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数時間後。
ザバルの号令で、ついにエルフ村への攻撃が始まった。
村を囲む木製の塀は、敵にとって大きな障害だ。
侵入経路が限られるため、エルフ戦士たちは数で劣っていても、
細い通路で一対一の勝負に持ち込み、何とか応戦していた。
(まぁ、質はエルフ戦士の方が圧倒的に上だしね)
だが――問題は数だ。
正門では、丸太を担いだ村人たちが門を破壊しようと突撃してくる。
弓兵のエルフが狙うが、ザバルが即座に“盾隊”を前に出し、
丸太部隊を守るように配置したため、なかなか倒しきれない。
しかし、村全体を囲むようにザバルが布陣を敷いたせいで、
ザバルの近くにいる村人の数は少なかった。
(いいじゃん。こっちはやりやすい)
僕は、ザバルとキラチンの背後を取っていた。
高い木に登り、枝から枝へ移って、
二人の真上――まさに射程圏内。
下では、キラチンが浮かれた声をあげている。
「ザバルがいれば勝てるよなァ!!」
ザバルは得意満面で頷く。
「僕ちんの作戦は完璧なんだからぁ。
エルフなんて形だけで詰みなの」
その瞬間、ザバルがふと上を向いた。
そして、目が合う。
「えっ、ちょ――」
それ以上言わせなかった。
僕は枝を蹴った。
短剣を抜き、刃を下に向け、重力に身を預ける。
着地と同時、衝撃が走る。
ザバルの体がぐらりと揺れ、崩れ落ちた。
驚愕したキラチンが声にならない悲鳴を上げる。
「の、のわぁぁぁ……!?」
僕は短剣を抜き、ひと息ついた。
(……人を刺すって、なんか嫌な感触だな)
倒れたザバルを見下ろし、すぐに首元へ刃を当てる。
ためらいはない。
ここで躊躇する理由もない。
そして――静かに首を断ち切り、持ち上げた。
「このレイン様が――
グラン・ザバルを討ち取ったぞーーー!!」
声は、村全体に響き渡る。
その場にいた村人は固まり、
戦っていたエルフたちも一瞬動きを止めた。
“最強の軍師”が、あっけなく倒された。
キラチンは震えながら叫ぶ。
「の、のわーーっ!!
あ、あのザバルだぞ!? なぜだ!?
くそ、この卑怯者!! 不意打ちしやがって!!
誰か! 誰かこいつを殺せーーー!!」
だが、誰も動かない。
村人たちは、主を失った瞬間に戦意を完全に喪失し、
蜘蛛の子を散らすように――バラバラに逃げていった。
残ったのは、逃げ遅れたキラチンと、ザバルの亡骸だけだった。




