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ブーちゃんについていったところ、隣町の、少し大きなジャングルジムがある公園にたどり着いた。青いベンチの近くまで歩くと、目元のしわが特徴的な白ネコがぐったりと横になっていた。
「じゃーん!こいつが俺のマブダチ。白ネコのシローでーす!さっ、ハルも挨拶して」
「よ、よろしくお願いします・・・」
どうやらこのシローさんがブーちゃんのいう、物知りなマブダチらしい。確かに、目元のしわといい、どことなく老いた雰囲気から、博識そうな印象を受ける。紹介を受けたシローさんは、しゃがれた声であたし達に話す。
「おおよく来たなブーよ。そっちの黒ネコは新入りか?」
「いや、新入りっていうか──」
「こいつはな!昨日まで人間だったんだけど、どういう訳か黒ネコになってた訳ありなやつなんだ。そこでシロー。賢いお前なら、こいつがネコになった原因わかったりしねぇかなって」
「ほーう。人間がいきなりネコに。うーむ・・・」
シローさんは顎を手に乗せ、一生懸命考えてくれている。だが、賢いな人だろうがそうでなかろうが、こんな滅茶苦茶な質問をされて答えられる人なんてそうそういないと思う。しかし、そんなあたしの予想に反して、シローさんが飛び跳ねるような声をあげた。
「あ!もしかしたらあれかもってのが!」
「おおシロー!やっぱ天才だな!」
シローさんは一瞬二ヤリと笑みを笑った気がした。その後、五秒ほど思考停止したような表情を浮かべた。
「思い出せそうで思い出せんのう」
「思いだせんのかい!」
でもあれっていうものがあるのか。あれってやつを思い出してくれさえすれば、あたしは元に戻れるかもしれない。少し希望が見えてきたところで、シローさんが頭をかきつつ、先ほどまでとは違い、少し下品な笑顔を浮かべながら話す。
「うーん、わしの大好きなカツオを食べれば思いだせそうなんじゃが。悪いが西の街までひとっ走りして、明日の朝市で取ってきてくれんかの?」
「よし!カツオだな。ハル、街までいってカツオとりにいくぞ!」
「ええ!ちょっと待ってよ」
先ほどよりも軽薄な声のトーン、あからさまに下品な表情からして、本当は思い出してる。もしくは、なにも思いついてないのに、思わせぶりなことを言い、魚をとってこさせようとしてるのではないか。懸念したあたしはブーちゃんに耳打ちした。
「どう考えてもパシられてるだけだよ。思い出してるのにカツオとらせようとしてるか、そもそも思い出せそうなもの自体存在しないか」
「はぁ!お前シローを疑う気か!俺の大大大大大親友だぞ!」
ブーちゃんが思いっきり叫んだので、耳打ちの意味がなくなった。
「思い出す思い出してないなんて、本人にしかわかんないじゃん。だから、もしかしたらシローさんはあたしたちを騙して、カツオをとってこさせようとしてるんじゃないんかなって」
「どんだけ心汚れてんだ!一年洗ってない犬のフリスビーぐらい汚いぞ!」
「わかりにくい!あとネコの癖に犬で例えんな!」
「じゃあこれだったらどうだ?勝つか負けるかの緊張感に飲まれ、手汗びっしょりなゲーマーがポテチをつまみながら使用したコントローラーぐらい汚いぞ!」
「いや汚いけど!てかブーちゃん、コントローラーなんか握ったことないでじょ!」
あたしたちがくだらない言い合いをしているのを見かねて、シローさんが口をはさむ。
「えーと、ダルといったか。おぬし、わしを疑っとるようじゃが、思い出せそうなものがあるというのは本当じゃぞ。ただ本当に思い出せんだけで。そうじゃ、ブー。お前に断片的に伝えるから、ちょっと耳貸して」
「おう、いいぜ」
ダルはピッチャー。あたしはハル。とは、話がずれるので訂正しないでおいた。
それにしても、なんであたしに知られたらまずいのだろうか。
耳打ちで会話し終わると、シローさんは、「あーそうかあれだあれだぁ!!」と、モヤモヤが晴れたような様子で、床をたたき、ゲラゲラと楽しそうに笑っている。取り残されたあたしに、ブーちゃんが言葉をかける。
「ほらみろシローは嘘ついてねえ!ほんとに思い出せなかっただけだった!」
「嘘ついてなかったてことは、あたし元に戻れるってことだよね!?」
「おう!」
「じゃあ、あたしにも教えてよ!隠す必要なんてないでしょ?」
「いや、それは無理だ」
「えぇ!?なんで!?」
「「ネコってのは見返りを求める生き物だからさ」」
「そんなネコあんたらだけでしょ!」




