強く輝く太陽と深い海
「荷物は全部持ったか?」
「うん、大丈夫。忘れ物無いかちゃんと確認したよ」
「よし、じゃあ行くか。
予定では今日帰るつもりだから」
「分かった」
家から出る前、ふと振り返った。
窓から日が差し込み、照らされた室内。
まだ早朝なのにも関わらず昼間のように、それ以上に明るく見える。
壁も床も木でできた温かく、懐かしくも感じる家だった。
「……本当に不思議な感覚だ」
* * *
昨日チラッと見かけた、カラフルな店が立ち並ぶ方の道を真っ直ぐ歩く。左側は線路のようだ。
「今日はどこを調査するの?
ずっとこの道を真っ直ぐ歩いてるだけだけど」
「このままでいいんだよ。
道を逸れても何もねぇし、行き止まりが多いからな」
「そっか」
特に報告すべき点の無い、同じような道が続いているだけだった。
今日はずっと昼のように明るいままで、空が雲で覆われている。
途中公園で昼ごはんを食べた。
それからまた、ひたすら歩く。
「……ねぇ、いつまで歩くの?これ」
「あと少しといえばあと少しだ。
ここは地形の関係上、真っ直ぐな道が続くから余計に長く感じるのかもな」
「それにしても長すぎるよ!
だって朝からずーーっと歩いてるんだよ?疲れてきたよ……」
「そうだな」
「……もし1人だったら、何を考えてこの道を歩いてた?」
「もし1人だったら、か。
そうだな、特に何も思うことなく歩いてたと思うぞ」
「暇じゃない?」
「暇も何も仕事だからな。
それにこういう道をひたすら歩くのには慣れてるし、嫌いじゃない」
「なら、アオトには向いてたんだ。体力も私より全然あると思うし。
私は足が痛くて……もう」
「……背負ってやろうか?」
「え?
い、いいよ……そんな、悪いし……」
「俺なら平気だ。
これでも体力には自信があるからな」
「で、でも………」
「遠慮するなって」
「……じゃ、じゃあ……お言葉に甘えて」
俺はその場にしゃがみ込み、ノエルが背中に乗ったのを確認すると立ち上がり、歩き始めた。
「な、なんか……恥ずかしい、ね」
「ん、そうか?
……ま、そうかもな」
それからどのくらい歩いたのか。
感覚的には30分か1時間ぐらい。実際はもっと短いか、長いのかも分からない。
空は少しだけ晴れ、日が沈みかけか出てきかけのオレンジ色に染まっていた。
そして、この島の端の高台にやってきた。
「うわぁ〜綺麗!」
目の前に広がる景色はどこまでも続く空と海。
特に海は太陽に照らされてキラキラと眩しく輝いており、綺麗だった。
風が吹き、ノエルが笑って景色を見ている。
「───っ」
俺は『その時』、強い後悔と深い絶望を感じた。
──ノエルの首元に刻まれた数字──
これが意味するのは『───』しかない。
そして同時に思い出したのだ。昔、そいつと遭遇した事──昨日ノエルの中に居た奴の正体を。
……やはりここに連れてくるべきではなかったのだ。
こんな、呪いの島なんかに。
あの嫌な予感は気の所為なんかじゃなかった。
本当に、とてつもなく後悔することが起きてしまった。
恐らく、この島に連れてきてしまった時点で、この場所に着いた時点での確定事項だ。
もう、戻れない。
刻まれてしまった事に変わりはないのだから。
守ると言いながら、連れてきてしまったばかりに……こんな………
「私、ここに来て良かった。
この景色をアオトと見ることができて」
「……あぁ、そうだな」
この事実は隠さなければならない。
俺は、ノエルの言葉に笑って応えた。
「──誰だ!?」
振り返るがそこには誰も居なかった。
確かに気配がしたのだ。
昨日ノエルの中に居た奴の、───の気配が。
「どうしたの!?
まさか……」
「……いや、俺の気の所為だったらしい。
昨日のことで、気が立ってるだけだ」
「そう?
……なら、いいんだけど」
ノエルの顔を見ると、胸が痛くて苦しくて。
激しい後悔と深い絶望に飲まれそうで。
これは、俺の責任だ。
俺が、なんとかしないと──




