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魔力が体内に溜まらない方法を、片っ端から調べた。
……結果は、うんこだった。
簡単にできる方法は、どれもこれも「最初から才能があるやつ」向け。
生まれつきゲートが大きい、魔力の循環が特殊、体質が異常――そんな条件ばかり並んでいる。
(……はい解散)
そう言いたくなる内容だった。
だが、一つだけ、現実的な方法があった。
地道で、効率が悪くて、危険も大きい。
――モンスターを倒し続けること。
しかも、弱い相手では意味が薄い。
強いモンスターほど、体内の魔力が外へ押し出され、調整されていくらしい。
(つまり……ぶっ殺せばぶっ殺すほど、マシになると)
正気とは思えない結論だったが、今の僕にはそれしかなかった。
もうすぐ夏休み。
学園を離れて、故郷へ帰省する時期だ。
(……帰ったら、冒険者にでもなるか)
モンスターを狩る。
生き延びるために。
そう決めたところで、帰省の日が来た。
⸻
「レインさん、ちゃんと手紙送ってくださいね!」
馬車の前で、ミレイが少し不安そうに言う。
「まあ、送れそうだったら送るよ」
「……絶対忘れそうですね」
その横で、カイルが肩をすくめた。
「気をつけろよ」
「おけ」
短いやり取り。
その時――
「レイン、早く行こう」
セシリアが、僕の手を少し強引に掴んだ。
「あ、うん」
そのまま引かれるようにして、馬車へ向かう。
それぞれが、それぞれの故郷行きの馬車に乗り込んでいく中、
僕とセシリアは、同じ馬車だった。
――しかも。
(……これ、貴族用だよな)
内装は柔らかく、揺れも少ない。
座席は広くて、変に落ち着いてしまう。
(この高そうな馬車、乗り心地良すぎて寝そうだなー)
そう思った、その時だった。
「あの子たちと、なんか仲いいね」
唐突に、セシリアが言った。
「……え?」
それしか返せなかった。
(どういう意味だ?)
視線を向けると、セシリアは前を見たまま、表情を読ませない。
馬車は、ゆっくりと走り出す。
(……なんか、空気重くないか?)
沈黙。
妙に長い沈黙。
(え、この空気で一日中、馬車の中?)
さっきまで快適だったはずの座席が、急に窮屈に感じられた。
(苦しいって……)
夏の帰省は、思っていたより、ずっと落ち着かないものになりそうだった。




