鬼と猫娘2 起死回生
少年の魂を喰った後の貴羅は、少年の死体の近くに座り、彼の髪を櫛でとき、時々指で頭を撫でてやっていた。
「無事だったか。」
貴羅は父親ー陸、が帰ってきたのに気付くとあわてて立ち上がった。
「左目はどうした?」
陸は貴羅の顔を見ると躊躇の無なく表情に不快さを出した。
「…燭台が刺さった。」
「そうか。」
そう言うと貴羅に近づいた陸は片手で首の後ろの着物を掴んで引っ張り、反対方向に片足を出して綺羅を仰向けに転ばした。父親はその上に馬乗りになり娘に抵抗されないように両足で彼女の両腕を押さえた。叫ぶ貴羅を無視して右手で彼女の左目から潰れた眼球を取り出しそれを喰ってしまった。
そして左手で少年の死体から左目を取り出し綺羅の空になった左の目の中に入れようとしている。
「受け入れろ。抵抗するな、斜視になるぞ。」
「いやだ」「やめて」と叫ぶ貴羅に続ける。
「隻眼だと何かと面倒だぞ。それにこのまま放って腐らせるより、共に世界を見て生き続けとけば良いだろ。」
貴羅は先程よりも強く抵抗をしなくなったが、納得しきってはしていない様だった。
父親は貴羅から退き、立ち上がろうとする娘に手を差しのべてそれを手伝った。
「中途半端な殺し方をしたか?」
その父親の問に娘は応えなかった。
「とりあえず、必要なものを持って隠り世へ移るぞるぞ。」
「…死体は?」
普段は死体は直ぐに家の中に運んでバラバラにするのだが、この少年の死体だけは貴羅は出来ない様だし、更に陸も運ぶつもりは無いようだ。
「彼の体にはこのままここにいてもらいなさい。震災時だ。他の人が入らないための抑止力にもなる。」
そう言って貴羅を家の中へ促した。そして貴羅が家の中に入った後に陸は少年の死体と己を交互にみ見て、真っ直ぐに己に一礼した。
手頃な体が手に入る滅多に無いし、陸の意志も汲んで己はこの『中途半端な殺され方』をした少年の死体を借りることにした。




