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青き華よ希跡なれ  作者: 溶枸由 佳月
第三章,軌道
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予想外

無事寺の依頼を終え、次は中立組織(エイレネ)本部の雑務をする事に。

クロエとハンナと組む事になった。


「では、この書類片付けをお願いしたく」


「うん、任せて!」


ヴィカの言葉に元気よく返事するクロエ。

片付けを進めていく中、何か言いにくそうにこちらを見つめるヴィカの姿があった。


「どうしたんだ?

何かあったのか?」


「いや……その、あのですね。

この前捕まえた亜人側幹部のミナタって人の事覚えてます?」


「あぁ、今地下牢に居るんだったよな」


「はい。

そのミナタがアオトさんに話があると……」


「話……ね。

俺は何も話すことなんて無いんだが」


「嫌なら断ってきますけど……どうします?」


「……」


あいつは俺と同じあの場所に居たと言った。

それが本当なのか確かめる術は無いし、思い出したくも無いが………。


「……分かった、行ってくる。

悪いが依頼は2人で進めててくれ」


部屋を立ち去ろうとした俺にヴィカが声をかける。


「あ、あの、お気をつけて!

何かあったらすぐ呼んでくださいね」


「あぁ、ありがとな」


石で出来た階段を下り、コツコツと足音が響く。

やがて着いた薄暗い地下牢に、今はミナタしか居ない。


「……やぁ、来てくれたんだ。

てっきり断られると思ってたよ」


「………で、話ってなんなんだ?」


「おいおい冷たいな。

同じあの場所に居た被害者なんだ。

仲良くしようぜ。

今の俺はただの人殺しの亜人だ」


「その事だが、お前は本当にあの場所に居たのか?」


「何故それを疑う?」


「お前の言葉には信憑性が無いからだ。

適当な事言って、俺の事を殺そうとしたんじゃないかってな。

粗方調べてあるんだろ?

誰が何のトラウマを抱えているか。

お前はそうやって何人も何人も殺してきた。

だろ?」


「ふぅん、流石にどんな手口で殺すかってのはバレバレってな訳か」


「つまりお前の言った事は嘘だ。

俺を精神的に弱らせ殺す為のな」


「……バレちゃあしょうがない。

でもな、あそこで紅き姫が来る事なんて予想外だった。

ていうかあの展開自体予想外だって、ユネが言ってたっけ」


「ユネが?」


「そういえばお前とユネは昔馴染みなんだってな。

ユネは言ってたぜ。

亜人との戦いで命を落とすって。

けど、そうはならなかった。

すんなりと亜人の軍勢を倒しちまった。

それは、あの女が居たからだ。

完全にイレギュラーなんだよ」


こいつはさっきから何を言ってるんだ?

俺が亜人との戦いで死ぬ?

あの程度の戦いで死ぬ訳が無い。


「……俺があの戦場で死ぬはずだっただと?」


「この際だから話してやるよ。

本当はもっと強い奴や人数が多いはずだったんだが、不都合が起きてな。

人間側と争う事になって、軒並み強い奴は皆そっちに割かねぇといけなくなったんだよ。

ユネはあの女が原因だとか言ってたぜ。

無意識に危機を逸らす力みたいなのを持ってるってな」


ノエルが居たから結果的に俺が死なずに済んだ。

確かにノエルには不思議な力が宿ってるんじゃないかって、そんな気はしてた。

だからってそんな、『運命を変える』程の力なんて持ってるはずが……。


「お喋りはここまで。

どうだ、話してみて。

色々と有益な情報だったっしょ」


「何故それを俺に教えた?

メリットはなんだ?」


「メリットは面白いから、だよ。

正直飽き飽きしてたんだよな、繰り返しの毎日に。

あっさり捕まっちまったし、もういいやって」


「飽き飽きって、人を殺しといてよく言えるな」


「俺はお前を同類だと思ってたんだけどな。

話してて思ったわ。

俺とお前は違う」


「当たり前だろ。

誰がお前なんかと」


「そういう意味じゃねぇんだが。

まぁ、いいや。

あばよ。もう二度と会うことはねぇだろうさ」


地下牢を後にし、戻ると心配そうな顔をしてヴィカが駆け寄ってきた。


「大丈夫でしたか?」


「あぁ、そんなに大した事なかった」


「それは良かったです」


「次は何を手伝えばいいんでしょうか」


書類の片付けが終わったらしいハンナが声をかける。


「いい時間ですしお昼にでもしましょうか」


静かにパンとシチューを食べる。

その中でもクロエは美味しそうに食べていた。


「ん〜、美味しいね」


「実はこの食事僕が作ってるんですよ。

喜んでもらえてよかったです」


「えぇ!そうなの?

量とか大変じゃない?」


「慣れた事ですし、料理自体好きですので全然苦ではないですよ」


「良ければ夜ご飯の支度など手伝いましょうか?」


「いいんですか!?

では、午後の仕事の後に一緒に作りましょう」


午後早速ヴィカは地平線の会議に出るため、俺達は本部の掃除を任されていた。

ほうきで掃き、雑巾で窓と廊下を拭く。

東館を掃除していた俺は西館へ向かうために、会議室の前を通らなければいけない。

会議の内容はなるべく聞かない方がいいため、すぐさま通り過ぎようと角を曲がると会議室の前に座り込む1人の女性の姿があった。

黒い髪の下の方を金に染め、耳や口にピアス、全身黒の派手な服装をしている。

猫の獣の耳はあるものの、尻尾は無い。

気配で分かった。

この人は───


「───あ?何見てんだよ」


「……気分を害したならすまない」


「オレがそんなに珍しいか?

お前もオレと同じはみ出しものの仲間だろうに」


「俺が気になったのはそこで何してるかなんだけどな」


「はっ、別に俺の自由だろうが」


「会議の内容を盗み聞きしてるんじゃねぇのか?」


「……だったらなんだよ。

お前には関係ねーだろうが」


「俺は中立組織に所属してる者だ」


「……ちっ、部外者じゃねぇのかよ。

あのなぁ、一ついい事を教えてやるよ。

各組織にはなぁ、秘匿されたエージェントがいるんだよ。

じゃあな」


女性は立ち上がると、タバコを咥え去っていった。

西館に着いた俺はハンナと合流する。


「東館終わったぞ」


「お疲れ様です」


ほうきを直し、雑巾を洗う。


「……アオトさんって、ぶっちゃけノエルの事どう思ってるんですか?」


「………大切に想ってるよ」


「そう、ですか」


「なんだよ?」


「いえ、ただ気になっただけです。

別に貴方達の関係を反対しているのではないんです。

こうして一緒に仕事をして、話して本当に貴方がノエルの相手に相応しいのか自分の目で確かめたかったんです。

……まぁ、私が反対した所であの人は絶対聞かないだろうけど」


「2人とも何の話してたのー?」


北館から戻ったクロエが走りながら、聞いてきた。


「内緒です」


「えぇーずーるーい!

教えてよぉ〜」


その後ヴィカが会議から戻り、諸々の仕事を手伝って今日が終わった。

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