そういうお店の受付にて
「わかりました。私はこの付近で捜索を続けますので、ご主人様は御用が済みましたら、ここに来てください」
「一人にするけど、大丈夫?」
「はい、遠くへは行きませんし、いざとなればこれがありますから」
チセはローブの隙間からスタンガンをちらりと見せると、いたずらっぽく微笑んだ。それを見て僕はチセのたくましさに改めて脱帽した。
「わかった。くれぐれも気を付けてね」
「はい」
短い言葉を交わし僕はチセと別れ、一人歩き出した。
白狼族は希少な種族だから安い値段のお店にはいないはず、だから僕はこの街で最も高い店を確認してみることにした。それはこのエリアの中でもわかりやすいほどに大きな建物とそれに見合った豪華な門が構えてあった。表看板に記載されている値段も他の店と比べて桁が二つ違っていた。とは言え今の僕に行かないという選択肢はなかった。勇気を振り絞り店の中に入った。
門をくぐるとすぐさま目の前に入ってきたのは高級旅館を思わせるきれいな木を使った床とその先にある受付だった。そのカウンターの中では眼鏡をかけた細い体躯をぴっしりとしたスーツで包んだ男が、何やら帳簿を眺めながら佇んでいた。しかし彼は僕を見るやすぐに帳簿を置き、視線を合わせた。
「いらっしゃいませ、当店は初めてですかな」
「どうしてそれを」
「こちらは高級店でございます故、訪れるお客様の顔はすべて記憶しております」
「それはすごいですね」
「いえいえこれくらいのこと、できて当たり前でございます。それで本日はいかがいたしましょうか?」
男は一度閉じた帳簿の代わりに、店の利用ルールや、値段の書かれたメニュー表を見せてくれた。どうやらそれによると、料金を払って女の子を指名し、そしてその子とお酒や食事を楽しむ施設らしい。正直経験はないものの知識としてキャバクラを知っているので、それとほとんど変わらないシステムだったので、あっという間に飲み込むことができた。
だが僕の目的は遊ぶのではなく、リースの母親を探すためだ。僕はメニューの隅々まで目を通し、それっぽい人物を探すが、そこには該当しそうな人物はいなかった。
「なにか気になることでもございましたか?」
あまりにも長時間メニュー表を眺めているので、受付の人が心配そうに尋ねてきた。
「いえ、その大したことではないのですがいいですか?」
「ええ、何なりと」
「風のうわさでここに白狼族の女性がいると聞いたのですが、いないのですか?」
僕は大胆に話題を切り出した。そうすると先ほどまでは穏やかでスマートな笑みを浮かべていた男性の表情が一変した。
「その話をどちらで」
「ギルドの会長から昔この街に紛れ込んできたと聞きました。ご紹介が遅れましたが、こう見えても僕は奴隷商人です。ですから白狼族という希少な種族がいるのなら、一度は見ておきたいと思いまして」
「なるほど、お客様の素性は分かりました。しかし当店は奴隷を販売するお店ではございません。その点はご理解いただけますでしょうか」
「ええ、もちろんです。もっとも奴隷商人とは言えまだまだ駆け出しなので、白狼族を買えるだけの資金は持ち合わせていませんので」
「そうですか。それではご質問にお答えする前にもう一つだけお伺いさせていただいてもよろしいでしょうか」
「はい」
僕は生唾を飲み込んだ。




