34話 白い兎
まだ、しばらくの間4部は続きそうです。(´・ω・`)
ヘリの座席から雪兎のような物体が跳ねた。
「……佐々木さん?“アレ”は何ですか?」
「――あぁ……、アレは……」
謎の物体はヘリから転げ落ちると、場を疾風のように疾走。
桜さんの豊満な胸へと落ち着いた。
「――リ、“リシュル”ちゃん?どうして此処に……?」
「――だって、心配だったから……」
瞳を潤ませる彼女。
いや――幼女と形容した方が正しいか?
それ程までに彼女の姿は幼かった。
ただし――外見、オメーは別だ。
澄む湖畔のように透き通った銀糸の髪に、舞台で踊るアイドルのような顔立ち。
一見、幼女と見間違えるような姿はまるで湖の乙女のように洗練されていた。
いつから、ここは高天原へと化けたのか。
綾乃さんに桜さんという美少女に新たに登場したリシュルという謎の美幼女。
これを神域と表現せずにどうする?
しかも、だ。
その月白の肌の上には漆黒の軍事用ハイテクスーツをまとっているではないか?
ムッチリボディが剥きだした。
そんな彼女に対し、綾乃さんは口角を茫然と釣り上げると、リシュルさんにそっと近づいた。
そして、彼女の餅のような頬をおもむろにつまむ。
「にゃ、にゃにをするの!はひのちゃん!」
「はぁ……、呆れた……
あんた……、何しにきたのよ?」
「生存確認!」
「あのね?そんなに私たちが脆弱に見える?」
「ううん?むしろ屈強だよ!桜ちゃんと綾乃ちゃんがいれば、百人力だよ!」
「僕と佐々木さんは最初から戦力に含まれていないのね?」
リシュルさんは「うー?」不思議と言った具合に小首を傾げた。
「佐々木さんはパイロットでしょう?パイロットが戦闘に参加してどうするの?」
「まぁ、今回は俺も参加せざるを得なかったんだが、な?」
佐々木さんはショットガンで肩をポンポンッ。と気怠そうに叩いた。
「素人の僕たちが出る幕じゃ、ありませんでしたね?ね?佐々木さん?」
「一応、俺も警官なんだぞ?それでも雛詩や神成、土御門さんに比べたら、現場の認識は遅い方だ」
「もう!そんなに私たちをおだてても何もでませんよ?」
桜さんは「ね?リシュルちゃん?」と顔を見合わせていた。
リシュルさんは困ったように顔を綻ばせると、僕は恥ずかしそうに見つめた。
「てか!君!今、幼女という謎のワードをもちいて、私を紹介したでしょ!」
「――はい?」
「だ・か・ら!君!私を侮辱したでしょって聞いているの!」
「……あなたはどこからどう見ても幼女でしょうが……」
「こう見えて、二十歳はとっくに越しているんだよ!」
「オオ……、ジーザス……」
その見た目から、二十歳を越しているなんて、普通はあり得ないだろうに。
いや、待てよ?
大人じゃないと、警官にはなれないか……?
ん?何故、幼女が警官になれている?
この国には法律すらなかったのか?
「き、君!また失礼なことを考えたでしょう!」
「考えるも何も……、どうして小学生がこんな場所にいるんですか?僕は甚だ疑問を覚えますよ?」
「ププッ……!あんた、小学生だって?」
綾乃さんは堪えきれないと言った具合に頬の糸筋を緩めた。
「あ、綾乃ちゃんまで!うー!私は小学生なんかじゃないよ!勝手に決めつけないで!」
「いや、僕は見た目からすんなりと入る方なんで……」
「そ、そんなに私の見た目がオカシイかな!?」
リシュルさんは恥ずかしそうに顔を赤面させた。
そんなリシュルさんを目の当たりにしてか、桜さんも「ププッ……!」と笑い出す。
「もう!せっかくのシリアスな雰囲気が台無しだよ!リシュルたん!」
「さ、桜ちゃんまで!」
「むぅー!」とリシュルさんは風船のように顔を膨らませていた。
そんなリシュルさんに対し、僕は言葉を投げかける。
「ちゅーか?君は何者かね?」
「何者か答える前に自分から自己紹介する方が普通じゃないかな?悪魔祓いさん!」
「僕は悪魔祓いになった覚えはありません。
一介の学生に過ぎませんよ?」
「学生でも、悪魔を祓った事実は一生消えないよ!」
「まるで、刺繍のような言い回しですね?」
「ふーん!だ!君は一生S.I.O.で働いてもらうんだから!」
「まるで、奴隷のような言い回しですね?」
「私を馬鹿にした罰だよ!バカ!バカ!」
「やはり知能は小学生並か?」
「だ、誰が小学生よ!何度も言わせないで!私はとっくに二十歳を越しているんだよ!」
「ほら、『外面は内面のいちばん外側』って言うじゃないですか?」
「わ、私はそれでも小学生じゃないよ!歴とした大人なんだから!」
彼女はエッヘン。とまな板を張った。
「はて、学生の僕が言えることじゃありませんが、少々、子供染みていませんか?その見た目も内面も外面もまるで一致しているじゃありませんか?」
「あっははは……!イツカ!あんた面白いことを言うじゃない!」
「イツカ君?それ以上はダメだよ?リシュルちゃんも困っているから?」
あくまでも落ち着いたように二人を笑い出す。
が、その心情は駄々漏れだった。
「うー!うー!私は“リシュル・フィリップ・デュプレシ”!誇りある名家なんだから!」
「もしかして……、外国の方ですか?」
「うー?私は日本人だよ?フランスと日本のクォーターであることには間違いないけど……」
なるほどね?クォーターか。
それならば、その容姿にも納得がいく。
銀糸の髪なんて、普通は日本じゃあり得ないからね?
いや、フランスでも異質か……?
こう言っちゃアレなんだけどさ?
もしかして、彼女って『アルビノ』?
決して人種差別をしているわけじゃないよ?
でも、アルビノってほらさ?珍しいから。
アルビノとは、メラニン生合成に関する遺伝子情報の欠損により、先天的にメラニンが欠乏してしまった遺伝子疾患のある生物。
ちなみに、メラニンとは肌に形成される色素だと考えてくれればいい。
あくまでも、専門家ではないので、一概に詳しく説明することはできないが、そこは妥協してもらいたい。
何にせよリシュルさんが今までどのような人生を歩いてきたのか、大凡だが推測はできる。
特にアルビノである者だと一目で分かるのならば例外だ。
人間とは自らと違う者を恐れる。
隣人を疑い、恐怖するのである。
故に、その増悪と偏見に終わりはない。
今でも自身が校内で味わっている差別という“迫害”。
リシュルさんも同じように迫害を受けて生きてきたか、もしくは、崇められて生きてきたか、恐らくそのどちらかであろう。
あくまでも推測に過ぎないが。
「うー!また、君、失礼なことを考えたでしょ!」
失礼なことを考えたのは間違いない。
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