084 18歳未満には見せられねえんだ
「タイラー。無事か?」
小粋が寝そべるおれに話しかけてくる。おれは目を閉じて、「まあな」と答えた。
「おれたちもヤバかったが大統領とルーシのおかげで助かったんだ。足向けて眠れねェな?」
「そうだな……」
おれたちだけでは勝てなかった闘い。まだまだ強くならないといけない。
異世界転生35日目19時間28分19秒目。ひとまず勝利を収めたおれたちはそれぞれの場所へ戻っていくのだった。
*
「……あー」
ガソリンにエナジードリンク(ロスト・エンジェルスのエナドリは2本一気飲みしただけで死ぬらしい)を混ぜて度数60パーセントのバーボン・ウイスキーで割る。
そんな人間では絶対に飲めない代物を飲み干したおれは、口から煙らしき現象を巻き起こす。
「タイラー、誰か来たよ」
愛しき妹は煙まみれになってゲホゲホ咳き込むおれのことなんて気にしちゃいない。
目からも愉快な灰色の空気を吐き出し、「おっけー……」とダウナーな声で玄関へと向かう。
「陛下。かなりの厄介事を抱えてるとのことで小粋さんから呼び出されましたが、それは一体どんなものですか?」
丁寧な口調で喋る緑髪の彼女。おれは黙って玄関から見える部屋を指差す。
「へ?」
「ロスト・エンジェルスで即死刑になる犯罪者だよ」
「……聖女ですか?」
「正解だ。ソイツはいま神へ祈りを捧げてる。ロマーナの聖地に向けてな」
「その魔力を除去しろと?」
「それも正解。魔力をなくすことのできるエキスパートだって訊いてるから、期待してるぜ?」
「身に余る光栄です……」
とりあえずおれはエンバシーのいる部屋のドアを開けてみる。
その瞬間になにかしらの攻撃魔術を繰り出されるのだから、彼女がいかほどに怯えているのか分かるものだ。
「ひ、ヒィ!! ついに当局が私を──」
「落ち着け。おれだ」
「タイラーさん……」
「精通者を連れてきた。ロスト・エンジェルスに染まる覚悟は良いか?」
エンバシーはあたりを一瞥し、まるで何者からか盗聴されている疑惑かあるかのごとく警戒心マックスの小声で答える。
「……。はい」
「よろしい。おれは酒に浸ることにとても忙しいので、あとは……このロスマンズ女史にお任せする」
それで良いのか、おれ。
まあおれがいたところでできることなんてないに等しい。
それにむしろロスマンズの魔術を考えるとここにいるのは邪魔になってしまう。
「では、任せたぞ」
「御意」
ロスマンズに魔力が集中し始める。おれはあくびをしながら部屋の外に出ていった。
「えっ? ちょっ、タイラーさん!? タイラー様!? このヒト触手出し始めたんですけれど!?」
「大丈夫だ、それは蛇女の蛇だからヨ」
「なんにも安心できないんですけれど──うわあああああああああああああああああ!!」
叫び声を聴きながら、おれは心配そうな表情をして駆けつけてきたミリットに言う。
「ああ、ここから先は18歳未満には見せられねえんだ」
ミリットは呆気に取られた顔つきに変わり、「意味分かんない……」と言うのだった。
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