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青き華よ希跡なれ  作者: 溶枸由 佳月
第二章,星団
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星の島アストライア

数日前、島の北西。

展開された魔法陣の上に雛菊とノエルが乗ると眩く光り、途端にふわっとする感覚が全身を襲う。

景色が瞬く間に変化し、やがて暗い空に数えきれないぐらいの星が輝く空間へと移動した。


「ようこそ、星の島アストライアへ」


ここは宇宙という空間にある星の島アストライア。

特定の場所からしか行けず、しかもその存在はごく一部の人にしか知らされていない。


「アンドロメダ座のアルフェラッツと申します。

急に呼び出して申し訳ございません。

でも、どうしても今直接お教えしたい事がございまして」


アルフェラッツと名乗った、水色の髪を後ろで結びスリットドレスを着た女性がお辞儀をしながら言った。


「早速なのですが用件を。

───特訓をさせていただきたいのです」


「特訓?」


リツの、そして皆の疑問に答えるように頷くアルフェラッツ。


「特訓する場所まで歩きながら説明致します」


───俺達は約5年前に“別世界の存在”と契約している。

それは文字通り別世界、こことは違う理を持った完全なる違った世界に居る特殊な概念的存在。

その特別な存在とコンタクトを取る事ができた俺達は、ある代償を払って契約する事となった。


「私達は“星占い”を得意としていまして、ちょっとした予知能力のようなものなんですよ。

といっても、完璧なものではなくあやふやなものなんですけどね。

その占いでこの先大きな争いが起きる、と出まして。

貴方達、別世界の存在と契約してるんですよね?

簡単に言いますとその力の本質を引き出すお手伝いをしたいと」


───その本質とは、星の力。

皆様それぞれ対応する星の力を持っていらっしゃいます。

それを引き出す事が出来れば、先の争いに対抗できるのではと。


「星の力って、具体的には何なのよ?」


「エトリさん、でしたっけ。

あなたは四月生まれでしたね。星は木星。

木星は内側であり外側でもある。

要は物事をある程度客観視でき、また自分本位でもある」


むっと顔をしかめるエトリ。


「そ、そんなの誰にでも当てはまる事を言ってるだけでしょ」


「あれあれ〜、でもエトリちゃんって占いとか結構好きじゃなかったっけ───」


「ジュイ、黙ってて!」


「ふふ、説明するより感じてもらった方が早いですし。

私の指示に従ってくれます?」


「分かったよ」


リツが答え、アルフェラッツの指示に従う。


「───最後にリツさんっと。

はい、この並びを覚えてください」


俺を中心とし、囲むようともまばらともとれる並び方だった。


「一列に並んでもいいけど、この順番だけは守ってね。

じゃあ別世界の力を発動して」


全員がそれぞれの色の光に包まれ、衣装が変わる。

ちなみにノエルは俺達の並びからは離れて立っている。


「……普段より力が強くなってる」


メヅキの言う通り、普段よりも力が満ちているように感じる。


「これが共鳴してる状態ね。

次にノエルちゃん、幻獣と精霊と契約してるよね?

