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大好き
「先生、そればっかりじゃん。」
アハハと笑い声をあげ、ゆっくりと近付く。
そのまま引き寄せられるように、
ギュッと身体を抱き締められた。
背中に回る手があったかくて、
さっきまでの寒さを忘れた。
腰に腕を回す。
ゆっくりと顔が近付き、視線が絡む。
瞼を閉じると、唇が重なる。
何度も、何度も、角度を変えて、
深く、甘い、口付けを交わす。
「どうしても会いたかった。」
再度、強く抱き締められる。
「ここで待つの、何度目だろ。」
乾いた笑いを浮かべる。
優しく、私の髪を撫でた。
「卒業してから、何度かここで待ってた。
だけど一度も会えなくて、
やっぱり俺の片想いかって、諦めようって、
忘れようと思ったけど、忘れられなかった。
兄ちゃんの彼女だもんな、
そんなとこで兄弟似なくてもいいのにさ。
歯止め効かなくて、本当悪かったと思ってる。」
首を、横に振るしか出来なかった。
もう言葉も発せないくらい、
人ってこんなに涙が溢れるんだって程、
次から次へと零れ落ちる。
冷えた指先で涙をすくうヒラケイ。
「先生、」
「もう、先生じゃないよ…」
「郁、…さん。」
「大好き。」




