転生は異世界で
「連人、パン買ってこいよ人数分な」
これは僕の日常、午前の授業が終わったらすぐに、購買のパンを買うために走らなければならない。だが決してそれは僕の分ではなく、今目の前にいる彼らの分だ。一応お金はもらってはいるが、足りないこともしばしばで依然それを請求したら、殴られたので、それ以降は黙って自分の財布から出している。
後者の階段を駆け下り、列に並び、手短に買い物を済ませる。
「買ってきました」
「おう、サンキュー。もう行っていいぞ」
買い物が終わると、僕は解放されるが、そこからはただ一人でご飯を食べる。もともと引っ込み思案で人と話すのが苦手な僕はすぐさまクラスで浮いてしまいそんな様子を見かねた彼らが声をかけてくれた。最初は対等な友達だと思っていたが、どうやら違ったらしい。
彼らにとって僕は都合のいい小間使いのなのだ。だがそれは学校だけの話ではない
「ただいま」
「おかえりなさい連人、話があります」
「はい」
家に帰って早々母のお出迎え。こういう時は大抵よくないことだ。案の定帰宅早々に成績が低下していることについて詰められてしまった。
「いったいあなたにこれまでどれだけ注ぎ込んできたか、今一度よく考えなさい。あなたの子の生活は誰のおかげ?」
「母さんです」
「ならば、私の役に立つことだけを考えなさい。そしてそのために必要なことをしないさい。それができないのならあなたがいる価値はない」
「・・・はい、頑張ります」
「よろしい」
話はえらく簡潔で、すぐに終わるだが、まるで僕の人生に価値がないと言わんばかりの物言いは確実に僕の心をすり減らしていく。結局ついた心の傷はいえることなく、僕はそそくさと二階に上がった。これから10分後には塾に行かないとなければならない。だがそれはあくまで母親の夢をかなえるための行為でそこに僕の意思はない。だからせめてその道中のバス車内で読む、異世界物のラノベだけが心の慰めになっていた。
いつか彼らのように、自分のやりたいように冒険し、かわいい女の子に囲まれたいそんな理想を抱えて今日も僕は塾へと向かう、はずだった。
「あれ」
気が付いた時には視界一杯にまばゆい光が広がっていた。そしてそれが何かを理解できないまま、僕は死んだ。
「ここは?」
目が覚めた時には雲の上のような場所にいた
「おう、起きたか少年」
「あなたは」
「わしか、わしは平たくいうなれば神様じゃ」
「神様?」
そうはいうものの声の主は白いシルエットだけで、目や鼻などのパーツを認識することはできない。だがかろうじて人のようなものだということだけは理解できた
「で、神様が僕に何の用ですか」
「話が早くて助かるよ。まず君は死んだ。しかしなんだか見どころがありそうだからね、あの世に送る前にここに呼び出した」
「なるほど」
「そして今の君には選択肢がある。このままあの世にいくか、異世界で第二の人生をやり直すか」
「ええ、それはまさか異世界転移ということですか」
「おお、よく知ってるね。あ、そうか最近君たちの巷でも流行ってるのか。そっかそっかでどうする」
「僕は・・・」
これまでの人生で幸せだと思える時はなかった。それが自分の性格のせいだということも分かっている。だがそれでも、もしやり直せるのなら今度こそ自分のために、自分のやりたいように生きてみたい。
「行きます、異世界行きます」
「よし来た!! それじゃあ説明していくよ」
神様が手をかざすと、何もないところにいきなりテレビの画面のようなものが現れた
「まず異世界に行くうえで支給するものを紹介するよ」
「はい」
「まずはお金、何するにでも必要だからね、そしてなんでも治る薬、ヒロインを助けるために使っていいよ、そして常人離れした肉体、運動能力、免疫、五感すべてが並の人間では到底及ばないレベルさ、そして最後に一番大事なもの」
僕は生唾を飲みながら次の言葉を待った
「職業です!! というのもわしがあげたお金を使うだけ使って、おしまいじゃあ面白くないからね、時には働いて稼いでもらわないと、それに新しい出会いもあるかもしれないからね」
「なるほど、それで僕の職業は!!」
「それは・・・なんと・・・奴隷商人です」
「えっ、奴隷商人ってあの・・・」
異世界物の小説でも比較的悪役に近いポジションの職業で、お世辞にも人様に誇れるようなものではない。
「ほかの職業じゃダメですか」
「うん、ごめんね。でも君に一番合ってると思うんだ。だからさ、やるだけやってみない。あっちの世界で君が何をしても、私がペナルティを与える、なんてことはないからさ」
「・・・」
どうやら、拒否権は無いようでいやいやながらも受け入れるほかなさそうな雰囲気だった。結局僕は押し切られる形で神様の提示した条件を受け入れた。
「よし、それじゃあ、準備はOKだね」
「はい」
「よ~しではでは第二の人生思う存分楽しんでおいで、いってらっしゃ~い」
またしてもまばゆい光と共に、僕の意識は奪われた。そして次に目覚めたとき
「ううん、ここは」
僕は草原の上に寝っ転がっていた。




