また、逃げちゃった……
下へ行くとリツがクレノ、モリン、エンゲに依頼の話をしていた。
俺は普段と変わらず、朝食を食べようとキッチンに向かった時。
リツが俺を指さした。
「あと、アオトも一緒にね」
「はぁ!?
俺関係ねぇだろ?
今のぜってー思いつきで俺を入れたな」
「いやぁ、ちょうどいいタイミングで現れたというか。
まぁこれにもちゃんと理由が」
「一体どんな理由だ?」
「えーと、なんて言えばいいのかな。
正直に言うと……なんとなく?
アオトがいた方がいいかなって」
「はぁ……そんな理由ならことわ───」
「いいじゃありませんの。
私賛成ですわ」
「モリン、ナイス」
「ナイス、じゃねぇよ。
大体クレノがいるんなら大丈夫じゃねぇの」
クレノはこの場にいるリツを覗いた面々では一番強い。
モリンだって俺より実力があるし、エンゲだって弱い訳じゃない。
俺が居る必要性が感じられなかった。
それを述べるも……。
「いいから。
アオトが居てくれると助かるよ。
だから、ね?」
「う……」
リツに本音でそう言われ、仕方なく承諾したのだった。
ホーリー島。
空高く浮く聖の島。
地面はどこも雪に覆われている。
ここは昔、『竜』が祀られていたという伝承があるという。
「で、俺達は“化け物の再来”が訪れたとされる、『二ビル』に行けばいいんだな」
クレノはこくりと頷き、口を開いた。
「場所はおおよそ検討ついてるよ。
早速行こっか」
雪道を歩いていく。
真上の空は藍色で下にいくにつれて水色へとグラデーションになっている。
息を吐くと白くなり、寒さが身に纏うようだった。
誰かが走る足音が聞こえて、角から現れた少女と先頭を歩いていたクレノがぶつかった。
少女は地面に尻もちをつき、いたたと呟いている。
赤く長い前髪にボブヘアの大人しそうな10代後半に見える小柄な少女。
「ご、ごめんね!
だいじょう……ぶ……」
「は、はい……大丈夫です」
クレノの手を握り立ち上がった少女はぺこりとお辞儀すると、その場を立ち去ろうとする。
「ま、待って……君、もしかしなくても『竜』だよね?」
「………っ、な、ななななんの、事?」
ぎこちない様子で振り返る少女。
確かに彼女は人間とは明らかに違う気配が感じられた。
これでも気配を消しているみたいだが。
「別に俺達は君をどうこうしようって訳じゃないんだ。
ただ、ちょっと気になって」
「………か、仮にそうだとして……なんであたしが竜って分かるんです?
………普通の亜人は気づかないはずなのに」
「まぁ、俺達は他の亜人達よりも強いから。
だから、気配とか分かるのかも」
「な、なるほど………あ」
自分が竜と認めてしまった、と口を押える少女。
「あああ、あの……私はこれで」
「貴方、ここにずっと住んでるのでしょう?
なら、案内していただきたい場所があるのですけれど」
モリンがそう声をかけると、困ったように視線を泳がせる。
「え、ええええと……ど、どこです、それって?」
「化け物の再来が訪れた『二ビル』って場所なんだけど」
「あー、そ、それならこの島の中央にあり、ます……けど」
「なら案内頼めるかしら?」
「う………どうしよう」
「何か用事があるのなら言ってくれて構わないよ」
「うぅ………」
迷った様子の少女と目が合ってしまった。
「…………綺麗」
「え?」
「あ、いやその……ごめんなさい。
…………案内だけ、なら」
「俺はクレノ。
こっちはモリン、エンゲ、アオト。
君は?」
「えと……ククと申します。
よ、よろしく、です」
「こちらこそよろしくね」
ククと名乗った少女の後に続き、道を歩く。
俺以外がククに話しかける中、俺はぼーっと景色を眺めながら歩いていた。
たまに、こちらを見てくるククに気づかないフリをしながら。
「ここ、です」
着いたのは街から少し北の方に行った、人気が無い山の上だった。
「ででででは、今度こそあたしはここで……」
「……君さ、このままでいいの?」
ククが立ち止まる。
「このままって……なんの事です?」
「初対面でこんな事を言うのは気が引けるんだけど……でも、どうしても放っておけなくて。
“今”は信仰されてないんだろ?」
「…………」
「余計なお世話だと分かってる。
けど、俺達なら力に───」
「お気遣いありがとう、ございます。
でも、結構ですので……では」
そう言うとククは足早に去って行った。




