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青き華よ希跡なれ  作者: 溶枸由 佳月
第三・五章,ベテルギウス
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また、逃げちゃった……

下へ行くとリツがクレノ、モリン、エンゲに依頼の話をしていた。

俺は普段と変わらず、朝食を食べようとキッチンに向かった時。

リツが俺を指さした。


「あと、アオトも一緒にね」


「はぁ!?

俺関係ねぇだろ?

今のぜってー思いつきで俺を入れたな」


「いやぁ、ちょうどいいタイミングで現れたというか。

まぁこれにもちゃんと理由が」


「一体どんな理由だ?」


「えーと、なんて言えばいいのかな。

正直に言うと……なんとなく?

アオトがいた方がいいかなって」


「はぁ……そんな理由ならことわ───」


「いいじゃありませんの。

私賛成ですわ」


「モリン、ナイス」


「ナイス、じゃねぇよ。

大体クレノがいるんなら大丈夫じゃねぇの」


クレノはこの場にいるリツを覗いた面々では一番強い。

モリンだって俺より実力があるし、エンゲだって弱い訳じゃない。

俺が居る必要性が感じられなかった。

それを述べるも……。


「いいから。

アオトが居てくれると助かるよ。

だから、ね?」


「う……」


リツに本音でそう言われ、仕方なく承諾したのだった。


ホーリー島。

空高く浮く聖の島。

地面はどこも雪に覆われている。

ここは昔、『竜』が祀られていたという伝承があるという。


「で、俺達は“化け物の再来”が訪れたとされる、『二ビル』に行けばいいんだな」


クレノはこくりと頷き、口を開いた。


「場所はおおよそ検討ついてるよ。

早速行こっか」


雪道を歩いていく。

真上の空は藍色で下にいくにつれて水色へとグラデーションになっている。

息を吐くと白くなり、寒さが身に纏うようだった。


誰かが走る足音が聞こえて、角から現れた少女と先頭を歩いていたクレノがぶつかった。

少女は地面に尻もちをつき、いたたと呟いている。

赤く長い前髪にボブヘアの大人しそうな10代後半に見える小柄な少女。


「ご、ごめんね!

だいじょう……ぶ……」


「は、はい……大丈夫です」


クレノの手を握り立ち上がった少女はぺこりとお辞儀すると、その場を立ち去ろうとする。


「ま、待って……君、もしかしなくても『竜』だよね?」


「………っ、な、ななななんの、事?」


ぎこちない様子で振り返る少女。

確かに彼女は人間とは明らかに違う気配が感じられた。

これでも気配を消しているみたいだが。


「別に俺達は君をどうこうしようって訳じゃないんだ。

ただ、ちょっと気になって」


「………か、仮にそうだとして……なんであたしが竜って分かるんです?

………普通の亜人は気づかないはずなのに」


「まぁ、俺達は他の亜人達よりも強いから。

だから、気配とか分かるのかも」


「な、なるほど………あ」


自分が竜と認めてしまった、と口を押える少女。


「あああ、あの……私はこれで」


「貴方、ここにずっと住んでるのでしょう?

なら、案内していただきたい場所があるのですけれど」


モリンがそう声をかけると、困ったように視線を泳がせる。


「え、ええええと……ど、どこです、それって?」


「化け物の再来が訪れた『二ビル』って場所なんだけど」


「あー、そ、それならこの島の中央にあり、ます……けど」


「なら案内頼めるかしら?」


「う………どうしよう」


「何か用事があるのなら言ってくれて構わないよ」


「うぅ………」


迷った様子の少女と目が合ってしまった。


「…………綺麗」


「え?」


「あ、いやその……ごめんなさい。

…………案内だけ、なら」


「俺はクレノ。

こっちはモリン、エンゲ、アオト。

君は?」


「えと……ククと申します。

よ、よろしく、です」


「こちらこそよろしくね」


ククと名乗った少女の後に続き、道を歩く。

俺以外がククに話しかける中、俺はぼーっと景色を眺めながら歩いていた。

たまに、こちらを見てくるククに気づかないフリをしながら。


「ここ、です」


着いたのは街から少し北の方に行った、人気が無い山の上だった。


「ででででは、今度こそあたしはここで……」


「……君さ、このままでいいの?」


ククが立ち止まる。


「このままって……なんの事です?」


「初対面でこんな事を言うのは気が引けるんだけど……でも、どうしても放っておけなくて。

“今”は信仰されてないんだろ?」


「…………」


「余計なお世話だと分かってる。

けど、俺達なら力に───」


「お気遣いありがとう、ございます。

でも、結構ですので……では」


そう言うとククは足早に去って行った。

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