その力を解放して」


「わ、分かりました」


ノエルから精霊の気配がしているとは思っていたが、まさか本当に契約していただなんて。

赤い光に包まれ、ノエルの後ろに幻獣と精霊が現れる。


「リツ君達に話を戻すね。

キミ達で一番鍵になる存在は、中心に居るアオト君キミだ」


「お、俺が……なんで?」


「キミの星は太陽。

ただ真ん中で回転しているだけの、宇宙から見ればありふれた恒星に過ぎない。

けれどこの太陽系にとってキミは、太陽は、無くてはならない存在だ。

そしてこうともとれる。

キミの力で世界を回していると。

今はただ自分が回っているので精一杯だとしてもね」


「………」


言われた言葉の大半の意味は分からない。

けどとても大切な気がして、いつもなら無視するのにそうできない自分が居た。


「それを意識してみなさい。

目を瞑って、全員と繋がっている力を感じるの。

次に鍵になるのは海王星のリツ君。

アオト君とは正反対の一番外側。

全体の動きを把握し、自分で世界を回す事の出来る存在。

注意してほしいのは、振り回される事ね。

一歩間違えたら取り返しのつかない事になるから。

全員を客観視しながら自分の存在を大切に」


「自分の存在を……か」


目を瞑っていると白く輝く光を、感情が伝わってくる。

あまりにも強い決意が。


「メヅキちゃんは天王星ね。

たまに周りが見えなくなる事があるのが要注意。

そうね、今までの経験を糧にする事ね」


灰色に輝く光、それと共に苦い過去が通り過ぎていく。


「クレノ君は土星。

少し安定はしているけど、負の感情を考えないようにするべきね。

一度堕ちちゃうと大変だから」


真っ暗の視界の中でも更に黒く輝き、真っ直ぐ生きようとする意志を感じる。


「エトリちゃんはさっき言った通り木星ね。

自分と周り、どちらも優先させる……まぁ言ってしまえば我儘を貫き通しなさい。

そうした方が上手くいくから」


青く輝く光は自分らしく生きる事を伝えてくれる。


「モリンちゃんは火星。

思いが強すぎるあまり周りが見えなくなりやすい傾向があるから、そういう時は深呼吸。ね?」


赤く輝き、落ち着いた心を想起させる。


「コハル君は地球。

私達が暮らしている星そのもの。

だからこそ人らしい一面がたくさんある。

全てを受け入れてみて、時間がかかってもいいからね」


複数の色──小豆色、檸檬色、オリーブ色、黒色に輝いている。

少し自分と似ているような、違うような感情。


「ジュイちゃんは月ね。

コハル君と力の相性が良く、二つの顔を持っている。

思い当たる節はあると思うけれど、しっかり分けて考える事」


紫に輝く光から二つの正反対の感情が波のように押し寄せる。


「ヨミちゃんは金星。

内側寄りだから、結構周りが見えなくなる事が多い。

けれどちゃんとよく周りを見てみて。

貴方が気づいていないだけで、ちゃんとあるから」


緑色に輝き、怒ったような分からないような色んな感情が混じった想いが襲い来る。


「エンゲ君は水星。

真っ直ぐな思いを持っている。

けど、一つ間違った事を思っているからそれさえ無くせれば上手くいくはず」


橙色に輝いた光は、まるで火のような暖かくも熱い感情が近くに感じる。


「サクヤちゃんは冥王星。

ロイ君もだけど特殊な星なの。

だから並びもちょっと違っているのだけれど。

どうしても個として、そして二人(ツイン)っていう意識が強いけど、ちゃんと周りを意識して。

貴方の悪い所でもあるから」


淡い水色に輝いた光からは、納得がいってないような、認めてしまったような思いが溢れ伝わる。


「ロイ君はケレス。

サクヤちゃんと同じ事が当てはまるのと、だけど違うのよね。

貴方は貴方としてちゃんと存在してるから。

よく話すことを心がける事ね」


桃色に輝いた光。

静かでいて、熱が籠ったような矛盾した感情。


「はい、アオト君。

キミにだけは皆の感情が伝わってきたはずだよ。

それにどう応える?」


俺は……急に言われて、色んな事が伝わってきて混乱してて。

でも、これに応えなきゃって。

どう表していいのか分からない感情。

でもこれが今の俺なら───


「………っ」


「皆にアオト君の感情が伝わったみたいだね。

はい、解除していいよ。

次ノエルちゃんね」


「私はその……どういう立ち位置なんです?」


「ふむ、そうだね。

アオト君達とは違った星……そして変わった星を持っている。

遠い銀河のどこかの星だね。

キミは単体で力を発揮させてもらう。

アオト君達は見学さ」


「うぅ……緊張する」


何故だか引っかかる。

ノエルの力を発動させて待機させていた理由は?

それに今の言葉にもどうしてだか違和感を覚えている自分が居た。


「はい、やってみて」


「や、やってみてって言われても……」


首を傾げながら両手を前にする。

幻獣の力によって火に包まれ、精霊の力で辺りが赤く染まる。


「そうそうその調子」


「うぅ……」


「ノエちゃんがんば!」


エトリが応援する。


「……っ」


一瞬だけ。

ほんの一瞬だけ視えた。

ノエルの胸の中心に、赤黒く燃え盛る点が。


「……はい、合格!」


「え?」


ノエルが力を解除し、その点はもう視えなくなっていた。


「力のコツ掴めた?」


「はい……でも皆みたいに何かこう……無いですか?」


「そうだね……キミはキミの仲間達とちゃんと向き合うべき時が来る」


「向き合うべき時……」


「そんなに深刻に考えなくても大丈夫だから」


「は、はい……」


「これで一通り終わり。

これからどうする?」


「そう、ですね。

せっかく来たんですけど、明日も予定がありますし失礼します」


「おっけー。

今日の事は各々よく考えて……感覚を覚えておくように」


アルフェラッツの全てを見通すような視線に、怖さのようなものを感じながら。

魔法陣へと乗った。


***


───鬱蒼とした森の中で俺たちはまだ終わっていないこの事件を解決するため奥へと進む。

ミナタを監視するためモリンだけをおいて。


異様な静けさと、生きている人間の気配の無さ。

やがて森を抜け村へ出ると、そこには首から上の無い死体が文字通り山積みになっていた。


「この犯行は───」


「間違いなく『あいつ』だ」


あいつ、とは亜人側リーダーこと“ユネ”。

首を切断する殺し方で、ヨミの仇である男を殺したのも恐らくユネだ。


「出て来い!

