032 スライム娘”タイラント”VS連邦国防軍”チェロキー”②
「さすがだなァ!! タイラントォ!!」
チェロキーは笑い狂う。笑い事ではないのに笑い、笑い話じゃ済まないのに嘲笑う。
「それに比べておれの子分どもの軟弱なことよ!! おら! 気合入れろや!!」
先ほどの良く分からない現象で全員が救えたわけではなかった。チェロキーはそのうちのひとり、脚が潰れて動けない者になんら躊躇なく拳銃で発砲する。
「ぐッ……」
「てめェら弱卒が役に立たねェのは知ってたが、ここまでとはな。骨のねェヤツらは嫌いだ」
「おい! ソイツら味方なんだろ?」
「味方? 無能な味方は真っ先に銃殺すべきって言葉知ってるか? それにおれァオマエを誉めてるんだ。隕石を3回も退けたヤツなんて始めてだぜ? ケケケッ!! おもしれェ……おもしれェぞ!!」
大地が揺れる。落下して未だ砂ホコリをあげている隕石にスピンがかかり、それらはひとつの場所に集められていく。
「石は人間が最初につくった“鈍器”だ! それらは合体し……人間の下僕のごとく働く!! おれの新魔術は『岩石操作』だァ!!」
4メートルをゆうに超えるヒト型ができた。中身は当然石だろう。最も近くにある、ヒトを殺すための鈍器。それらはまるで意志を持ったかのように、おれへ襲いかかる。
「うひゃはははははは!! さあ、タイラント!! この量の石の塊は吸収できねェよな!? しかも“打撃”との好相性も台無しだ!! オマエはどうやってこの場を切り抜けるんだ!?」
猛り笑うチェロキーに、おれはひとつ宣言しておく。強気な笑みを見せながら。
「勇将の下に弱卒無し。弱卒を抱えちまってるアンタじゃ勇将にはなれねえし、おれに勝つこともできんさ」
スライム娘には様々な特性がある。いま無事かも分からないタイーシャが散々教えてくれた。“打撃”“斬撃”はよほど保有しているスライムが減っていない限り意味がないとか、スライムが残っている限り無限再生できるとか、触れたものがとてつもなく巨大か途方もない魔力がかかっていない限り吸収できるとか。
すべて復習みたいなものだが、新たな必殺技も手にした。魅せつけるにはこの上ない場面だ。
「デュアル・タイラント!!」
やっぱり必殺技を叫ぶのはちょっと恥ずかしいが、良い気付けにもなる。
瞬間、おれはふたりに分裂した。身長体重ともに変わらずの姿で。
「やることはただひとつ」
「自分のことだから分かってるよ」
「自分が目の前にあらわれて話してくるなんて不思議な気分だ」
「ま……目の前にいる外道を潰すにゃ……」
「「この上ねえ!」」
チェロキーは戦闘狂が故か、スライム娘の最もポピュラーな特性を忘れてしまっている。それは、意識して触れたものに酸化を起こすことだ。
おれから分裂したおれは、ヒト型に颯爽と詰め寄って頭の部分にふれる。当然酸化が始まった。このザマだと10秒程度で行動停止になるだろう。
一方おれ。なにも遠慮することはない。必殺技があっさり破られて呆然とするチェロキーの顔を、その部下を顧みない心底ムカつく顔をぶん殴るだけだ!!
「勲章も剥奪だろうな!! 可愛い仲間たちに手ェ出したオマエに容赦はいらねえ!!」
ゴギッ!! という顎へのアッパーで、チェロキーは一瞬白目を剥く。
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