033 スライム娘”タイラント”VS連邦国防軍”チェロキー”③
「いてェじゃねェか……オマエはァ!!」
歯が欠けたのか、口の上側から血をポタポタ垂らすチェロキー。しかし体格で劣るおれが接近戦を挑むのは、どうしてもリスクがついて回る。
「知ってるか!? “悪魔の片鱗”をまとった腕の硬さは鋼鉄にもダイヤモンドにもなるんだよ!! さて、てめェは何発喰らったら根をあげるんだ……!?」
危険だと判断した瞬間距離を取ろうとしたが、もはや遅かった。おれは腕を掴まれ、宙ぶらりんになってしまう。身長が160センチほどと2メートルごえだから当然であろう。
そしてチェロキーの加減なき一撃が顔面に下る。グラァ……、と視界が揺らぐ。スライム娘の脳であり心臓であるコアに直接ダメージが入ってしまったのだ。
「こ、の野郎……うぉッ!!」
「誰が一発でやめるって言ったんだ!? おれは根をあげるまでと言ったよなァ!?」
左手でがっちり掴まれ、右腕で殴打される。逃げ場がない。この場から逃げられるだけで良い。なにかスライム娘の特性は……。
「……ッ!? どこに消えやがった!!」
寸のところでタイーシャに教わった技を思い出す。スライム娘はただのスライムの上位互換。ならば普通のスライムになってしまうことだってできる。
おおよそ6日ぶりに水気のあるなにかに戻ったおれ。しかしあのときとはなにもかもが違う。おれはチェロキーの皮膚にスライムをつけた。
「うごおおおおおおおッ!?」
寒さ対策にガソリンばかり飲んでいたから、まだ発火能力は残っている。脚が燃えていくチェロキー。当然動けるはずもなく、おれはスライム娘に戻ってダッシュで分離させたもうひとりのおれと合体する。
「脚が!! 脚がァあ!!」
ダメージだって蓄積されてあるはずだ。たとえ50個以上の勲章を持っていようと、植民地をたったひとりで支配したとしても、相手が人間ならばノーダメージなんてことはありえない。
おれは保有しているスライムをすべて使い果たす勢いで、右腕にスライムを溜めていく。
最初は3メートルほどだった腕もいまや10メートルを越えた。良い頃合いだ。
脚が焦げるほどの痛みに悶えたチェロキーは、しかし不敵な笑みを浮かべる。
「ケッ!! スライム娘ごときにおれが倒せると思ってんのか!? おれァチェロキーだぞ!!」
おれは左腕を物理的に伸ばし、ホテルの最上階に登る。あとはこの右腕を振り落とすだけだ。
「だったらおれも名乗らせてもらう!! おれの名前はタイラント!! この世界を粛清する者だ!!」
「粛清できるモンならしてみろよォ!! “ミシャグジ”!!」
岩石がチェロキーを守るために出現した。それらには“悪魔の片鱗”がまとわされているように見えた。
でも、絶対おれが勝つ。勝ってみせる!!
おれは“悪魔の片鱗”を使った拳を振り落としたッ!!
「ギガント・デザート・イーグル!!」
ふたつの交差は一瞬。
おれは地上へ力なく落ちていく。安堵の表情で。
タイラントVSチェロキー 勝者:タイラント
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