いるんだろ」


「………やぁ、久しぶりだね」


赤く染った霧から姿を現したのは、青い髪を頭の後ろで結んだミックスの亜人の男性。

双剣の使い手であり、亜人側のリーダーユネだ。


「“あの時”以来かな、直接会うのは」


「………」


「アオト、あの時って?」


「……その話は後だ。

今はそれよりも───」


いち早く地を蹴り、刀を抜いた。


「いきなり襲いかかるとは。

ダメだよ、僕は君と……アオトと戦う気なんてないんだから」


「お前と話すつもりは無い。

あの時の事は感謝する……けど、それはそれだ」


刀に力を込めるも、防いでいる剣は微塵も動く気配がない。


「無理だよ。

君と僕とじゃあ力の差が違う」


「くっ……」


弾かれ、一旦距離をとる。


「皆、他の奴ら相手にして」


ぞろぞろとユネの後ろから複数の亜人が現れる。


「さっきも言った通り俺はお前と話すつもりなんて───」


「ねぇ、その隣の人間……誰?」


「私はノエル……アオトとは、その5年前に知り合って……」


「ふぅーん……君、2年前は居なかったよね?

てことは、最近アオトの所に来たって事?」


「だったら何……?」


「いや、色々複雑だなぁと思って。

僕はね、亜人である雛菊の皆を殺すつもりはないんだ。

まぁ、考え方は気に入らないし色々と面倒だから牢屋で暮らしてもらうつもりなんだけど。

……君、きっとアオトにとって大切な人、なんでしょ?

アオトが庇うように立ってるから嫌でも分かるよ。

僕はアオトがその気ならば仲間にしてもいいと思ってる。

けど、人間の君はダメだ。

殺さなくちゃならない。

アオトの大切な人をね。

アオトの傷つく姿は見たくないから、複雑だなぁって」


「俺はお前の仲間になるつもりも無ければ、ノエルを殺させるつもりだってねぇ」


「……やっぱりこうなるか。

本当は戦いたくなんてないんだけどねっ」


「……っ!」


ユネの攻撃を防ぐ。

相手の方が力が強い。


「私の事、忘れないでよねっ!」


ノエルの攻撃を躱し、後ろに跳ぶユネ。


「2対1か、いいね。

これでハンデが無いぐらいかな?」


「随分と余裕な事でっ!」


俺は何度も刀を振り下ろし、それを防ぐユネに隙を見つけては攻撃するノエル。

初めて一緒に戦うも、息はぴったりだった。


「なかなかやるじゃん人間!」


「僕の事を忘れてもらっちゃ困るなっ!」


リツが現れ、ユネと対峙する。


「もうやっつけたの?

さすが一番、早いね」


「アオトとノエルは他を頼む」


「分か──っ!」


「させないよ」


飛んできた剣が頬を掠め、後ろの木に刺さった。


「こう見えて僕、魔法も使えるようになってきたんだ」


手を前に向けると、剣が引き戻される。


「だから、2人とも逃がすつもりなんてないよ」


複数の光の玉がユネの頭上に現れる。


「ちっ、厄介だな」


「さぁ、どうするこの状況」


「動かないで」


メヅキがユネに向かって銃口を向ける。

反対側からはロイが現れ、矢を向けた。


「少しでも動けば分かっているな」


「あらら、もう倒しちゃった?

さっすが強いねぇ」


他の皆もゾロゾロと姿を現す。


「本当に厄介だねっ!!」


魔法の球を飛ばし、それと同時にメヅキとロイが攻撃する。

後ずさっていくユネを追い詰めるように、攻撃をしかけながら追っていく。



気がつけば辺りに何も無い、枯れ果てた更地にいた。


「フフフ……フハハハハハ。

あーあ、ほんと馬鹿だね。

誘い込まれたとも気づかないで」


目の前には300を超える亜人側がいた。


「馬鹿なのはそっちじゃない?

僕達が気づかないでいたとでも?

分かっててわざとここに来たんだよ」


「ふーん……そうゆうこと。

まぁいいや。

さぁ、パーティを始めよう」


ユネが指を鳴らしたのを合図に亜人達が襲い来る。

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