prologue
その昔、限りある魔力の奪い合いによって争いの絶えない世界に、創造神は〈愛〉を説いた。
子を成すことで魔力の拡散を図り、長い年月をかけて、魔法が使えない〈ヒト〉へと置き換わる。が、神話の時代が終わってもなお、原動力である寿命に形を変えた魔力は拡散され続けていた。
愛、とは。
1人の相手に対して、1度きりの結晶のことを指すのだろうか。
“子を成せば成すほど短命で生まれてくる”
そんな理に、人々は抗った。
ある者は不老不死を求め、またある者はヒトの生き血で若さを保つことを見出し、否定的だった周囲の者も、先立つ家族や己のかわいさ余って、他人に手をかける。
それは次第に、塗布から経口へ。
ヒトの道を外れようとも。
より効果を求めて、〈ヴァンパイア〉に堕る。
「やめろ。これ以上吸うと死ぬぞ」
「はあ!? ちょっと吸っただけだろうが!!」
「かりかりすんなって。せっかくの良血だ、大事に飼おうぜ」
鉄臭いのは最初だけ。
「ほーら、たくさん食って、早く血ぃ作れよ」
長寿であればあるほど美味しく感じられ、血液以外の食べ物は無に等しくなる。
「――っ、待てねぇよ!!」
太古の奪い合いとなんら変わらないのに、創造神は沈黙を貫いたまま。
「どんなしょぼいやつでも、あと数人いねぇと話にならねぇ!!」
血走るヴァンパイアは白目を剥き、同胞の腕に噛みついた。
尖った八重歯が肉を刺し、そこから溢れるご馳走を啜れば、さらなる獣に成り堕がる。
「よせっ……!!」
自我を失うヴァンパイアの首に亀裂が入った。
噛まれたほうも、周りの者たちも引きはがそうとするが、ぶちんっと。首が千切れ、頭部を失った身体は地を這った。
しかし、それでは終わらない。
小刻みに震える身体。
蠢く断面。
そこから溢れる、黒いクレヨンで塗りつぶしたかのような塊が、4本の足を生やして周囲を襲う。
ヒトはあっという間に喰われてしまった。
二の舞にならないようヴァンパイアたちも必死に抵抗するが、突然の強襲に大半がやられ、骨も残らず灰になる。
それが彼らの末路だ。
「くそ、がっ……」
ヒトとヴァンパイア。
そして、両者を喰らう〈マモノ〉
共食いによって生まれてきた者による、三つ巴の争いは混沌を極めていた。




