恋はどのように訪れる?
第39章
前世でも、学校に行きたくない日は、きっとあったはずだ。しかし、こんなに気持ちが重い朝は、初めてで、目が死んでいた。
シルキーが、ベットの側で、ずっと待機していていると、マルサナが入って来て、
「お嬢様、朝早く、国王陛下より、チョコレートが送られてきました」
仕方なく、モモガロンは、ベットから起きて、そのチョコを、一つ食べて、支度をして、ヒロイの元に向かい、遊んだり、話を聞いたりして、ヒロイが、保育園に出かけるのを見送る。
ため息をつきながら、食事をする部屋に入ると、スワルトイ公爵は、すでに、席についてモモガロンを待っていた。
「お爺様、おはようございます。遅くなりました」
「モモガロン、どうした。具合が、悪いのか?」
モモガロンの返答を、その部屋に立ち会う人達は、息を飲んで待っている。
「大丈夫です。どうやら、わたくしの年齢が、1つ上だと言う事が、すでに、貴族学校では、知れ渡っている様で、そうなると、わたくしが、お爺様とご一緒出来る時間は、後、少ししかありません」
「スワルトイ領に戻った時は、お爺様と、ずっと一緒にいられると思って、嬉しくて、毎日が、輝いていました。あれもしよう、これもして、少しでも領民・領土の為に、考える事が、楽しくて仕方ありませんでした。それなのに・・・・」
「モモガロンが生まれた時、私も息子夫婦も嬉しくて、盛大なパーティーを開催したから、他の貴族に、誤魔化しは効かないだろうな」
「モモガロン、この国で、国王陛下以上に素晴らし青年はいない。これは断言できる事実で、お人柄もよく、誠実で、常に国民を守り、国民と共にあらせられるお方だ」
「はい、わたくしには、勿体ないお話です。ーーしかし、わたくしは、お爺様とずっとご一緒できると、思っていました」ついに、モモガロンは、泣き出す。
「モモガロン、儂は、もう何十年も、毎日のように、王宮に出勤している。例え、モモガロンとヒロイが、王宮で暮らすことになっても、気軽に会えると思う。陛下はそのようなお方だ」
「でも、夜、・・夜は、わたくしたちはいません。お爺様お一人です」
「モモガロン、私が寂しくないと言えば嘘になるだろう。しかし、それ以上に、考えていたことは、この屋敷から、黒と金で出来た豪華な馬車に乗り、私達全員で、君を送り出す事が出来ることが、その寂しさよりも、勝っている」
「ーーきっと、それは、それは、美しいだろう・・。妹が旅立った日の興奮は、今でも覚えている。もう一度、儂のこの手で、王妃を送り出す事ができるなら、本望だよ」
「お爺様・・・・」
その場のすべての人は、泣き出し、結局は、朝食を食べる事は出来ずに、通学の車に乗り込んだ。
「お嬢様・・、ボルト家令は、泣き過ぎです。誰よりも号泣で、驚きました」
「うん、びっくりしましたね。彼は、そのような人ではないと思っていました。でも、きっと、お爺様の分も、彼が泣いて下さったのでしょう。いつもお側に居る人間には、痛いほどお爺様のお気持ちがわかるのでしょう」
「はい、そうですね」
それから、モモガロンは、貴族学校までの道のり、窓の外を見ながら、国王陛下の事を考えていた。
陛下は、お爺様のおしゃる通りに、素晴らしいお方で、しかし、恋愛対象として考えた事は一度もない。この世界、貴族同士の結婚は、身分が一番大切で、二人の身分は釣り合っていると言える。
前世でも、大した恋愛をしてこなかった為に、どのようにその人を好きになるのかが、イマイチしっくりこない。皆は、どのように人を愛し、結婚まで、たどり着くのかしら・・・?
モモガロンが、国王陛下に対して、ドキッとしたのは・・・・?
