んだ方がマシなんじゃないか、そう考えることも少なくはない。
だけど死ぬのが怖い。死のうと思っても行動する勇気が出ない。仮に勇気が出たとしても、きっと違うところに使った方がいい。
盲信者から貰った紙を机に放って、ベッドに寝転がった。天井を見つめながら、再び思考を巡らせる。
あの盲信者、声が明るかったな。そう思えばあの笑顔もホンモノに見える。何故俺の家に。信者を増やしたいからか。明日は仕事。早く寝ないと。部屋が暗い。寝るのには最適か。寝る前に風呂に入りたい。体が動かない。
俺の家に来たのは何故だ?
思考がある一点を中心に渦巻き始める。
信者を増やしたいからだろ。他には。次が俺の家だったから。他にもあるだろ。盲信者が元々狙ってたとか。違う、もっとスピリチュアルな。
…神が俺を選んだから?
そうかもしれない。
前提が定義されてしまえば後は流れだった。
長らく天井を見つめていたことに気付いたのは、信者さんが来てから1時間経った頃だった。




