じろじろ見すぎ
「しかし悪くない買い物でしたね」
「うん。これで問題が一つ減ったね」
「ええ、それに寒くなったときには防寒着としても活用可能です」
なんて会話をしている間も周囲の人たちからの変わり者を見るような視線もなくなっていた。とは言えローブを深くかぶりこそこそと会話をしているとなんだか悪いことをしている気分になる。
「それにしてもこれだけ広いと一周するだけでも一苦労ですね。ここはひとつ明らかに関係のなさそうなエリアは後回しにしましょう」
「そうだね」
ということでチセの先導に従い、場所によって早歩きと普通歩きを使い分けながら進んでいき。ついに僕らは奴隷販売のコーナーにやってきた。
「ここが奴隷市・・・」
チセは呆然としているが、かつて訪れた経験のある僕でさえもそのあまりにも大きな規模に呆然としていた。前回に訪れた奴隷市は大小さまざまな檻の中に奴隷である獣人が詰め込まれていたのだが、ここでは洋服店のマネキンの様にガラス越しに立ち姿を見ることができた。そこだけで見ると、ガラスを割って襲い掛かるくらい獣人の筋力なら可能ではないかと思われるが、よくよく見ると、足首に鎖が付いておりそれが、背後の白い柱につながれているので、移動はまったくできなさそうだった。
「これは、何というか」
チセはまるで怪しいものを見るようなまなざしで売り物の奴隷たちを見つめていた。
「チセ、あまり見ない方がいいかもしれない」
「ええ、そうですね」
チセはただひたすらに前だけ向いて僕について来ていた。だが一方の僕は一度地獄のような光景を見ているせいか、チセと比べてあたりを見渡し状況を理解しようとするだけの心の余裕があった。どうやら単純に奴隷と言っても様々な用途があるようで、荷物持ち、戦闘ハウスキーピング、愛玩、労働などおすすめの用途が値札の中に値段と共に記載されていた。こういうのを見ると少しだけRPGのジョブシステムに似ているような気がしなくもない。実際に戦闘用の奴隷は女性であっても腹筋がきれいに割れており、どう考えても僕が勝てる見込みはないなと瞬時に理解できた。
「ご主人様、あまりじろじろ見すぎです」
「いや、そんなことはないよ」
「もしかして気になる方でもいたのですか」
「だから違うって」
まあ確かに綺麗な腹筋だとは思ったよ、あっちの世界でもなかなか拝めるものではないとは思ったけど、だからと言って購入しようとは思わない。
「冗談です。しかしあまりじろじろと見ているようですと、帰った後にヴァルフさんに言いつけますよ」
「それは、やめてください」
そんなことをヴァルフに告げ口されれば絶対に彼女は怒る。そして二三日口をきいてくれなくなるだろう。そうなってはパーティ崩壊の危機だ。




