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28. 二学年スタート

 ――祭りに行った数日後、新学期が始まった。


 エリーゼの予想通りにクラスは纏められ、一組から四組で成績順に分けられて掲示板に張り出された。

 当然、実力をあれだけ見せつけたアルとデールは同じクラス。程よく高成績を取り続けていたエリーゼも一緒だ。

 そして、ベンジャミンも同じクラスとなった。


「おれもさぁ〜。アルたち程じゃないけど、結構がんばったんだぜっ!」と自信満々に言っていただけある。

 エリーゼから見ても、ベンジャミンのレベルは十分に高かった。

 おかしいのはアルを含めた自分達なのだと、エリーゼはよく分かっている。


(私は……あの両親の血を引いた転生者だし。アルは王族で、デールは悪魔……)


 なんとなく申し訳ない気持ちになり、ベンジャミンから目を逸らすと他の生徒たちを見渡す。


 やはり、元々のクラスメイト同士で集まる傾向があるようだ。既にいくつかのグループが出来上がっている。

 アルは一匹狼気質というか、立場を考えれば当たり前かもしれないが、誰ともつるまないで来た。

 ただ、ベンジャミンもいるし、祭りをきっかけに自然とエリーゼ達と一緒に過ごすようになっていった。



(それにしても、相変わらず無口だわ……)


 気が付けば――何かにつけて、エリーゼの傍に居る。

 けれど必要最小限の会話しかしないし、ただ近くにいるだけ。たまに訳の分からない圧を感じる気がするが、ただの勘違いかもしれない。

 ガスパルの存在感に比べたら全然だ。

 

(ベンジャミンとデールが調子よく賑やかすから、気になりはしないけど)


 チラリとアルの手元に視線を落とぜば、手首に嵌めたブレスレットが袖口からのぞく。よくは見えないが、ピッタリのサイズに直してもらえたみたいだ。

 

(……本当に大切な物なのね)


 無意識なのか、アルはよくそれに触れている。

 その仕草を見なければ、ブレスレットを嵌めているとは気付かなかっただろう。


 そんな、なにげない日常と――

 より実践に近付く訓練は、厳しくなって行った。

 

 

 ◇◇◇◇◇



 二年の授業にも慣れた頃、担任に呼び止められらた。


「おーい、そこの三人〜!」


 その場にいたのは、寮へ戻ろうとしていたエリーゼとデールとアル。ベンジャミンは、訓練場に忘れ物を取りに行っている。


 座学担当の細身の担任は、小走りでやって来た。

 肩で息しているのをみると、どうやら教室に居なかったので、探し回っていたようだ。


「良かった……。すぐに校長室へ行ってくれないか?」


 はぁはぁと、膝に手をつき前屈みになっている担任の前で、三人は顔を見合わせた。

 それぞれなら……呼び出されても、お互い事情があるので何となく理解はできるが。 


 担任の息が整うのを見計らって、エリーゼは質問する。


「今からですか?」

「そうだ、急いでほしい」

「ベンジャミンは訓練場の方ですけど?」

「用事があるのは、君達だけだから問題ない」

「校長先生が……用事ですか?」

 

 エリーゼだけではなく、アルも怪訝そうな表情をした。


(このメンバーで呼び出しって、何かしら?)


 身に覚えがあるのは、勝手に魔物退治してしまったことだが、今さら気付かれる筈はない。

 そもそも……その件なら、以前アルだけが呼び出されている。特に噂も流れなかったし、問題も無さそうだった。


「悪いが、用件は直接聞いてくれ。私は何も聞いていないから」


 それだけ言うと、担任は急かすだけ急かして、さっさとと職員室へ戻ってしまった。


「いったい何だろう?」

 

 早歩きで校長室へ向かいながら、エリーゼは首を傾げた。


「……さあ」と、後ろを歩くアルは口数が更に減っている。


「まあ、行けばわかるだろ」


 デールは、いつも通りなんてことなさそうだ。手を頭の後ろに組み、軽い足取りでエリーゼの横を歩く。

 そんなデールを、アルは黙って見詰めていた。



 ◇◇◇◇◇

 


 軽くノックをすると、返事があり扉を開ける。


「「「失礼します!」」」


「やあ、良く来たね」


 そう返事したのは、校長の椅子にデンッと座っているユリウスだった。

 校長といえば、相変わらずユリウスの傍に執事のように姿勢良く立っている。


「用事というのは、……ユリウス先生ですか?」


 ユリウスをどう呼ぶべきか悩んだが、じーっとにこやかにエリーゼを見るユリウスの視線が、そう呼んでほしそうだった。

 満足そうに頷くのを見ると、正解だったようだ。


 一瞬、「な……!?」とアルの小さな呟きが聞こえた気がするが、とりあえずスルーする。


(そりゃ、王弟のミドルネームに先生呼びって……あり得ないわよね。言い訳はあとで考えなきゃ……)

 

「今日、君たちを呼んだのは相談があってね」


 ユリウスは形の良い口元に弧を描く。


「……相談ですか?」


「そうだ。この学校では三年生になると、魔物討伐のための実践練習があるのを知っているね? あくまでも、森の入り口付近に生息する弱い魔物でだが」


「はい、知っています。学校や、近隣の居住区に魔物が行かないようにするためもある……そう習いました」


 頷いたユリウスは、三人を順に眺める。


「ここのところ、どういう訳か魔物の発生率が上がっている。それも、異常なまでにだ」


(あっ! だから……)


 エリーゼは、居るはずのない場所に現れた狼の魔物を思い出す。


「そこで、本来なら飛び級してもおかしくない生徒。それなのに、何故か――」


 あまりにも整い過ぎた美しい笑顔に、モノクルの先の笑っていない瞳。ユリウスは話し続ける。


「二年生になっても、申請してこない。……そんな、三名にも参加してもらおうと思ったのだが。どうだろう?」

 

 これは、相談じゃない――三人は直感的に理解した。



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