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あたしは猫である。  作者: たかてぃん
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 結局シローさんに言われるまま、あたしとブーちゃんは、カツオを求めて西の街まで歩くことになった。

目的地の正式名称は、地理的に考えて、多分海沿いにある大型鮮魚店、「崎藤マーケット」だろう。しかし、そこは車でも三十分はかかるような場所であるので、この距離を往復するとなると泣きそうになる。

 しかも、慣れない四足歩行のせいか、まだ一キロも歩いてないはずなのに、両脚、いや、四本の脚が鉛のように重く感じるようになった。さらに、コンクリートからの照り返しと直射日光を、黒い体毛が過剰に吸収してしまうので、熱中症になりそうなほど気分が悪くなっていた。

あたしがへばっていると、ブーちゃんがまたからかってくる。


 「おーハル婆さんやもうバテてんのか。よっ、バスケ部二週間退部野郎!」


 「うっさいわね先輩とモメタのよ。なんで知ってんのよ。」


 「ネコってのは知的な生き物だからさ。」


 「バカな上に虚弱な生き物でしょ・・・。バてやすいのはどう考えてもネコの身体のせいでしょ。四本脚ないと自分の身体支えられないって、どんだけ下等生物なのよ・・・」


 「え?俺の元飼い主加藤じゃないぞ?」


 「あーもうバカ突っ込むのも疲れた・・・」


 うまく身体が動かせず、足が痺れるようだ。みかねたブーちゃんが水たまりを肉球で差す。


 「ハル。この水たまりの水。これ飲めよ。元気でるし」


 「は!?無理無理無理そんな汚い水飲めるかっつの!」


 「お前なあ。体調悪いけど水飲めませんて、芸人目指して上京したけど仕事なくてパチンコで借金してる奴ぐらいバカだぞ」


 「変な例えいいから。もうちょっとマシな水ないの」


 「あーもう最近の若いのはほんっとわがままだなぁ!あっちの木陰で休んで。ちょっと待ってろ!」


 そう言うとブーちゃんは走っていってしまった。

水を持ってきてくれるのだろうか。しんどさにうめいていると、十分ほどで、赤い缶をくわえたとらちゃんが滝のような汗をかきながら戻ってきた。


 「へいお待ち!これで飲めねえとかいいなよ。この空き缶に穴開けて、中に水道水くんできてやったから。水道水なら大丈夫だろ」


 「あ~!ありがとう!」


 ネコの身体なので一気飲みはせず、飲みやすいように穴を開けられた缶の中の水に、顔をつけるようにしてびちゃびちゃと飲んだ。美味しい。今まで飲んだ中で間違いなく一番おいしい水道水だ。

もしこの水道水を、南アルプスでとってきた天然水と言われても全く疑わないだろう。

自分でも驚くほど水分を求めていたのか、三分ほどですべて飲み切ってしまった。


 「おーいい飲みっぷり!ちょっとは元気でたか?」


 「うん!ありがとね。あたしのわがまま聞いてくれて」


 「お安い御用だぜ。そろそろ行こうか。明日の朝市に間に合わんといけんし」


 「うん!ほんとありがと!ってブーちゃんその足どうしたの!?」


 ブーちゃんはなにかで切ったのか、右前足を少しきっていた。

軽傷だが、ヒリヒリして痛そうな切れ方だ。


 「あー穴開けるときにネコパンチでぶち破ったら、ちょっとな。こんなんケガの内に入らんし、だいじょぶさ」


 「え!?てことはあたしが飲みやすいようにするために、ケガしちゃったてことだよね?」


 「ネコってのは仲間を大切にする生き物だからさ、気にすんな気にすんな」


 つまらない冗談でからかうばかりで、愛嬌のある見た目に反して軽薄なイメージしかなかったブーちゃんだが、実は案外いいやつなのかもしれない。昔から可愛がってたネコちゃんと喋れるようになったら、実はこんな性格だったなんてと、正直かなり萎えていたが少し見直した。

 先ほどよりも少し近いポジションで、あたしはブーちゃんについていった。

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