はじめてのおつかい
今回はじめてのおつかいに挑戦する女の子(オートマトン)は、グランドストーン在住のクロエちゃん!
好きなものはまだ生まれてから数十秒しか経ってないのでまだわかりません。
好きなもの、見つかるといいね!
「いってきます、ますたー!」
好きなもの、見つかるといいね!
さて、そんなクロエちゃんがウィニスさんから受け取った地図を持って最初に向かったのはこちら!
「おっきーふんすい!」
グランドストーンのメインストリートにある噴水広場です!
騎士団の詰所はこのメインストリートの先、グランドストーン駅の近くにあるのですが、クロエちゃん、ちゃんと地図読めるかな?
「んー、こっち!」
おっと?
地図と睨めっこして指を刺したのはまさかの真逆の方角!
どうやら地図を逆さまにして持っていた様です。
これは先が長くなりそうです!
⚪⚫○●⚪⚫○●
続いてクロエちゃんが向かったのはギルド広場。
グランドストーン通りを駅とは真逆にまっすぐいくと見えてくる、少し広めの広場です。
この広場には冒険者ギルドや錬金術師ギルドなど、数々のギルドが所狭しと並んでおり、さらに提携店も多く建っているのですが、クロエちゃんが向かった先は果たして……?
「おっきーたてもの!」
どうやらクロエちゃん、グランドストーン駅と冒険者ギルドを間違えているようです。
ここで少し回想に入りましょう。
時を巻き戻して出発前。
ウィニスに地図をもらいながら、騎士団の詰所がある場所を教えてもらっています。
「クロエちゃん、騎士団の詰所は、駅の東にある大きなたてものだからね。
駅はこの街で一番大きい建物だから、多分見ればすぐにわかると思うから」
「わかったー!」
──そういった経緯のお陰で見つけたのが、この冒険者ギルドだったというわけなのです。
たしかに、冒険者ギルドって大きいですもんね。
てくてくてくてく、冒険者ギルドに向かっていくクロエちゃん。
そのまま扉を開けて、中に入ってしまいます。
どうやら隣という言葉を忘れて、ただ大きい建物ということしか覚えていないようです。
これは難儀しますね。
⚪⚫○●⚪⚫○●
フラッペンは冒険者である。
冒険者の仕事というのは様々で、街をぐるりと囲う街壁の外に魔物を退治しに行ったり、あるいは薬草の採取をしたりするのが主な仕事だったりする。
しかし、それもある程度の戦闘能力を見込まれた人だけで、試験に合格していない最低ランクの彼らは、主に街の中の人たちが発注する依頼──要するに日雇いのアルバイトで給金を得る。
しかし、そんな冒険者家業には時に休みも必要。
今日はギルドの酒場でゆったりしていよう、そう思っていたのだが。
「朝っぱらからビールとジャーキーなんて、エレガントとは言えないわね。
むしろワイルドだわ」
黒いフード付きのローブを着た黒髪ロングと白のフリルが目立つカチューシャをつけた、いかにもお忍びのお嬢様風な少女が対面に腰を下ろしながら話しかけてきた。
「アリアだって」
「ここのチョコレートケーキは美味しいもの。
……君、チョコレートケーキと、それからコーヒーをブラックでいただけるかしら?」
近くを通りがかった、まだ十歳にも満たない年頃の少年のウェイターに声をかけるアリア。
その様には隠しきれない貴族らしい気品が見て取れる。
「承りました」
チップを受け取ってその場を後にする少年を見送りながら、ジャーキーにフォークを立てるフラッペン。
「まだあんなに小さいのに」
「だからこそよ。
今のうちに──」
言いかけて、アリアが途中で台詞を止め、スッとその紅の瞳を細めた。
彼女の目に映っていたのは──いや、正確には目ではなく意識なのだが──一人の黒い長髪の少女。
人間の姿をしてはいるが、その気配は普通の人間とは全くの別物で、どちらかと言えば魔道具のそれによく似通っていた。
「……」
ふいっ、と首の角度を変えて、肩越しに少女の姿を見る。
少女はギルドホールの真ん中あたりに来て立ち止まると、誰かを探す様に視線を彷徨わせ始めた。
「あの娘、誰かわかるかしら?」
フラッペンに尋ねるアリアの問いに、黒髪の少女を見る。
「んー、見たことある気がする。
ちょっと話しかけてくるよ」
フラッペンはジャーキーを飲み込むと、布巾で手を拭って少女の方へと足を向けた。
近づくにつれて、フラッペンはあることに気がついた。
まず、彼女の目が人間のそれではなく、ガラス玉でできた義眼であること。
遠目に見れば全く違和感のない肌の質感も、近づいてみればどうやら義肢であるらしいこと。
もっと言えば、その顔も作り物で、髪もどこか人間のものとは思えない様子だったし、何より近づくにつれて僅かながら細かい歯車の回転音が、僅かにではあるが聞こえてくること。
(すごい。
これ、かなり精密に造られた自動人形だ……!)
一体誰がこんなものを作ったのだろうか。
以前、何度か馬の形をしたものや鳥の姿をしたものなら見たことはあった。
しかし、それは見ればすぐにそれが機械であるということがわかるくらいの作りで、今目の前にあるこのオートマトンの様に、よく見なければ気がつかないなんてものは見たことがなかった。
(……それにこの顔。
以前、どこかで見た気が──)
難しくなりかけた表情を緩めて、少女の近くに腰を下ろしながら声をかける。
「こんにちは〜♪
もしかして、誰か探してるのかな?
よかったら、お姉さんが協力してあげようか」
近くで見ると、ガラス玉の瞳の奥に機械的な構造が見て取れた。
薔薇の花びらの様に折り重なったシャッターが開閉して、その義眼にフラッペンの姿を映すのがわかる。
白いブラウスのしわの一筋、上から着ている黒のキャミソールの影の一片、茶色の髪の毛の一本、そのすべてが細かく反射している。
そこに人間的な瞳の輝きはなく、呆然と眺められている様な、焦点を結んでいない様な印象を受ける。
──と、不意にその桜色の唇が僅かに開いた。
「きしのひとをさがしてるの。
ますたーが、とにかくよんできてほしいんだって」
スラスラと流れてくる肉声。
機械であることを感じさせない見事な質感と、その見た目の美しさに思わず息を詰まらせた。
「……そ、そうんだ、騎士を探してるんだね?」
何かを言いかけそうになる彼女のセリフを遮って、確認の言葉を紡いだ。
「じゃあ、お姉さんが詰所まで案内してあげるよ♪
私、フラッペン。
よろしくね!」
「ほんと!?
おねえさん、ありかとう!
わたし、クロエ!
モデル/メイデンのオートマトンだよ!
よろしく!」
あまりにも自然な動作で礼を言うものだから、一瞬、彼女がオートマトンであることを忘れかけるも、後に続く自己紹介で、こんなすごいオートマトンをつくる魔導技師とは、いったいどんなものだろうと心の中に苦笑を浮かべるのだった。
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