う~~~と、そうだ、あの時、青葉祭の時に、弓矢を引いて、真剣に的を向かう陛下の・・・上半身の裸が見たいと思った時だ。あの時は、本当に、頭の中では、上半身、裸の陛下を想像して、ドキドキしたんだ。・・・なんて、不謹慎な・・、嫌、でも、結婚したら、見れるの?ーー夫婦になったら、絶対に、見れる!! ・・・少しだけ、それは、いいな~~~。
モモガロンが、涙の朝食を忘れ、真剣に国王陛下との結婚を考え始めた時に、
「お嬢様、到着しました」とシルガーに、気づかされ、再び貴族学校に、降り立った。
モモガロンが、降り立つと、一斉に、生徒たちは、足を止めて、緊張した空気が漂った。一人の勇者が、
「モモガロン様、おはようございます」と声をかける。
「おはようございます」とモモガロンが答え、それから、会釈する生徒、挨拶する生徒が、道を避け、モモガロンが、進む道を塞ぐ者は、決していない。
最初から、スワルトイ公爵令嬢として、登校していたら、きっと、このような感じだったに違いないが、それはそれで、もっと煩わしい日常で、今日のように、決して、モモガロンの近くに寄って来る生徒がいない事はなく、4人に守られて、一定の空気の中で、息が出来る空間もなかっただろう。
教室に入り、自分の席に座り、トワが急いで駆け寄って来た。
「モモガロン様、おはようございます」
「トワくん、久しぶり。3刊発行、おめでとうございます。今回も、面白かったですよ。ホワイト商会の方も順調で何よりです」
「君が王都を去ってから、今日まで、王都ではモモガロン一色だよ。初日は、野次馬たちに、詰め寄られて、マルサナがいなければ、僕は、圧迫死を迎えそうだったよ」
「そんな・・大袈裟な・・」
「いいえ、大袈裟ではありません。あの頃の彼らは、私達には遠慮しません。だから、お嬢様が、復学なさって、本当に、有難いです」
モモガロンが、教室に入ってから数分が経つが、誰も話しかけないし、視線も送って来ない。
「ねぇ、どうしたのこのクラス・・・このような雰囲気でしたかしら・・・?」
「お嬢様、当たり前です。お嬢様は、将来の王妃でいらして、すでに皇子のご生母様です。学校関係も、王宮に呼ばれ、不都合がないようにと、陛下からの申し出があったらしいですよ」
「・・・・・・」
「陛下は、最善を尽くしておいでです」
「・・・・・・」
「モモガロン様、朝、陛下より、今日の昼食は、学生室でご一緒するとの事です」
「・・・・??、しかし、今日の昼食は、国王陛下の分はご用意していませんが・・・、どうしましょう?」
「そこは、大丈夫です。王室の方で、ご用意なさるようで、これからは、婚約者と共に、昼食をとる事が、恒例となりますと、シャドウ宰相から、キツク言われました」
「そんな・・・」
モモガロンは、国王陛下はグイグイ来るタイプなのか?それとも、シャドウ宰相からの入り知恵なのか?と考えた。
授業が終わり、恒例の学生室への昼食に向かう。すでに、近衛兵たちは、学生棟を囲み、国王陛下とモモガロンは、その中に、飲み込まれて行く。
今日の昼食会は、国王陛下と二人だけで、シャドウ宰相やシルガーたちもいない。
美しいテーブルクロスに、銀食器が並べられていて、ナチュラルな学生室は、豪華な王宮風へと、様変わりをしていた。
「モモガロン、こちらに、座って。すまないね。突然、食事に誘ったりして・・。君と二人で話すのは、ここが一番落ち着くと思い、部屋を少し改造させてもらった」
国王陛下は、モモガロンの椅子を引き、モモガロンは、優雅に座り、食事を始める。しばらく、水だけを飲んでいると、陛下が、モモガロンが好きなオレンジのサラダを、モモガロンに進めた。
夏が終わったが、学生室は少し暑く、陛下は、腕をまくり、何も話さないモモガロンと一緒に食事を取る。
モモガロンは、陛下の固そうな腕の血管が見えて、また、ドキドキして来た。
駄目だ。脳みそが、エロになっている。・・・こんな事、一度も経験したことないのに・・どうしましょう?




