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青き華よ希跡なれ  作者: 溶枸由 佳月
第一章,連星
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嫌いになりきれない

もう使わなくなるであろう小屋の中を整理していた。

必要なものと不要な物に分け、不要な物は小屋に置いていくか焼却処分しようと考えている。

恐らく、ここを使う者は二度と現れないであろうが……。


「アオト………」


扉の外に彼女が立っていた。

うっかり鍵を閉め忘れていた、なんて──


「ね、ねぇ……アオト?

返事してよ………ねぇ………………」


「……………」


あとしないといけないことは、亜人の村へ念の為に報告しに行くこと。

外部に漏れてはいけない情報源を集め、不要な物は処分する。

それぐらいだろうか。


「…………もしかして、昨日のこと……怒ってる?」


淡々と片づけを進めていく。


「………ごめんなさい。

頭が混乱してて………でも、もっと早く言って欲しかった。

それは、本心」


「…………」


「もっと……早く言ってくれれば、親にもちゃんと説明してそのための準備もしておいて……………一緒に──」


一緒に、なんて。

不可能に限りなく近いのに。


「……………。

今日は、もう……帰るね。

また、明日」



彼女は次の日も訪れた。

その次の日も、またその次の日も。

俺は一度も言葉を交わすことなく、あっという間に国を出る1日前になっていた。



俺が焼却処分を終え、小屋に戻ろうとした時。

大勢の人が俺の目の前にいた。

それは、彼女の村の人たち全員だった。

全員、顔を覚えている。

あの時助けた、とかそういうのも全部。


そこには村長の姿も、彼女の姿もあった。


「な、何の用で──」


ふと、おばあさんが口を開いた。


「あなたが亜人であること、前から気づいていましたよ」


「───っ」


「だから、最後だけでもフードを外してちゃんと顔を見せてちょうだい?」


「……………」


外に出る時はいつもフードを被っていた。

それはもちろん今も。

軽く息を吐くと、ゆっくりとフードを外した。


「ワタシたち、あなたにたくさん助けられたわ。

小さいことから大きなことまで。

ちょっと不器用だけれど、あなたの優しさはちゃんと届いていたわ」


「お兄ちゃん、あの時は助けてくれてありがとう!」


「僕からもありがとうございます。

お兄ちゃんのおかげで妹はこうして生きているんですから」


「母である私からも」


村の人全員が俺の目を見ていた。

その目は蔑むものではなく、対等な存在として俺を見てくれている。

人間、なのに……俺は本当に……この人たちのために行動できて───


「我々の村を守っていただき、本当にありがとうございました」


「───っ」


村長が、彼女が、村の人全員が数秒間頭を下げた。


「………………」


少し黙った後、思っていることを拙くではあるが伝えようとする。


「ほ、本当に……役に立てたのなら…………嬉しいです。

誰かの役に……立てたのなら。

こちらこそ、お世話になりました」


同じく数秒間頭を下げた。


──だからこそ、本当の意味で人間のことを嫌いになりきれない。



村の人たちが去り、彼女だけが残った。


「…………」


「ねぇ………いい加減喋ってよ」


彼女とは目を逸らしたまま、口を開いた。


「………どうせ別れるんだから、話したって……辛くなるだけ、だろ」


「私別れる気は──」


「もうこれ以上!お前を巻き込みたくないんだよ……!

いい加減そっちこそ分かれよ!!いつもいつもわがまま言って勝手についてきて………」


「………アオト」


縋り付くような声。


「頼むから、黙って去ってくれ」


「…………でも!」


「いいから!!」


「───っ」


彼女ははっと驚いた後、悲しそうに俯きこの場を去っていく。


「………………」


その背中を最後まで見送ることなく小屋の中に入った。

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