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*私は巫女で勇者姫・下

「あの日から半年ほどですが、魔王に動きはありません」

「資源の搬入も順調です、ただ、奴隷の数が少し多い気がしますが」

「結界に必要な供物の大多数が揃ったようです、残りも一昨日中には」

「ありがとうございます、思ったより早かったですね」

恐怖が人の原動力になるなんて滑稽な話だけれど、その効果は比べるまでもない。

結界を作動させた後に、この世界がどうなるか分からなかったこの国は、食料や人員を王都に集結させるべく動いていた。

予想では1年はかかると思っていたけど、半分で終わってしまうなんて思ってもみなかったわ。

魔王が攻めてくる前に終わらせられるのは良い事なのだけれど。

「・・・グリフィレット、計画の方は?」

「順調です、出来得る限りの善処はしております」

彼には今まで通り騎士として働いてもらっている。あの日話した事は私と彼の秘密だ。

それと、彼には重要な任務を与えている。

奴隷としてこの国に連れて来られている魔族の保護だ。

表向きには、物資の移動や雑務を請け負わせ王都へ集める。

本当の目的は、少しでも多くの命を救うために考えた策だ。

魔族大陸までは手が出せないけれど、それでも、少なくない命を助けられるはず。

その為に、結界に必要な供物なんて理由で、遠方の特産品を持って来させている。

もちろん真っ赤なウソだけれど、今まで自分の存在に嘘をついてきたのだ、一つ二つの嘘なんて、命の前では気にならない。

その5日後、予定より半年も早く準備が整う事になった。


世界樹の近くは魔力が濃い、長居しては人に良くない影響を与えてしまう。

そんな危険な場所に、私とグリフィットは立っていた。

「姫、本当によろしいのですか・・・」

「グリフィレット、私はそんな顔のあなたに国を任せた覚えは無いわよ」

ディストラクションを使って、私がどうなってしまうのか、それは彼にも分かっているのだろう、見送りだけとついてきた彼は、その言葉に反してその場を動こうとしなかった。

彼の事が心配な私は、少し意地悪な言い方をしてしまった。

「・・・失礼しました。歳をとると、身体が思うように動かないもので」

「うふふ、凛々しい顔の方が素敵よ?」

「ありがとうございます。・・・では、ご武運を。勇者アルテユ・ギネヴィア」

まったくグリフィレットったら、私は勇者じゃなくて巫女なんだけど。

けど、名前を呼ばれるのなんて何年ぶりだろう。・・・自分の名前を忘れてるなんて、笑えるわね。

彼の背中が小さくなるにつれて、緊張が高まっていく。

笑ってる場合じゃない、私はこれから間違いを起こさなければいけないのだ。

あの魔王が私の大切な物を奪ってしまう前に、私の大切な物を、無理やりにでも守らなければならないのだから。


世界樹は大きく、見上げてもその梢を見る事はできない。

世界を見守り、そこにあり続ける大樹。

その大樹に手を触れた瞬間、世界が広がっていく。

頬を撫でる風、照りつける日差し、小さな結界に守られていて感じる事の無かった世界の感触。

だが、温かな感触はすぐに絶望へとその色を変えていく。

世界樹に内包された魔力が切れると同時に、結界をより強固なものとする為、世界の魔力を奪い始める。

大地は怒り荒ぶる、風は泣き叫び、空は今にも落ちそうなほどに暗い。

結界を通して伝わってくる、命の悲鳴。

魔力を奪われ、塵になっていく、ありとあらゆる生き物たち。

「そんな・・・・こんな・・・・」

止まらない嗚咽、瞳から流れ出す涙は、もう止まらない。

「私は、・・・それでも!うあぁぁぁ!!」

結界が出来上がるにつれて、大地が浮かび上がる。限られた世界を守る為に、ありふれた世界を奪う為に。

心が挫けそうになる、今すぐ世界樹から手を放して、耳を塞ぎたい。

そんなとき、聞こえるはずの無い声が聴こえた気がした。

『ふざけるな・・・、ふざけるな!なんだその醜い顔は!俺を睨んだ勇ましい瞳はどにいった!俺はお前に勝てないんだろう!だったらかかってこい、いつでも殺されてやる!逃げるな、諦めるな!お前は、俺の望む勇者なんだぞ!』

今一番聞きたくなかった、悪逆非道、最低最悪、大嫌いな魔王の声。

「わ・・・、たしっ。私はっ!どうせ可愛くないし!涙で前が見えないし!あなたに勝てるわけないし!もう誰も殺したくないのよ!だから諦めて、逃げるのよ!第一私は、勇者じゃないわ!」

ほんとに、大嫌いな魔王。

人に向かってこんなに感情をぶつけた事なんて、初めてだわ。

それになんだか、前と違って魔王って感じがしないし、変な魔王。

本末転倒よね、魔王から逃げる為に苦しい思いをしてるのに、その魔王に励まされるなんて。

もう迷わない。

世界が私を非難しようとも、私は私を間違い続ける。

それが、私に与えられた巫女としての最初で最後の使命なんだから。


巫女勇者編はこれにて終了です。

ミコミコヒーロー!ミコミコヒーロー!


ようやく巫女勇者の名前が出てきました、実は名前を最後まで出そうか悩んだのですが。

円卓の騎士とか、ね?


次回から魔王側に戻ります。

一体世界はどうなってしまうのか・・・!

ま、知ってて言ってるんですがね?


感想お待ちしておりますね。

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