ざわめく感情
「あ、あのさぁ……盗み聞きするつもりは無かったんだけど………聞こえてきちゃってさ。
なんだか聞いてるこっちが恥ずかしくなっちゃったよ」
奥の部屋からひょっこり出てきたレオ。
まさか聞こえていたとは……。
「ちなみにどのあたりからだ?」
「最初から所々聞こえてたけど、私が憧れた〜ってあたりからかな」
「本当に恥ずかしいとこ、聞かれちまったな……」
俺はそう言って誤魔化すように頭をかいた。
「そ、それじゃあ長居してても危険だし、そろそろ帰るよ」
「そうだね、また今度。
……君も、ね?」
「……はい!」
部屋を出て廊下を歩き、階段の前に着くと壁にある小さなランプの色を見て、外に人がいないことを確認した。
「何見てるの?」
「ランプの色が緑の時は近くに人がいない印。赤だと人がいるってことだ。
なんか外の壁かどこかに魔力のセンサーかなんかで感知できるとか。
俺も詳しくは分からねぇけど」
「な、なるほど。そうなんだ」
ボタンを押し、階段を上る。
気づかれないように元に戻し、帰路につく。
「ねぇ、レオさんとは何話してたの?
仕事のこと、なんでしょ?なら私にも聞く権利あるよね」
「あぁ……まぁ、そうだな。
この島のどこかに『幻獣』が封印された物があるらしい。
そいつが恐らく隠されているものの正体だな」
「幻獣って、確か島を護ったりしてくれる存在……だよね?」
「全部が全部じゃねぇけどな」
ほっと胸を撫で下ろしていると、それを察知したかのようにノエルが鋭い質問をしてきた。
「……まだ、何か隠してない?」
「──っ、別に隠してねーよ。
大体なんでそう思ったんだ?」
心の中では安心していたものの、それを表には出してないはずだ。
なのにどうしてこいつは………!
「なんとなく。態度に出してなくても分かるものってあるんだよ?」
「お前心の中でも覗けんのかってぐらいに察しがいいよな。
ほんとそういうとこ気に入らねぇ」
「な、何よ!
でも、今ので隠してることがあるって認めたようなものじゃない」
勝ち誇ったような笑みを浮かべ、チラッとこっちを見る。
「……この国のことだよ。
方針が変わるかも……とか、そういう難しい話だ」
「……嘘はついて無いみたいだし、そういうことなら」
もちろん嘘はついていない。
ただ、内容を詳しく言っていないだけ。
その内容が後に俺たちに関係すると理解していても、口にしたくはなかった。
理由は自分でも分からない。
たった1週間こいつと一緒に居ただけなのに、前までの自分とは少し違っているような感じがして……。
今は仕事中だ。考えるのは後にしようと気持ちを切り替え、小屋の扉を開けた。
* * *
夕方になり、ノエルは帰る時間になった。
「じゃあまた明日な」
「……やっぱり私もついていっちゃダメ?」
「ダメだ。夜は危険だし、第一親にバレるだろ?」
俺の予想では、学校に幻獣が封印されている物の手がかりがあるんじゃないかと睨んでいる。
だから夜、俺1人で忍び込もうと考えていたのだが……やはりノエルがついて行きたいと言い始めた。
「むー………。私、こっそり抜け出すくらい余裕だよ。
それに学校のことなら実際に通ってる私が居た方が、ぜぇ〜ったい力になれると思うんだけど」
「う……確かにそうだが………」
「アオトは強いんでしょ?もし、何かあっても私を守ってくれればいいじゃない」
「戦ってる所見た事ないくせに、やけに俺のこと信用してるんだな」
「見なくても人柄、とかそういうので信用できるっていうか」
「……ふーん」
「てことは、いいってことよね!」
「は!?まだ俺は何も──」
「村の入口にある噴水広場で待ち合わせね!
じゃあ」
「あ、お、おい!……って、行っちまった………」
ノエル相手だと、あいつのペースに飲まれてしまう。
確かにノエルの言う通り、俺が守ればいい。そこに関して問題はない。
拒む理由がもう一つある。それは、俺が恐れて──




