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あたしは猫である。  作者: たかてぃん
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 「はい、ここがブーちゃんのお家でーす!ささ、入って入って」


 「おうちって、いつものボロ土管じゃん」


 公園までの道中でなんとなく察してしまったが、ブーちゃんが案内した場所は、子供の頃からよく遊んでいた公園だった。この公園はブランコと土管以外の遊具がなく、そのどちらも錆びついていて古臭いものなので、自慢げに話すブーちゃんがとても滑稽に思えた。


 「我が家をただの土管と侮るなかれ。我が家はね、夏の夜はコンクリートがいい感じに冷えて気持ち良く寝れるし、冬も落ち葉を轢けばなんとかなる。つまり冷暖房完備なんだよ!」


 「空調なんてあたしだったらエアコンで解決するよ」


 「そんな夢のないこと言うなよ!だから器も胸も小さいっていわれんだよ」


 「気にしてるから言わないでよこの変態!」


 「いてっ!猫パンチとはハル、成長が早いなぁ」


 「若いんで慣れるのは早いんですー、変態親父と一緒にしないでくださーい」


 「変態って、、、それを言うならハルだって変態だぞ」


 「えっ、なんで?」


 「今キミ全裸で外出てんじゃん」


 一瞬何を言っているのかよくわからなかった。が、言われてみれば私は今何も着ていない。

虚をつかれ、急に恥ずかしくなってきたので、再び猫パンチを繰り出したが、受け止められてしまった。


 「おっとハルさん二度は通用しやせんぜ。あと一ついいかい?」


 「・・・・。なに?」


 「俺と漫才してる暇あったら人間に戻る方法聞けば?」


 「・・・・。確かに」


 いや、ブーちゃんがからかってくるから突っ込んでんじゃん。と突っ込めなかったのは動揺していたせいだろうか。


 「じゃあ教えてよ。なんであたしがネコになっちゃってるかってことと、どうやったら人間に戻れるかってこと」


 「どっちも全くわからん」


 「はぁ!?」


 自分から教えると言っておいてそれはない。あたしが立腹したのを察したのか、ブーちゃんは早口でまくし立てる。


 「いやだってだってだって、猫になる数日前まで何してたとか、背景聞かないとわかんねぇし。」


 「数日前って言われても、いつも通りすごしてたらネコになってて。正直意味わかんないんだけど」


 「本当にいつも通り?いつも通りならネコになる訳なくね?昨日やったこととか起きたこと、どんな些細なことでもいいから話してみてよん」


 「うーん・・・」


 昨日は五月十九日の木曜日。天気は雨が降ったり止んだり。

代わり映えのない普通の日だったと思うが、もしネコになってしまった原因があるとしたら、一日の大半以上を過ごしている学校だろう。

そう考えたあたしは、学校で起こったことを中心に話した。


 「じゃあ、朝起きてから起こったこと一つ一つじっくり話すね。いつも通り六時半に起きたあたしは、隣町のお爺ちゃんがくれたイカそうめんを食べて、八時ぐらいに登校。一時間目の化学は、硫黄を発生させる実験だったんだけど、嗅いだ瞬間、鼻が折れ曲がっちゃいそうだった。そのせいか、二時間目の古典もちょっと気分が悪かったんだよね。三時間目と四時間目はテスト勉強で、特に言うことなし。昼休みはさんで、五時間目のコミュ英はご飯食べた後だったから眠かった。六時間目の体育はバスケで、魚屋の看板娘兼クラス一のぶりっ子。しかもあたしの恋敵のみれいちゃんに勝ててスカッとした!で、家帰ってラーメン食べて寝た。」


 「なるほどな。あれだ、あれ。要するにイカそうめん美味しかったってことか」


 「話最後まで聞いてた!?それ最初に言っためちゃくちゃどうでも良いとこ!」


 「あー冗談だよ冗談。ブーちゃんが考えるには、魚に鼻折り曲げられたんが原因だと思うんだが」


 「絶対話聞いてないよね!?魚屋の娘だから!魚じゃない!あと鼻は硫黄嗅いだ時に折り曲がりそうだったって意味だから!比喩表現って知ってる!?」


 「え?キスオーケー!?」


 「どんな耳してんのよ!母音はあってるけど!って、漫才してる場合じゃないのよ!」


 すっかり乗せられてしまっている。本題に入らないと。


 「ところで、恋敵って何があったんですかい?ハルさんもお年頃ですな~」


 「まあ色々。みれいちゃんとは、元々は中学一緒で結構仲良くて。だから、中学の頃からずっと好きだったサトシ君のことすっごく相談してたのよ。なのにみれいちゃん抜け駆けしてサトシくんと付き合っちゃって!しかもサトシくんにはあたしの悪口いっぱい言ってて!マジ最悪じゃない?」


 「負け犬じゃん。猫の癖に。だからこの前夜中に電柱蹴りまくってたのかぁ。」


 「ブーちゃん見てたの!?マジ最悪…。じゃなくて、人間に戻る方法考えてよ!」


 嫌なことを思い出して恥ずかしい気分だ。


 「まあまあ。ハルは今猫の手も借りたいような状況なんだし。そうカリカリしなさんな」


 「いや、全然上手くないし。あんたは猫の中でも、ネズミとらぬ猫じゃない」


 「うまい!座布団一枚。弱者であるネズミを虐めない、寛大な心の持ち主である俺にぴったりなことわざだな」


 「違う!ネズミをとることすらしない役立たずって意味よ!」


 「あっそ、俺は役立たずですか。でも安心しな。俺にはすっげー物知りなマブダチがいるからさ。そいつんとこ行って話そっか」


 「マブダチ?」


 このバカ猫の友達なんて、当てにならないだろう。

内心でぼやきながらも、一応ついていくことにし、公園を出て西に歩いた。


 「そういえばブーちゃん。なんであたしがネコになった理由わかんないのに、俺んちこいとか偉そうにしてたの?」


 「ネコってのは見栄を張りたがる生き物なんだよ」


 「ネコってどんな生き物なのよ」





 


 




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