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嫌われ鬼娘と彼女に恋した─僕と己─  作者: ラーテル 弓倉


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狐と尻尾2 父親

然さんから頼まれた物はとても臭く、そのせいで何度も道行く人から顔を(しか)められ、帰路(きろ)は途中に寄ろうとした全ての店で入店拒否をくらった。


あの人が成仏して寂しかったが、こんなに臭いのする物を持って帰ることになったのが、鼻の良すぎる彼女がいなくなったあとで良かったのかもしれない。



そう、津弥を無くした淋しさに比べたらなんてことは無い。







遠出だったが、今回は那由他(アネキ)からの依頼が無かったので一番の遠回りをせずに済んだので思ったよりも早く済んだ。


早く休みたいと思いながら示尾(ガガ)の家へと向かった。今は娘と茂の三人で厄介になっている。このままずっといても良いと言われているので、改めて今後を話し合った方が良いだろう。



遅くなって娘の「お帰りなさい」が聞けなかった分、今後も自分が父親として振る舞うために寝顔だけは見ておこうと寝室の戸を開けた。娘の顔にこっちの部屋の明かりがあたり、微妙に目や眉がムッとした表情を浮かべた。いつも通りに扉の手前に貴羅が、奥に茂が寝ている。



昔、不言の先読みで祢呼ちゃんと娘の二人ともに弟が出来ると言われた。血は繋がってないが、不言が言ってた弟とは茂のことなのだろう。茂を(あや)す娘を見ては、それを愛おしいと思うようにしていた。


扉を閉めようとした時に、娘の枕元に目が行った。

明朝に着るために用意しているであろう着物が津耶が着ていた物だった。

よくある柄なので示尾(ガガ)の奥さんや那由他(アネキ)が娘にあげた物かと思ったが、帯まで一緒だったので津耶の物で間違いなかった。


それについてを今、起こして聞くか明朝に聞くか…「(すご)い匂いですね。」と、考える前に不言から声をかけられた。




「…お前等が頼んだんじゃないか。」 

「それには感謝しています。いくらしましたか?」

「これの分はいらない。その代わり貴羅に他の着物を買ってやれ。」

怒り始めた感情を不言に向けることにして、それなり額の金を不言に押し付けてやった。

「この際、不言(お前)の好みの物を贈ってみろよ、元々必要数持ってないから何でも着てくれるぞ。」


不言は俺に一応は「困った」といった顔をしてみせた。津耶の着物は津耶の物だ。貴羅が着る物ではない。娘の頭元に置かれた津耶の着物と帯を俺は少々乱暴に取り戻した。




寝室の都を閉めると「夜風にもあたりましょうか」と言った具合に不言が俺を外に連れ出した。

「なんで着物(これ)(あいつ)のところにあんだよ。」

貴羅の元を離れてまでは苛つきを抑える気はない。

「今日、尻尾の駆逐の後に服を汚した貴羅ちゃんが着替えるために借りました。」

汚した?

「鬼屋で吐いた様です。夕飯前に吐瀉物の付いた着物を自分で洗ってました。」



俺の知らぬ間に(これ)が『鬼 屋』に入っていたことに嫌悪を感じた。着物のことも踏まえて、津耶とのことを汚されたと思った。



ずっと父親としての振る舞いをして愛おしいと思える為の言動を取ってきた。父娘(おやこ)であることは変わらないし、それを否定したり、拒絶するつもりは無い。死に損なってからは、ある程度は娘を中心に考えるようにしてきた。けれど娘と津耶のことは別だった。




(あれ)と離れたいと思う俺は酷い親だと思うか?」

「そうは思いませんよ。ただ、父親であることに休みが必要なだけだと思います。奥さんが居無くなって急に別々に住んでいた貴羅ちゃんと急に住むことになったのですから。」


正直、その通りだと思ってたし、今までそれを吐露することは許されなかった。



「長い間、(ろく)さんは頑張って来られたと思います。それに、事が終わればアドルフ君が帰ってきます。小学校ももうすぐ卒業ですし、精神的にも物理的にも貴羅ちゃんは強い()だし、ウチの父やナユさんみたいに力になってくれる人はいますから事が済んだら少し休みませんか?」


「…休むじゃなくて終わらせたい。(あれ)が欲しけりゃお前にくれてやる。」

「くれてやるって貴羅ちゃんは物じゃないですよ?」



多少は怒れよ、このガキ。多少なりとも声を荒げるなり、睨むなりあるだろうか?


いつ見ても こいつの目は不快だ。

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